ネットワークをインテリジェント化する――対症療法は効果なしロキ・ジョーゲンソンのネットワーク論

オートノミックと言っても、高度な分析をしてくれるわけではない。現状では、ネットの問題解決は結局技術者の肩に掛かっている。

2007年02月06日 07時00分 公開
[Loki Jorgenson,TechTarget]

 考える機械という意味での「AI」(Artificial intelligence)という言葉は、すっかり面目を失ってしまった。コンピュータサイエンスが過去数十年にわたり、ありとあらゆる分野にAIを適用しようとした直接的帰結である。これでわれわれは少しは謙虚になるかと思いきや、どうやらそうでもないらしく、「インテリジェンス」という言葉がまたぞろ大げさにもてはやされるようになってきた。今回は、ネットワークとその管理に適用するというものだが、これはまやかしにすぎない。

 確かに、非常に有用な技術も業界リーダー各社によって開発され、先見の明のある企業や先進的なユーザーによって導入されているが、せっかくのこういった成果を狂気じみた宣伝マシンが「ネットワークにおけるインテリジェンス」という言葉で汚そうとしている。

現実を直視する

 まず、自己修復・セルフプロビジョニング型ネットワークは将来的に有望かつ有益であるように見える。しかし現実的に考えてみよう。「オートノミック」(自律型)という言葉は、各システム要素の間の既存の関係を表すルールセットを自動的に処理することを外延的に意味している。とはいえ、これは、アインシュタインが箱の中に入っているというよりも、中でサルがクランクを回しているというのに近い。卑近な例で言えば、呼吸や血圧をつかさどる人間の自律神経系の場合、意識レベルよりも下層で行われる処理に重点が置かれており、われわれの好みや尊厳などは無視されることが多い(例えば失神など)。

 確かに、ネットワーク内での自律的挙動は、どのようなレベルであれ、今日われわれが行っていることから比べると、ほとんど魔法のように見えるだろう。そして「賢い」、「自動的」さらには「意識した」といったような形容詞が当てはまるかもしれない。しかしそれは「インテリジェンス」に匹敵するものではない。

 誇大宣伝は無視するとしても、ほかにも検討すべき現実がある。

 自己修復やセルフプロビジョニングを実現するには、ネットワーク状態の生成と記述に関する技術が大幅に進歩する必要がある。例えば、自動修復メカニズムには、パフォーマンス低下の原因とその場所、そして必要な対策を明確に特定する機能が要求される。そういった機能を提供できる技術は、(まだ)十分に成熟していない。

 二重通信における恐怖のミスマッチを例に取ろう。その典型的なケースが、スイッチのポートに接続されたワークステーションのNICインタフェースがそれぞれ異なる二重通信モードを使用するというものだ。下の図では、ステーションAは交互に送信する半二重通信モード(HD)を使用し、ステーションBは送受信を同時に行う全二重通信モード(FD)を使用している。

figure

 これは、オートネゴシエーションを信用せずに手作業でインタフェースを設定したり、あるいはオートネゴシエーションと手作業による設定を意図的に(しかし間違って)組み合わせた、ほとんどのIPネットワークでよく起きることである。この問題は、修正するのは簡単だが、見つけ出すのは非常に難しい。しかも、あらゆるタイプのアプリケーションに甚大な障害をもたらす。

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