企業ITでは仮想化が大きな潮流となっている。それに伴って生じている新たな動きの1つとして、シンクライアントの復活とその流行が挙げられる。HPが2007年にシンクライアントベンダーのNeowareを買収したのはそれを象徴している。従来型のファットデスクトップには肩身の狭い時代だ。ただ、復活とはいってもシンクライアントは決して廃れていたわけではなく、90年代後半に生まれた「ネットワークコンピューティング」の普及以降、ずっと使われてきた。しかし、シンクライアントがデスクトップを席巻すると予想されながらも、それが実現しなかったのも事実だ。その実現を妨げた当時の要因を指摘しておこう。

ハードウェアの購入コストの低減がシンクライアントの推進派が目指した目標の1つだった。しかし、デスクトップPCの価格が500ドルを切り、コストメリットはシンクライアントコンピュータを利用する理由としては非常に弱くなった。
ハードウェアは、ソフトウェアが重く、遅くなる以上に、速くなっていくだろうか? 残念ながら答えは「ノー」らしい。ハードウェアの能力が上がっても、OSとアプリケーションはそれを貪欲に消費することになりがちだ。
シンクライアント(とそのユーザー)は、中央サーバとそれにアクセスするためのネットワークに依存する。これらに障害が起こると、多くのユーザーの業務に支障を来たしてしまう。
リモートデスクトッププロトコルは、PCにログインするときにパスワードフィールドをマウスでクリックするような人にとっては違和感がない。実際、シングルタスクユーザーはこのシンクライアント方式によくなじんだ。しかし、この方式を物足りなく感じるユーザーも多い。わたしとしては、3Dアプリケーションや使い慣れたすべてのキーボードショートカットを快適に利用できるようにしてほしい。また、スキャナや音楽プレーヤーなどのUSBデバイスも使えるようにしてほしいところだ。
CitrixやMicrosoft、そのほかのベンダーのサーバ側プラットフォームは、特定の機能(印刷など)に制限があった。
では、余分なものをそぎ落としたクライアントコンピュータを中心とするシンクライアントコンピューティングモデルが、こうした要因を克服することは可能だろうか。わたしは可能だと思う。サーバとネットワークの信頼性は年々向上しており、それはシンクライアントの安定運用の基盤になる。シンクライアントは価格が安く、サーバ側のハードウェアとソフトウェアもユーザビリティが改善されている。例えば、Windows Server 2008のターミナルサービス機能では、リモート接続を使って特定のアプリケーション(デスクトップ全体ではなく)を実行できる。また、大容量RAMをサポートするマルチコアプロセッサは、拡張性を提供する。全体的に見て、シンクライアントは安上がりで、使い勝手が良くなっており、必要なリソースも少なくなっている。このような技術を気に入らないというIT管理者がいるだろうか。
ただし、シンクライアントとの付き合いが長く続くかどうかは、時間がたってみないと分からない。古いファットクライアントをすぐには捨てないようにしよう。シンクライアントが今、時代の波に乗っているのは確かだが、流行は繰り返す。ひょっとすると、ファットクライアントも意外に早く、また流行るかもしれない。