企業が今すべきは「カジュアルBI(ビジネスインテリジェンス)」か?市場動向から予測するアプリトレンド【BI編】

BIベンダーを手に入れたOracleやSAP、IBMは、BIを活用した企業のパフォーマンス管理への対応を打ち出しているが、ユーザー企業はどのBIツールを選ぶべきか。IDC Japanへの取材を基に、BIツールの今後の展開を予測する。

2008年06月12日 08時00分 公開
[谷川耕一]

2007年の大規模な業界再編がBI市場拡大の一因に

 2007年は、BI(Business Intelligence)市場を大きな変革の波が襲った。外資の独立系大手BIツールベンダーが、軒並み買収されたのだ。3月にHyperion SolutionsがOracleに、10月にはBusiness ObjectsがSAPに、そして11月にはCognosがIBMに。いずれの買収劇も大きなもめ事もなく友好的に進められたのは、買収されたどのベンダーもこの市場変化を必然ととらえ、自ら積極的な変革を求めていた結果なのかもしれない。

 通常は市場で大規模な製品買収が発生すると、その市場は一時的に停滞、縮小することが多い。しかしながら今回の大型再編はそれぞれのツールが大規模ベンダーの後ろ盾を得ることとなり、むしろ製品の提供体制やサポート体制が大幅に強化された。買収したベンダーが持つ大きな顧客基盤の活用などもあり、市場はさらに拡大する可能性が高い。

 また、企業を取り巻く環境の変化もBIツールには追い風となっている。2008年4月から日本版SOX法への対応が始まり、対応後に期待される内部統制強化のための「見える化」の実現にも、BIツールのニーズは高いものがある。

 実際のところIDC Japanによれば、BIツールおよび分析ツール、ETL(Extract, Transform and Load)ツール、DWH(データウェアハウス)関連製品を含むBA(Business Analitics)製品の日本市場は、拡大傾向にあるとのこと。2005年のBA製品に対するユーザー投資額は7190億円で、これが2006年に7573億円に増加している。伸び率こそ低下しているが、2007年も引き続き市場は拡大しているという。IDC Japanでは、伸び率低下の原因をIT投資がよりコスト負担の大きいERP製品に一時的に向けられたためであろうと分析。今後のBA製品の市場については引き続き対前年比で6〜7%程度の成長を続け、市場規模としては2008年に8421億円、さらに2011年には9932億円まで拡大すると予測している。

市場規模(単位:100万円)
  2006 2007 2008 2009 2010 2011 2006〜2010
CAGR
ソフトウェア 151460 162971 175357 188859 203968 219878 7.70%
サービス 432743 454380 477554 502386 529515 558109 5.20%
そのほか 173097 181060 189207 197343 206026 215297 4.50%
合計 757300 798411 842118 888589 939510 993284 5.60%

構成比
  2006 2007 2008 2009 2010 2011
ソフトウェア 20.00% 20.40% 20.80% 21.30% 21.70% 22.10%
サービス 57.10% 56.90% 56.70% 56.50% 56.40% 56.20%
そのほか 22.90% 22.70% 22.50% 22.20% 21.90% 21.70%
合計 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%

成長率
  2006 2007 2008 2009 2010 2011
ソフトウェア 7.40% 7.60% 7.60% 7.70% 8.00% 7.80%
サービス 4.80% 5.00% 5.10% 5.20% 5.40% 5.40%
そのほか 4.60% 4.60% 4.50% 4.30% 4.40% 4.50%
合計 5.30% 5.40% 5.50% 5.50% 5.70% 5.70%

国内BAソリューション市場 セグメント別投資額予測(出典:IDC Japan 2007年9月「国内ビジネスアナリティクスソリューション市場2006年の分析と2007年〜2011年の予測」)

 現状、2007年の買収劇によりBIツールベンダーは、総合力のある大規模ベンダーと専門技術に特化した独立系ベンダーに二極化している。SAS InstituteやSPSSなどの独立系BIツールベンダーはさらに特化した技術を打ち出すか、製品領域の重ならないベンダーとの新たな提携を迫られるかもしれない。その動きによっては、2008年以降も業界再編が加速する可能性がある。BIツール単独で生き残るのが厳しい状況は、国産のBIツールベンダーも同様だ。

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