数多くの仮想化製品を評価し、社内にフィードバックして技術支援を行う野村総合研究所の専門家は、日本企業の仮想化への取り組みには3つの問題点があると指摘する。
景気動向が改善傾向を示す一方、設備投資判断はいまだ軟調で底堅い動きを見せない中、IT市場では相変わらず仮想化頼みの状況にある。IDC Japanが2009年12月に発表した2009年の国内仮想化サーバの出荷台数は、前年比1.6%の微減となる6万1000台になる見込みとしたが、2009年の国内サーバ市場全体の出荷台数が前年比17.9%減と大幅に落ち込む中では立派な健闘材料だ。仮想化サーバ市場は2008年〜2013年の平均成長率がプラス18.3%を維持していくことで、国内サーバ仮想化比率は2009年の12.3%から2013年には一気に23.2%になると予測されている。
信頼性やパフォーマンス、投資対効果などが懸念されていた仮想化だが、今やそんな過小評価が一掃されるととともに、景気後退が仮想化技術を本格的に導入しようとする企業を増やしているとIDC Japanは分析している。
仮想化への取り組みにはさまざまな目的がある。例えば、インフラの統合・集約化によるリソースの有効活用やコスト削減、運用管理の効率化、既存システムの延命、開発・テスト環境の容易な実現などだ。
サーバやストレージを集約することでTCOや保守コストの削減を図るとともに、リソースの効率化によってシステムの可用性/稼働率の向上が期待できる。また、Windows NTや2000などサポートが終了したレガシーOSで動くアプリケーションを最新のハードウェアで運用し続けることが可能になる。さらに、仮想化は1台のサーバで複数の開発・テスト環境を用意できるので、別に専用のサーバを設ける必要がないのもメリットだ。ほかにもシステムパフォーマンスの向上や設置スペースの削減といった効果も期待できるだろう。
だが日本の仮想化の現状には課題も多い。その1つとして、「日本企業の場合、サブシステムごとに仮想化のサイロ化が進んでしまっている」と指摘するのは、野村総合研究所(以下、野村総研)の情報技術本部で基盤技術一部のグループマネージャーを務める西片公一氏だ。同氏は、各仮想化製品の評価結果を社内のコンルタントやプロジェクトにフィードバックして技術支援を行う立場にある。
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