2009年05月22日 08時00分 UPDATE
特集/連載

部長のためのBI活用講座【第4回】マネジャー別、売り上げ分析のためのBI活用シナリオ

「全国に店舗を持つ小売業」という想定で、売り上げ拡大のためのBI活用のシナリオを紹介する。仕入れ、エリア、店舗のマネジャーごとに、データ活用の仕方は変わってくる。

[小島 薫,ウイングアーク テクノロジーズ]

いまさら聞けないBIツールの基本

 今回はあらためてBI(Business Intelligence)ツールを使ったデータ活用法を学んでみよう。一般的なデータ活用はデータの検索・集計が基本だ。例えば販売管理で考えてみよう。

 営業マネジャーであれば、全社の月別・商品別売り上げ一覧表、営業チーム別の予算・実績一覧表といった管理資料に毎月目を通しているはずだ。これらの管理資料は、販売データ(売り上げ明細)の中から特定の期間のデータを検索し、それを管理資料ごとの管理軸(例えば、営業チームや商品)で集計して作成されている。

 以前は紙に印刷したものを見ていたかもしれないが、最近ではペーパーレス化も進み、PDF文書などの電子ファイルとして配布されたり、ファイルサーバ上で共有されたりしているケースも少なくない。しかしどちらの場合も、データ活用といっても定型的に与えられたデータをMicrosoft Office Excelに再入力して自分なりのリポートを作るといったことができる程度だ。それがBIツールを使うことで、これまでの管理資料では見えなかったことが見えるようになる。

 BIを活用して、これまでバラバラに管理していたデータを共有して可視化することで、さまざまなメリットが生まれる(ペーパーレス化によるコスト削減は言うまでもない)。例えば、これまで店舗ごとに管理していた生産状況や出荷状況を全店舗で一元的に可視化できれば、効率的な生産管理を行うことができる。また、共通化したデータ管理による生産性向上は、明確な人的コストや物理的コストの削減につながり、業務効率を上げ、迅速な意思決定を促すのである。

 それでは、実際にBIツールを使ってデータを操作していくが、本稿では「全国に店舗を持つ小売業」という想定で売り上げデータを使ってみる。

仕入れマネジャー(バイヤー)の視点

画像 一般的な管理資料でよく目にする、商品分類別の年度別売上金額集計表。元はPOSレジの売り上げデータだ《クリックで拡大》

 これは、商品の仕入れを担当している仕入れマネジャー(バイヤー)にとって、非常に重要な資料となる。実際には商品別(いわゆる単品別)の売り上げを常に見ているが、ここでは分かりやすくするために商品分類別での売り上げの推移としている。

 この資料には集計項目として、行項目の「(商品)大分類名称」、列項目の「年度」がある。これらはBIの世界では一般的に「分析軸」と呼ばれる。言い換えるなら、管理資料での「○○別」という項目が分析軸ということになる。この資料の場合は、「(商品)大分類名称」「年度」という2つの分析軸での集計表ということになる。

 また、多くの場合、「地域別」「顧客属性別」「仕入先別」など分析軸の組み合わせで資料を多数作成するが、BIツールではそれらの組み合わせを動的に変えることで、さまざまな角度からデータを即座に可視化できる。分析軸は「次元」と表現されることがあり、BIツールでは複数の次元(分析軸)で分析できる。BIツールを利用した分析が多次元分析と呼ばれる理由だ(図参照)。

画像 多次元分析のイメージ。拠点別、年度、商品別といった複数の分析軸を組み合わせることで、単一の分析軸では見えなかったものが見えてくる

エリアマネジャーの視点

 次にエリアマネジャーの立場からデータを見ていこう。エリアマネジャーに必要なのは地域や店舗別のデータ分析となる。

画像 行項目の分析軸が「(商品)大分類名称」から「ブロック名」に変わっている。このように分析軸を入れ替えることをあたかもダイス(サイコロ)を回しているかのように操作するため、「ダイシング」と呼ぶ《クリックで拡大》

 今度は「ブロック名」のさらに下の階層である「支社名」に掘り下げて見てみよう。今回の販売データの例では、地域(ブロック)の下に支社があり、さらにその下に店舗があるという組織を想定している。

画像 「ブロック名」の下の階層となる「支社名」別の売上金額集計表。関東ブロックの中でも東京支社が最も売り上げが高く、それなりに売り上げのあった中部ブロックは名古屋支社がけん引している、といったことが読み取れる《クリックで拡大》

 これで、ブロックごとの支社別売り上げが見えるようになった。このようなデータ分析の操作を一般的に「ドリルダウン」と呼ぶ(逆に、上の階層に上がって見ることを「ドリルアップ」と呼ぶ)。ドリルダウンには、この例のように全ブロックの下の階層を表示する方法と、特定のブロックに絞り込んで下の階層を表示する方法がある。例えば、全国の中で売り上げに問題のある支社を探すのであれば前者を、全国の中で特定の支社に絞って見たい場合には後者を利用する。

 さらに「支社名」から「店舗名称」といったように掘り下げていくこともできる。例えば、成績不振のブロックからさらに成績の悪い支社を見つけ、さらにその中で成績の悪い店舗を見つけるといったことが容易にできるようになる。

画像 「支社名」の下の階層となる「店舗名称」別の売上金額集計表。この表では関東ブロックの横浜支社に絞ったドリルダウンを行っている《クリックで拡大》

 また、BIツールによっては、階層関係以外の分析軸でドリルダウンできるものもある。例えば、「ブロック名」からいきなり「(商品)大分類名称」でドリルダウンすると、地域別の商品大分類別売り上げ構成を見ることができる。

画像 「ブロック名」から「(商品)大分類名称」でドリルダウンした売上金額集計表。エリアマネジャーは自分の担当するブロックとほかのブロックを比較し、売り上げ構成で大きな違いのある大分類があった場合、さらに掘り下げて見ていくことで要因を特定し、具体的な対策を立てることができる《クリックで拡大》

店舗マネジャーの視点

 次に店舗マネジャーの視点で考えてみよう。店舗マネジャーには自分の店舗に絞った商品別の売り上げ資料が必要になる。これが次の資料だ。

画像 恵比寿店における「(商品)大分類名称」別の売上金額集計表《クリックで拡大》

 これで、その店舗の商品別の強み、弱みが見えてくる。部分的に見ると、先ほどの仕入れマネジャー(バイヤー)の見ている「(商品)大分類名称」別の管理資料と同じだが、集計対象のデータが自店舗に絞り込まれている。これは、ダイス(サイコロ)のある断面を切り取る操作ということで「スライシング」と呼ばれる。つまり、「店舗名称」「(商品)大分類名称」「年度」の売上金額集計から、特定の店舗を切り出したということになる。

 さらに先ほどと同様に、ドリルダウンの操作により商品の中分類、小分類、商品単品といった、より詳細レベルで傾向をつかむことができる。例えば、前年と比較してどの商品の売り上げが伸びているのか、売れなくなっているのかといった「売れ筋、死に筋」を把握することで、在庫の効率化や売れ残りでのロスを圧縮する、といった具体的な対策が可能となる。

 また、ドリルダウンを続けていくと、最終的に明細データが必要になる場合も多い。例えば、「ある商品を買った人がどのような属性の顧客なのかを詳細に見たい」「この商品を買ってくれた顧客に絞ってクロスセルを行うために、ダイレクトメールを送りたい」など、いろいろと考えられる。このようなときに便利な機能が「ドリルスルー(明細参照機能)」だ。

画像 多くのBIツールでは集計結果からドリルスルーを利用できる。先に紹介した恵比寿店における「(商品)大分類名称」別の売上金額集計から、2007年度に「趣味、生活用品」を購入した顧客を見てみよう。このBIツールの場合は、該当の集計項目をクリックすると明細データが表示される《クリックで拡大》
画像 恵比寿店で2007年度に「趣味、生活用品」を買った顧客の一覧表が表示された。この明細データを表示するためには、当然事前にPOSレジの売り上げデータに個人情報をひも付けておく必要がある《クリックで拡大》

 店舗と商品と顧客をひも付けたことで、「特定の商品を誰が」という分析だけでなく、「特定の店舗の顧客がどのような商品を買っているのか」という購買動向も見えてくる。そこに傾向があれば、特定属性の顧客に向けた販売促進策の実施も可能だ。

BIツールを利用したRFM分析

 特定属性の顧客に向けた販売促進策の例として、BIツールを利用したRFM分析を実践してみよう。RFM分析は、小売業などの個人顧客に物品を販売する業態における有効な分析手法といわれており、顧客個人ごとの売り上げ明細があることを前提に、以下の3つの指標をデータベースに入力、あるいは売り上げデータから算出する。

  • R:Recency(最新購買日)
  • F:Frequency(購買頻度)
  • M:Monetary(購買金額)
画像 算出した各ランクにはそれぞれ意味があり、通常はR、F、Mの組み合わせからそれぞれの顧客層に対して異なったアクションを取る《クリックで拡大》

 例えば、すべてにおいてポイントが高い顧客は、安定的な顧客といえる。Rだけ低い顧客(図中1)は安定的な上顧客だが、最近の来店がないために他店に奪われてしまっている可能性がある。一方、RとFが高い顧客(図中2)は来店数は多いが何も買わない顧客、Rだけ高い顧客(図中3)はつい最近来店した顧客で、対応によっては今後伸びる可能性がある。またMだけが高い顧客(図中4)はいちげんの顧客ということになる。

 これらの顧客の属性に合わせて、例えば、安定的な顧客には継続的な購入を促すために感謝のギフトを送るのもいい。また、図中1や2の顧客にはバーゲンに招待するといった、さまざまな対策を取ることが可能となる。

画像 BIツールによるRFM分析の例。ドリルスルーで顧客情報を表示する

 以上、一般的なBIツールでデータ操作の基本を紹介してきた。ドリルダウンやダイシングといったデータ操作が簡単にできることがBIツールの特徴だ。これらのデータ操作により、各現場のマネジャーが必要な情報を正確に、しかも必要なときに得ることができる。

 しかし、真のBI活用には、データをいかに「速く」「具体的に」企業活動の意思決定や行動に反映するかが重要である。次回は最終回として、業務現場を強くするBI活用について紹介する。

<筆者紹介>

小島 薫

ウイングアーク テクノロジーズ株式会社

事業統括本部 Dr.Sum事業部 事業部長

石川県出身 1959年生まれ。製造業でのシステム構築、経営企画などに従事した後に、独立系パッケージベンダーに入社。汎用機からオープンシステムまでの基幹系データベースを中心に、データウェアハウス(DWH)、XML関連のサポート、プリセールス、コンサルティング、マーケティングを経験。2005年にウイングアーク テクノロジーズに入社し、技術本部長を経て、現在Dr.Sum事業部長。


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