クラウドに目を向け始めたCIO 中堅企業の仮想化導入は第二段階にDR/BC対策とクラウドコンピューティング

ミッドマーケットのCIOは半年前と比較して、仮想化の導入をかなり進めており、クラウドコンピューティングを視野に入れるCIOもいる。

2009年09月25日 07時30分 公開
[Niel Nickolaisen,TechTarget]

 わたしは2月に、ミッドマーケット(中堅企業)の多くのCIO仮想化に関してどのような取り組みをしているかについて述べたコラム「Virtualization project success factors from midmarket CIOs」を書いた。変化の激しいIT分野にあって2009年2月というのは、はるか以前のことであるため、彼らが現時点でどの程度まで仮想化を導入しているのか追跡調査する必要があると考えた。その結果、仮想化の導入がかなり進んでいることが明らかになった。

 現在、ミッドマーケットのCIOの多くは、ミッションクリティカルなサーバで仮想化を利用している。また、重要なサービスの可用性を改善する目的でも仮想化が利用されている。ディザスタリカバリ事業継続(DR/BC)戦略を修正するために仮想化を利用しているケースも見受けられた。拡大する仮想環境に慣れるのに伴い、クラウドコンピューティングに目を向け始めたCIOもいる。

 以下に調査結果を報告しよう。

ミッションクリティカルサーバの仮想化

 2月の時点では、ミッドマーケットのCIOの多くは、ミッションクリティカルなサーバの仮想化に消極的だった。実業務用データベースやExchange Serverを仮想化した勇敢なCIOもいたが、大多数のCIOはまだためらっていた。しかし半年後には、多くのCIOがミッションクリティカルなサーバの仮想化に踏み切っていた。サーバファームのほぼ全体を仮想化したCIOもいた。このCIOによると、複数のExchangeサーバ(数千の電子メールアカウントをサポート)、Oracle DatabaseサーバおよびCitrixサーバを仮想化したという。

可用性とDR/BC対策としての仮想化

 障害の発生がビジネスリスクにつながるミッションクリティカルなシステムの仮想化が進むのに伴い、非常に重要なサービスの可用性を改善するために仮想化機能を利用する動きも見られる。調査に協力したCIOの約25%は、(サーバおよびストレージの)仮想化を利用して、DR/BC戦略を修正していると答えた。以下は典型的な回答だ。

 「現在、当社のIT DR/BC戦略はサーバ仮想化に依存している。ERP環境でもサーバの仮想化を拡大するつもりだ。データファイルの確実なバックアップ、そしてプライマリデータセンターとリカバリセンターとの間のデータファイルの同期化のために、ストレージ管理用のソフトウェアユーティリティを利用している。2010年1〜3月期にはvSphereを導入することにより、DR/BC対策でVMwareの利用を拡大する計画だ」

 DR/BC対策で既に仮想化を利用しているCIOたちは、データのみならずサーバのバックアップ、複製、復元も迅速に行えることが分かったという。

仮想化と俊敏性

 仮想化で期待できるメリット(サーバ台数の減少、メンテナンスコストの削減、サーバ利用率の改善、消費電力の削減など)に加え、ミッドマーケットのCIOたちは社内ユーザーのニーズに迅速に対応できるようになったことを利点として挙げている。

 例えば、経理部門が非常に複雑な仕分け項目を試験的に登録したいと考えているとしよう。この仕分け項目の追加が、総勘定元帳の各項目にどのような影響を及ぼすかを把握するためだ。仮想化を利用して本業務用のERPサーバのクローンを作成すれば、経理部門は複雑な仕分け項目をクローン環境に登録し、そのすべての影響を把握することができる。このアプローチを採用すれば、仕分け項目に問題があった場合でも、本業務用システムでの複雑な処理を元に戻すのに比べると大幅に時間を節約できる。

次の論理的ステップはクラウドコンピューティングか

 わたしは常々、「未来学者」をうらやましく思っている。素晴らしい仕事のように思えるからだ。あまり本を読んだり考えたりせずに、将来の環境や判断に影響する巨大なトレンドを予言すればいいからだ。わたしも一度、この役割を演じさせていただくことにしよう。

 トレンドという視点から見れば、仮想化の論理的帰結の1つがクラウドコンピューティングの導入に対する意欲的な姿勢だ。サーバとストレージの仮想化を徐々に導入することから始めたCIOたちは、その結果に満足できたことで、仮想化の利用をさらに拡大した。そして現在、彼らは少数の物理サーバ上に複数の仮想サーバを置くという考え方にすっかり慣れたようだ。この方式に慣れてしまえば、今度は物理サーバがどこに置かれているかは大して問題にならないはずだ。それなら、より大きなメリットを提供できるような場所に物理サーバを置けばいいではないか、というわけだ。

 例えば、わたしの会社では、DR/BCシステムをクラウドに移行させることを真剣に検討している。ホットサイト(すべての機器を用意して常時稼働)でもウォームサイト(すべての機器を用意)でもコールドサイト(施設のみ用意)でもクラウド内に置くことができるのであれば、これらのサイトを社内で保有する必要があるだろうか。数年前であれば、こういった考え方は異端視されただろう。しかし仮想サーバへの心理的移行が完了した今日、これはもうそれほどとっぴなアイデアではない。

 全体的に見れば、ミッドマーケットのCIOたちは、ITシステムの運用の効率化と改善のために、仮想化が提供する機能や選択肢を利用しているようだ。そしてわたしの非公式な調査では、どこでどのように仮想化を適用するかについてCIOたちは創造性を発揮していることが明らかになった。まだ仮想化の導入をためらっている人は、何を待っているのだろうか。

本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は米HeadwatersのCIO兼戦略計画担当副社長。


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