CIOを悩ますインターネット私的利用問題Column

社員によるインターネットの私的利用は生産性を低下させるだけでなく、セキュリティの脅威にもなりうる。

2006年04月14日 14時34分 公開
[TechTarget]

 3月開催のNCAAバスケットボールトーナメントは米国の国民的行事。今年から試合がオンラインで無料ライブ配信されるようになり、多くのファンが勤務時間中に試合を見ている。一部のリポートによれば、その結果、米国企業は生産性の低下により38億ドルという驚異的な損失を被ることになるという。

 だが専門家によれば、これは単なる生産性低下の問題ではない。

 バスケットボールトーナメントをめぐる大興奮は、インターネットや電子メール、インスタントメッセージング(IM)をはじめとする各種の技術が企業のセキュリティおよび生産性にもたらす脅威の最新の一例にすぎない。こうした技術は企業にとって恩恵となっているが、社員の個人的用途に濫用された場合には問題の種になりかねない。

 専門家によれば、CIOは「社員にとってプラスとなる仕事環境を維持すること」と「こうした技術の濫用から会社を保護すること」との間でバランスを取るためにはどうすればいいかを自問すべきだ。

 今年も全米大学バスケットボールのNCAAトーナメントのシーズン「マーチマッドネス」がやってきた。そして、社員の生産性を低下させている。

 CBSとNCAAの取り決めにより、今年初めて、試合がオンラインで無料ライブ配信されるようになり、多くのファンが勤務時間中に試合を見ている。一部のリポートによれば、その結果、米国企業は生産性の低下により38億ドルという驚異的な損失を被ることになるという。

 だが専門家によれば、これは単なる生産性低下の問題ではない。

 バスケットボールトーナメントをめぐる大興奮は、インターネットや電子メール、インスタントメッセージング(IM)をはじめとする各種の技術が企業のセキュリティおよび生産性にもたらす脅威の最新の一例にすぎない。こうした技術は企業にとって恩恵となっているが、社員の個人的用途に濫用された場合には問題の種になりかねない。

 専門家によれば、CIOは「社員にとってプラスとなる仕事環境を維持すること」と「こうした技術の濫用から会社を保護すること」との間でバランスを取るためにはどうすればいいかを自問すべきだ。

 CIOがまず最初に考えるのは、試合を放送しているWebサイトへのアクセスを一切禁止し、ストリーミングビデオをすべて遮断するという方法かもしれない。だがそれでは社員は、あまり知られていないWebサイトからでも何とか最新のスポーツ情報を入手しようとすることになり、ますます危険な道をたどることになってしまうかもしれない。そうなれば、生産性の脅威が突如、セキュリティの脅威に変わることにもなりかねない。

 アーカンソー州ロジャーズの土地開発業者クーパー・コミュニティーズのジェームズ・クレイグCIOは、「当社でも、ストリーミングメディアによって社内のネットワークが麻痺したケースが何度かあった」と語っている。同氏によれば、この問題に対処すべく、「帯域幅の絞り弁」を備えたシスコの新しいファイアウォールソリューションを採用する計画という。同社の600人の社員に対してセキュリティと生産性を強化するとなれば、うまく均衡を取ることが重要だとクレイグ氏は語っている。

 「インターネットの私用が度を超すようでは困るが、だからと言って1日中トラフィックを見張っているわけにはいかないし、それを主たる業務にすることもできない。そんなことをしても生産的ではない。下手に取り締まっても、かえって劣悪な仕事環境を助長することになるだろう。社員は仲間同士でしゃべったり、私用電話をしたり、Webにアクセスしたりして、バスケットボールの得点をチェックするだろう。誰だってそうする。インターネットにアクセスできる環境にあるのにそうしない社員など1人もいないはずだ」と同氏。

 CIOはインターネットの私用をただ禁じるのではなく、ウイルスやワーム、帯域幅の問題などを介して社員が会社に損害をもたらすことのないよう管理に努めるべきだ、とクレイグ氏は指摘している。

 企業向けソリューションのCDWコーポレーションでネットワーキングエンジニアを務めるマイク・フロネック氏は次のように語っている。「誰もが、ある決まった帯域幅で仕事を行っている。試合を見るために社員がインターネットにアクセスするということは、本来ならビジネスアプリケーションに使うべき帯域幅を使っているということになる。ストリーミングメディアはそうした帯域幅を目一杯に使おうとするものだ」

 ネットワークセキュリティ製品/サービスプロバイダー、ネットクラリティの創業者でCTOのゲリー・S・ミリエフスキー氏によれば、CIOはこの問題を社員にきちんと説明すべきだ。「“当社の帯域幅はこれこれだから、ストリーミングビデオがそのうち90%を使えば、社員は仕事ができなくなる”といったようにだ」と同氏。

 ミリエフスキー氏によれば、例えば、社員はピアツーピア(P2P)ファイル交換プロトコルのBitTorrentを介して試合のビデオを入手するかもしれない。こうした行為はセキュリティの脅威につながりかねない。P2Pのファイル交換は、ウイルスをはじめとする各種のセキュリティ脅威の出所となる場合が多いからだ。

 カリフォルニア州サニーベールのインターネットセキュリティソリューションのプロバイダー、ソニックウォールのマット・メデリオスCEOによれば、CIOがNCAAトーナメントなどのセキュリティと生産性の脅威から会社を守るためにすべきことは2つある。

 まず1つには、CIOは活発にアップデートされるコンテンツフィルタリング機能を備えた包括的なセキュリティソリューションを導入すべきだ。

 「そして2つめは、社員とのコミュニケーションだ」とメデリオス氏。CIOはポリシーを定義し、フィルタリング技術を用いて生産性を高めつつ、ポジティブな仕事環境も維持できる。今日では社員のモバイル化が進んでおり、多くの社員は自分のノートPCを自宅に持ち帰り、いつでも好きな時間に仕事をする可能性がある。

 CIOは1日の間で社員が業務に集中すべき時間を特定すればいい。インターネットを私用に使いたいのであれば休憩時間にそうするよう、社員に徹底する必要がある。休憩時間であれば、帯域幅の需要は少なく、業務への集中も求められていない。

 明確なポリシーを定める。そして、会社にとって何が不可欠な要素かを特定する。そして、社員に仕事に集中してほしい時間帯を特定する。

 「社員の時間も尊重するが、勤務時間中は仕事に集中して欲しい、ということだ」とメデリオス氏。

 同氏によれば、コンテンツフィルタリングはこのポリシーに合わせて調整できる。例えば、仕事には不要と定義されたWebサイトには午前8時から午後5時まではアクセスできないようにし、ランチタイムの1時間だけは例外として、社員がオンラインショップを行ったり、試合の得点を確認したりできるようにすることも可能だ。

 「CIOはコミュニケーションが不足しがちだ」とネットクラリティのミリエフスキー氏は指摘している。CIOであれば、「先週のシステムトラブルはインターネットの私用が多かったことによるものだ」と指摘するなどして、許容できるインターネットの私用に関するポリシーの必要性を社員に納得させることができるだろう、と同氏は続けている。

 だがミリエフスキー氏によれば、企業はインターネットの私用をただ禁止するわけにはいかないし、CIOがひたすら社員を監視しているわけにもいかない。

 「社員が憤慨するような方法でネットワークを遮断し、彼らの行動を常に監視するということもできなくはないだろう。だが皆の電子メールを検閲したり、履歴書などのキーワードを探したりすればどうなるだろう? 人事部を怒らせることになるだろう。履歴書など、人事部では毎日のように扱っているものなのだから……」とミリエフスキー氏。

 そして、生産性はさらに低下することになるかもしれない、と同氏は指摘している。自分のデスクトップから試合を見ることができない社員はおそらく、携帯電話経由でインターネットにログオンし、試合を見たり、ニュースを読んだり、友人とIMでチャットしたりすることになるからだ。

 帯域幅を圧迫し、生産性を低下させるほどの大学バスケットボールに対する熱気にもかかわらず、なかには、特に対策を講じなかったCIOもいる。

 ミシガン州リボニアのアメリカンコミュニティ相互保険のCIO兼副社長リン・フィリップス氏によれば、同社は社員が350人と比較的小規模な組織だ。同氏は、このトーナメントの影響で帯域幅に問題が及ぶことはないと判断したという。

 「何も問題は感じなかった。監視したり、干渉したりといったことは一切行わなかった。社員に何か警告したりもしなかった。帯域幅は十分にあるだろうと思った」と同氏は語っている。

(この記事は2006年3月22日に掲載されたものを翻訳しました。)

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