IBM中堅企業イノベーション・フォーラム2006日本版SOX法への対応に高い関心

中堅企業が成長するためには、どのような戦略を取り、どんなソリューションを導入すればよいのか。IBM中堅企業イノベーション・フォーラム2006は、こうした課題を解決するためのヒントが数多く散りばめられていた。

2006年06月05日 19時19分 公開
[TechTarget]

成長のためのキーワードとソリューションは?

 5月26日から7月12日にかけ、国内主要5都市で開催されている「IBM中堅企業イノベーション・フォーラム2006」は、多くのヒントと刺激に満ちたイベントとしてビジネスマンを集めている。5月30日、東京・品川の新高輪プリンスホテルで行われた東京セッションを訪れた。

 午前10時30分からの開催だが、10時にはすでにビジネスマンが多数来場。フォーラムへの関心の高さがうかがわれる。

 フォーラムは日本アイ・ビー・エムが主催。シスコシステムズとレノボ・ジャパンの協賛のもと、中堅企業を対象に、成長のための戦略とソリューションを豊富な事例や講演などの中から体感・発見してもらうことを主旨としている。

 具体的には、基本的な方向性を示す「基調講演」、中堅企業に対するソリューションを提案する「パビリオン」、より詳しい戦略を知るための「ストラテジー・セッション(ビジネス講演)」の3部構成の形を取る。ストラテジー・セッションは複数会場で随時行われ、参加者はニーズに合った内容のセッションに参加できる形だ。

 このフォーラムでは「経営戦略」と「IT戦略」の両方の視点で課題解決策が提案されている。午前中に行われた基調講演も「リジェンダリーサービス 伝説と感動を生み出すサービスの仕組みづくり」「トヨタ『レクサス』の経営哲学 最高品質の追求、お客様にお届けする新しい『時間』」といった経営戦略の視点によるものと、IT戦略の視点による「企業改革法を越えて 真の業務改革とIT基盤整備を目指して」(アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス取締役 中澤進氏)の3本立て。

 特に「企業改革法を越えて」は、2008年3月にも導入されるとみられる日本版企業改革法(日本版SOX法)への対応や、それに伴う内部統制をいかに構築すればよいのかといった、現在各企業の大きな課題となっている旬のテーマを扱うものだけに、多数の参加者が熱心に耳を傾けた。

photo IBM中堅企業イノベーション・フォーラム2006会場。左が基調講演、正面突き当たりはパビリオン入口

日本版SOX法と内部統制をどう考えるか

 中澤氏の講演は文字通り日本版の企業改革法への対応と、内部統制をどのように行うかがテーマ。日本の企業が初めて経験することだけに、神経質になったり、過剰に反応する例も見られるが、基本的にはシンプルに考えればよいという。

 すでによく知られているように、日本版SOX法(企業改革法)は本家であるアメリカのものに比べ、ITの活用による内部統制が重視される見込みである。しかし、中澤氏は内部統制の整備とは、すなわち業務プロセスの整備であり、プロセスを整備する過程では必然的にITが登場すると語る。

 また、日本企業の置かれている環境の観点からもSOX法を考えることができるという。現在、東証の出来高の50%以上は外国人投資家によるもの。将来、中堅企業が上場したときは、外国人の価値観で見られる。そして外国人が企業を見る際の価値観は、アメリカのSOX法によるところが大きい。このように考えると、企業の価値を高めるには「説明責任の強化」「暗黙知から形式知への転換」「連結ガバナンスの確立」の3つのポイントに留意すればよいことがわかる。これらにより企業は透明化、標準化を果たすことができる。

さらに中澤氏は、すでに施行されている米国SOX法の例を挙げ、それが何を求めているか、各企業がどのように対応しているかを実例をもとに解説。日本アイ・ビー・エムグループの例も忌憚なく紹介した。

 また、従来の日本企業では、例えば営業プロセスでは現場の裁量の余地(暗黙知)が大きすぎるので、今後はプロセスとデータの可視化を実現(形式知)しなければならないと語る。しかし、それだけでは現場の活動を束縛することにもなりかねない。そこで必要なのが「例外管理」の考え方、バランスの取り方であるとする。

説得力のある内容に参加者は大きくうなずいていた。

photo 「企業改革法を越えて-真の業務改革とIT整備基盤を目指して-」講師、アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス取締役 中澤進氏
photo 内部統制の整備は、プロセスの整備であると強調する中澤氏

実例と具体例がいっぱいのパビリオンにストラテジー・セッション

 基調講演の終了と同時に「パビリオン」と「ストラテジー・セッション」が始まった。

 パビリオンは日本アイ・ビー・エムパートナー企業のソリューションをデモや展示によって紹介する「ソリューション・ブース」と、中堅企業の変革に役立つソリューションをセッション形式で紹介する「パビリオン・セッション」から構成されている。

 ソリューション・ブースの展示は、日本版SOX法や内部統制に関連したものが目立った。

 ずばり「内部統制ソリューション」であることを強調していたのはOSKの文書管理システム「Visual Finder forDB2」。情報収集からデータベース化を支援すると共に、暗黙知の発見も実現できる。

 エー・アンド・アイシステムの「Kizuki(R)」も内部統制ソリューションだ。名前の通り「気づき」による自立と想像を生む、人と組織のための企業ポータル基盤。モジュール単位で導入が可能で、カスタマイズもできることから、展示だけでなく同社によるパビリオン・セッションも賑わいを見せていた。

 フォーラムの協賛企業であるシスコシステムズのブースでは、ネットワークのデモ展示が目を引いた。ネットワークの構築だけでなく、情報漏えいの防止、不正アクセスの防止などのセキュリティ面までもがよく考えられた小規模ネットワーク向けのソリューションだけに、参加者の関心は高かった。

 主催の日本アイ・ビー・エムは、SAPジャパンとの協業による自社仕様のシステムが構築できるERPソリューションや、自社製サーバi5で高速レスポンスを実現する通信ミドルウェア、ダッソー・システムと共同でPLMソリューション、さらにアイピーロックスジャパンと共同で内部統制ソリューションなど、幅広い展示を実施した。

 これらのソリューション・ブースの展示は、同じフロアで開催されるパビリオン・セッションで補完される形となる。例えば日本アイ・ビー・エムは「PLMで実現するエンタープライズ・イノベーション」と題したセッションを実施。製造業における製品開発の企画から生産、ユーザーサポートの全過程における改革を提案した。また、エー・アンド・アイシステムは「そのIT、J-SOX監査に堪えられますか」と題したセッションにおいて、自社製ソリューションの解説と利用例を紹介。シスコシステムズは「スピード経営を実現!Ciscoが提案する最新IPコミュニケーション活用」のほか、計4テーマのセッションを実施し、自社製品をアピールした。

 ほかにも計50近いパビリオン・セッションが行われており、パビリオンは、来場者は自社または個人のニーズに限りなく近い選択ができる構成だ。

 パビリオンと同時刻に行われたストラテジー・セッションは、各業界キーマンによる興味深い講演が目白押しとなった。セッションはビジネス課題の解決に役立つビジネス講演と、IT関連の課題解決の糸口を見出せるIT講演の2カテゴリに大別され、計18回のセッションが行われた。

 注目のIT関連は、内部統制をテーマにした「内部統制を見据えた情報管理」「内部統制を強化する運用業務におけるIT活用」で、システムと内部統制の関連性を解説。ほかにも中堅企業にとっては興味深い「レガシー・トランスフォーメーションによる業務改革」、経営者向けの「スピード経営実現のためのワークスタイル変革」など、多用なニーズに応えるプログラムが用意された。

 また、「イノベーションを支えるIBMテクノロジー」も行われ、これはパビリオン・セッションとストラテジー・セッション全体のまとめともいえるセッションとなった。

photo パビリオンのソリューションブースは、「業種・業務関連」「業務変革関連」「システム開発・運用管理関連」に分かれて展示
photo エー・アンド・アイシステムのパビリオンセッションの様子
photo 自社製品によるシステム構成をデモ展示していたシスコシステムズ

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