2010年04月21日 08時00分 UPDATE
特集/連載

TechTargetジャパン読者座談会 【後編】プロジェクトを成功に導くコミュニケーション術とは?

プロジェクトマネジャーによる座談会では「リソース不足」「メンバー間のコミュニケーション不足」をテーマとしてその改善策を語ってもらった。後編ではその内容を紹介する。

[TechTargetジャパン]

 前回の「プロジェクトマネジャーに必要なスキルとは何か?」に続き、TechTargetジャパンが2010年3月に実施した座談会の内容を紹介する。今回は、読者アンケート調査で分かったプロジェクトの生産性を阻害する3つの課題のうち「リソース不足」「メンバー間のコミュニケーション不足」に関して、その改善策を語ってもらった。

座談会参加者紹介

座談会参加者 氏名・所属企業・業務内容および日々感じている課題
jo_100421_yatomi.jpg 彌冨美香(やとみ みか)氏
株式会社RINET

1年以内のプロジェクトに携わってきた。会社としては今後マネジメントにより注力する予定で、そのルール付けなどを準備する段階にある。
jo_100421_abe.jpg 阿部昭彦(あべ あきひこ)氏
東芝情報システム株式会社

これまで組み込みOSや組み込み系の検査といった少人数のプロジェクトを複数管理する立場にあった。現在は大規模プロジェクトにメンバーとして参加。4人のお子さんのマネジメントにも奮闘中。
jo_100421_kibe.jpg 木部保之(きべ やすゆき)氏
株式会社CSKシステムズ

顧客企業である大手電機精密機器メーカーのPMOの一員として、プロジェクト管理支援を行っている。「教科書的には進まない物事をどう推進していけるか」を課題として考えている。2003年、PMI東京におけるPMBOK委員会にも参画。
jo_100421_nakazawa.jpg 中澤康至(なかざわ やすゆき)氏
カブドットコム証券株式会社

ネット証券の発注システム全般のマネジメントを行っている。「並行して進んでいるプロジェクトをいかにうまく、滞りなく進められるか」を模索中。
jo_100421_ishigami.jpg 石上孝幸(いしがみ たかゆき)氏
株式会社ジェーアイイーシー

開発プロセスや成果物の標準化作業に従事。また、品質管理も担当分野。現場のSEからよく上がってくる「自分のプロジェクトは分かるが、ほかのプロジェクトのことは分からない」という課題を解決したいと考えている。
jo_100421_yamada.jpg 山田憲司(やまだ けんじ)氏
コベルコシステム株式会社

ERPを専門分野として、大規模プロジェクトを中心にプロジェクトマネジャーとして奮闘中。
jo_100421_aiba.jpg 相場宏二(あいば こうじ)氏
マイクロソフト株式会社

プロジェクト管理ツール「MS Office Project」の製品担当。「プロジェクトマネジャーが日々どのように業務に取り組んでいるか」に関心がある。
jo_100421_nagaya.jpg モデレーター
永谷裕子(ながや ゆうこ)氏
PMI日本支部事務局長

20年近くITプロジェクトマネジャーとしてインターナショナルなプロジェクトに従事。現在は日本でのプロジェクトマネジメントの活動を支援する業務に携っている。

リソース不足を解消するためには

編集部:読者調査では「複数のプロジェクトを同時並行しているメンバーが多く、特に優秀な人員ほど忙しい」「メンバー間の平準化がなされていない」という課題が挙げられていました。

画像 モデレータ―の永谷氏

永谷:PMBOKでは「人的資源マネジメント」というスコープで明確に定義されており、「要員マネジメント計画書」を作成し、組織図や必要なスキルを定義して必要な人員をリソースプールから割り当てることがうたわれています。とても整然としていて、その通りに行えばリソース不足は起きないでしょう。ただPMBOKはあくまでもフレームワークなので、これを適用していくことが大事です。そもそもプロジェクトに必要なリソースとは、どのように見積もりされ、どのように人員が配置されるのでしょうか。

山田:「社内のキーパーソンをプロジェクトで活用したい」といっても、実際には空いている要員があてがわれることが多いです。そのため、スキル的に十分でない人でもプロジェクトにあてがわれる率も高くなります。

画像 コベルコシステムの山田氏

 また、外部の優秀な人を要請しても、企業側がキャッシュアウトを嫌うため、多少スキルに難があっても内部の人員が割り当てられることが多いです。リソース不足とは、あくまで自分の想定に対する不足であって、「実際にはこのメンバーで遂行するしかない状況にある」と思うので、プロジェクトの回し方を工夫することが必要だと感じています。

画像 東芝情報システムの阿部氏

阿部:弊社でも、例えば「あるプロジェクトが終了するので、10人空きが出る。その分の案件を取ってこい」というように順番が逆になってしまうこともあります。プロジェクトありきで人を選ぶのではなく、人が余っているから案件を取ってくるということが残念ながらあります。

石上:重要なプロジェクトであれば、「この人しかいない」ということで必要な人員を無理やり引っ張り出してくることもあります。その穴を埋めるために別の人を割り当てるなどのマネジメントはしています。ただ、運用面でかなり難しいことは確かです。

画像 ジェーアイイーシーの石上氏

永谷:そのマネジメントを行うのは、プロジェクトマネジャー(以下、PM)ですか?

石上:プロジェクトの重要度に応じて、場合によってはバイネームで上司に要請しています。

阿部:その場合、上司の力関係も絡んできますよね。

石上:そうですね。

画像 RINETの彌冨氏

彌冨:弊社では社員が十数人と少ないので、社内にリソースがほぼない状態でした。以前、20人以上のプロジェクトを遂行した場合、基本的には社外のリソースを活用して、社内からは新人のメンバーを割り当てて対応したことがあります。プロジェクトの中で新人メンバーを育てていくという状況でした。

 また、社外のメンバーはこれまで実際に会ったことがない方や外国の方も含まれており、言葉の壁という問題もありました。その中でプロジェクトを遂行し、その終盤に近づくにつれ、ようやく求められるスキルが身に付いてきたこともあります。

画像 カブドットコム証券の中澤氏

中澤:弊社でも常に積み残しなどがあり、リソース不足の解消は現実的にできない状況です。そうなると「今あるリソースでいかに効率的にプロジェクトをマネジメントするか」がポイントになってきます。現在、パートナー企業と協力してプロジェクトを進めていますが、その中には証券知識があまりないメンバーも含まれています。「証券知識+ITスキル」のある人材を要請した場合でも、そういった人材がプロジェクトに割り当てられることはそう多くはありません。

 逆にそれはある意味ぜいたくなことだとも考えています。そのため、メンバーをプロジェクトの中で教育して育てるようにしています。その仕組みを一度確立すると、新しいメンバーにも同様なスキルトランスファーが可能になると思います。

画像 CSKシステムズの木部氏

木部:弊社でも同様です。どんなプロジェクトでも失敗は許されないですが、特に重要度の高いプロジェクトでは優秀なPMやリーダーを名指しで割り当てることがあります。場合によっては、部門の上長や経営層に要請することもあります。それでもメンバーのスキルが足りない場合は、外部の人員を割り当てています。

相場:弊社ではPMの要請がうまくいかなかったり、十分にメンバーの教育ができなかったということで、現場が疲弊した時期がありました。最近ではマネジャーの権限を広げるなどによって、その改善に向けた取り組みを進めています。

画像 マイクロソフトの相場氏

永谷:皆さんのお話を聞いていると、PMには必要なメンバーを確保するための“交渉力”、スキル的に不十分なメンバーを活用しながら、現場の業務を教えるということが必要になると感じました。リソース不足を解消するためにも、やはりPMの力量が問われることになると思います。

 以前勤めていた外資系企業で、スキルプールのリソースマネジャーを担当したことがあります。プロジェクトにおけるスキル定義が体系化されており、人物評価やどういう失敗をしたかなども含めた過去のプロジェクトの詳細なデータが蓄積されていました。リソースマネジャーの業務は、プロジェクトの立ち上げ時に、PMが作成した、今回のプロジェクトに必要なスキルに応じた「人員計画」の見積もりを基にリソースプールからメンバーを割り当てることです。メンバーによっては既に別プロジェクトに割り当てられていることもあり、そうした場合の交渉なども行っていました。また、必要なリソースの調達ができない場合は、そのリスクを判断するPMO(プロジェクトマネジメント組織)やPMと一緒になって、組織横断的な合意形成を行うことに努めました。体制としては非常にシステマチックで整然としていますが、それでも問題が起こらないというわけではありませんでした。

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