シェラトンホテル買収企業の「SOAでメインフレームを排除せよ!」Case Study

部門を超えたリソースの共有や、買収・合併に伴うシステムの統合など、SOA導入の目的はさまざまだ。ここではピッツバーグ大学メディカルセンターとスターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイドの2つの事例を紹介する。

2006年02月01日 10時02分 公開
[TechTarget]

 目標が「メインフレームを排除すること」であれ、単に「ソフトウェア資産を組織全体で再利用すること」であれ、サービス指向アーキテクチャ(SOA)サービスには多様な道筋がある。ピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)とスターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイドが進めているSOAプロジェクトも、そうしたSOA導入の多様性を示している。どちらの取り組みにおいても、中心にあるのは、ソフトウェア資産を格納し、記録するための集中リポジトリだ。

 それぞれの取り組みを見てみよう。

 目標が「メインフレームを排除すること」であれ、単に「ソフトウェア資産を組織全体で再利用すること」であれ、サービス指向アーキテクチャ(SOA)サービスには多様な道筋がある。ピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)とスターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイドが進めているSOAプロジェクトも、そうしたSOA導入の多様性を示している。どちらの取り組みにおいても、中心にあるのは、ソフトウェア資産を格納し、記録するための集中リポジトリだ。

組織全体での資産再利用――UPMC

 UPMCが目標としているのは、個々のSOA開発プロジェクトの有用性を組織全体で活用し、ガバナンスの問題を解消することだ。UPMCのエンタープライズミドルウェアグループ担当ディレクター、デュエイン・ファーク氏は次のように語っている。「われわれは有益な取り組みを実施してきたが、それぞれの取り組みは、ほかの領域でも使用できるような形には一般化されていない。われわれがSOAへの移行を進めているのは、そうした技術を問題解消に役立てるためだけではない。より再利用性の高いリソースセットへの移行も目指している」

 ファーク氏によれば、UPMCでは、まず何から着手すべきかについて上級開発者とアーキテクトの意見を調査したという。「コードや、そのほかにも再利用できそうなリソースをひとまとめにして、特定、保存、アクセスできるような資産ライブラリを構築する、というのが大体の総意だった」と同氏は語っている。

 UPMCは現在、ソフトウェア開発企業、ロジックライブラリのLogidexメタデータリポジトリを使って、パイロットプロジェクトを行っている。ファーク氏によれば、UPMCの開発グループは、ある海外の開発者と協力して、医療機器資産の管理用プログラムの再構築を進めているところという。

 「このプロジェクトの一環として開発したコードとオブジェクトは、最終的にはすべて、きちんと文書化された中央のロケーションにまとめ、それを使って作業を続けられるようにするのが好都合だろうとわれわれは考えた」と同氏。

 このプロジェクトグループではLogidexを使って、システムの設計、アーキテクチャ、および開発済みのあらゆるサービスを目録化している。「エンタープライズミドルウェアなど、そのほかのグループは現在、さまざまな分野で使われるWebサービスとコアコンポーネントを記述している。こうした要素もこのリポジトリにまとめたいと考えている」とファーク氏。UPMCにとって、このリポジトリはおそらく、サーベンス・オクスリー法(SOX法)などの法令遵守の点でも役立つことになるだろう。

 「パイロットプロジェクトの主要な目標の1つとして、当センターの開発者は誰もがLogidexをプロジェクトに利用できるだけでなく、ほかのグループがアクセスできるようにすることもできる。サービスが1種類か2種類程度しかないとしても、文書化や発行を体験できる。そうすれば、われわれがこの取り組みをさらに推進するべきかどうかの判断にも役立つだろう」とファーク氏は語っている。

ゴールはメインフレームの排除――スターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイド

 サービスの文書化と管理は、スターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイドにとっても主要なテーマだ。スターウッドでは目下、SOAプログラムが全速力で進められており、このプログラムはメインフレームの排除で完結することになっている。

 スターウッドはこれまで買収や合併を繰り返してきたが、そのなかでも最大級のホテルがシェラトンだった。

 スターウッドの技術ソリューション&アーキテクチャ担当上級副社長、イスラエル・デル・リオ氏は次のように語っている。「買収の際、経営陣は主要な予約システムとしてシェラトンのシステムを引き継ぐことを決定した。その結果、われわれはCICSやCobolなどの古いIBM技術をベースとしたレガシーなメインフレームを使うことになった」

 同氏によれば、スターウッドは約3年前にSOAへの移行を決定し、Linux、J2EE、およびIBM WebSphereで標準化を行った。「われわれはまず、そうしたプラットフォームに対応する新規アプリケーションの開発に着手し、その後、徐々にメインフレームアプリケーションをオープンシステムへと移行していった。それから、幾つかXMLサービスも導入するようになった。もっとも、今風のWebサービスではない」と同氏。

 デル・リオ氏によれば、スターウッドは1年半前、メインフレームを排除するという最終決断を下した。「すべてがSOAの概念を中心にしている」と同氏。また、アプリケーションの移植は一切行っていないという。「サービスを介して、すべてゼロからコード化と設計が行われている。膨大な取り組みだ」と同氏。

 複数のグループが開発中のサービスを管理するために、スターウッドはWebサービス管理ソフトウェアのシスティネット製Systinet Registryを導入した。「既にサービスの80〜90%はレジストリに定義してある。最終的には、サービスは数百種類に達するだろう」とデル・リオ氏。スターウッドはガバナンスとポリシー管理にはSystinetを用い、サービス管理には、SOA製品を手掛けるアクショナルの製品、Looking Glassを使用している。

 デル・リオ氏によれば、今のところ、サービスはすべて社内システム向けのため、スターウッドはSystinetのUDDI(Universal Description, Discovery, and Integration:Webサービスを登録、検索するためのディレクトリ)機能は活用していない。「だが、Systinetにそうした機能があることを認識しておくのはいいことだ。われわれは、一部のサービスの公開を予定している」と同氏。

 スターウッドは2006年第1四半期に新システムと個々のプロパティとの連携に着手し、その後、統合テストを行う計画という。「当社のROIは、メインフレームを排除できるかどうかにかかっている」とデル・リオ氏。目標としては、2006年いっぱいの実現を目指している。

 デル・リオ氏によれば、スターウッドにとって、SOAに向けた進路は適切な道筋だが、その道のりは険しい。「SOAは優れたアイデアだ。進むべき正しい方向だ。ただし、実装はかなり難航するだろう。常に学習しながら進めなければならない」と同氏は語っている。

(この記事は2005年12月21日に掲載されたものを翻訳しました。)

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