アルプス電気が遠隔ディスクバックアップの新潮流「CDP」に挑んだ訳ディザスタリカバリ導入事例:FalconStor CDP

国内屈指の大手電子部品メーカー、アルプス電気。最近、社内システムの一部で「CDP」(継続的データ保護)の技術を活用したバックアップシステムを稼働開始したという。その背景と導入効果について詳しく聞いた。

2009年09月14日 08時00分 公開
[吉村哲樹,TechTargetジャパン]

サーバ集約に伴いバックアップも全面見直し

 国内外に多数の拠点を持ち、グループ全体で約3万7000人の従業員を抱える大手電子部品メーカーのアルプス電気。同社の国内拠点の多くは宮城県仙台市の近郊にあり、その中の1つに仙台開発センターがある。ここでは主に製品の設計・開発業務が行われているが、かねてよりITシステムの運用に課題を抱えていた。

 電子部品の設計・開発業務ではCADやシミュレーションなどのシステムが使われるため、容量の大きい電子データが日々発生する。これらの大容量データを保管するために順次ファイルサーバを追加導入してきた結果、小規模なファイルサーバが社内に乱立し、その運用管理が煩雑になっていた。特にその中でも、バックアップに要する工数がかさんでいた。同社 技術本部 管理グループの佐藤綾郁氏は、当時の状況を次のように振り返る。

画像 アルプス電気 佐藤綾郁氏

 「個々のファイルサーバにLTO2のテープ装置を搭載してテープバックアップを行っていたが、運用が煩雑なだけでなく、バックアップメディアの信頼性にも問題があった。さらに、サーバの保守期間が切れるタイミングだったこともあり、ファイルサーバの集約と、それに伴う新たなバックアップソリューションの構築が急務だった」

 そこで、アルプス電気のグループ会社であるアルプス システム インテグレーション(以下、ALSI)にファイルサーバのリプレースおよび集約のソリューションを依頼するとともに、独自に新たなバックアップソリューションを模索することとなった。しかし、複数のベンダーに提案を依頼したものの、どれもコスト面でのメリットを見いだすことが困難だったという。

 「ストレージ装置の筐体間コピーによる遠隔レプリケーションなどの提案を受けたが、どれも高いコストがネックになった。それまで仙台開発センターではテープの遠隔地保管によるバックアップ/リカバリの運用を行ってきたため、サーバ本体より高価なバックアップ/リカバリの仕組みを一気に導入するのは、社内の理解も得にくかった」(佐藤氏)

「初物」のCDPに果敢にチャレンジ

 こうした状況を踏まえてALSIが提案したのが、ファルコンストアの「FalconStor CDP」を使ったバックアップ/リカバリソリューションだ。同製品は、CDP(継続的データ保護)と呼ばれる技術を採用したバックアップ/リカバリソフトウェア。CDPとは、初めにデータのミラーリングを行った後は、データ更新の内容を逐一保管しておくことにより、任意の時点の内容に迅速にデータを復旧することができる技術である。比較的新しい技術で、特にファルコンストアの製品はデータ更新の内容をファイル単位ではなくブロック単位で保管するため、差分データの容量を小さくできる。そのため、ディザスタリカバリのためにネットワーク経由で遠隔地に差分データを転送し、データのコピーを作成する際にメリットがあるという。

 ALSIは、仙台開発センターから20〜30キロほど離れた場所にあるアルプス電気古川工場の敷地内で、データセンター(古川データセンター)を運営している。仙台開発センターと古川データセンターの間は、100Mbpsの専用線で接続されている。そこで、古川データセンター内にFalconStor CDPのサーバを設置し、仙台開発センターのファイルサーバにFalconStor CDPのエージェントソフトウェアを導入。ファイルデータをCDPの仕組みを使って古川データセンターのサーバに転送して遠隔地レプリケーションを実現しようというのだ。ストレージ筐体間コピーやD2D2Tによるシステム構成に比べ、コストが大幅に安く済むことからも、ユーザーのニーズに合致すると判断した。

画像 アルプス システム インテグレーション(ALSI) 長野太星氏

 このバックアップ/リカバリシステムの設計・構築を手掛けたALSI 製造流通ソリューション事業部 ITサービス部 長野太星氏は、FalconStor CDPの導入経緯について次のように語る。

 「ALSIが手掛けるソリューションでFalconStor CDPを採用するのはまったく初めてだった。また、CDPは当時まだ新しい技術で、導入事例も周りに存在しなかった。そこで、ユーザーからの強い要望もあり、事前に徹底的に動作検証を行った」

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