製造/建設業の工程管理をベースにしたシステム開発向けプロジェクト管理システム「SynViz/SD」プロジェクト管理ツール紹介:日立東日本ソリューションズ編

大規模なシステム開発においては、複数の企業や組織間にまたがるプロジェクトの管理が重要となる。その場合、WBSや企業間での日程調整などの情報共有がうまくいかないと、その納期やシステム品質に与える影響は大きい。

2010年08月06日 08時00分 公開
[唐沢正和]

属人的な工程管理を排除し、納期厳守を実現

 システム開発では「品質はより高く、コストはできる限り低く抑える」ことを目的とした管理活動が求められる。そのため、多くのプロジェクトでは、効率的な生産を行うための作業手順や日程を決定したり、工程ごとの進ちょくを管理したりする「工程管理」を行っている。しかし、「属人的な工程管理では、その管理効果は著しく低下する」と、日立東日本ソリューションズの営業本部パッケージ営業部 部長の佐藤 宏氏は指摘する。

画像 日立東日本ソリューションズの佐藤氏

 佐藤氏によると「プロジェクト管理が成功しない要因の1つには、プロジェクトマネジャーがMicrosoft Office Excelなどを使って、管理者が個人で工程管理を行っていることが挙げられる」という。この場合、プロジェクトの進ちょくに関する情報が共有化されず、遅れが生じていてもギリギリまで気付かないことがあり、納期に間に合わないケースも出てくる。また、納期に間に合わせるために、急に作業要員を増やしたりすると現場が混乱してしまい、結果的に品質の低下を招く可能性もある。

 上記の課題を解決するために、同社では工程管理にフォーカスしたプロジェクト管理システム「SynViz」シリーズを展開している。現在、同シリーズの主力製品となっているのが、大手製造業を中心に200社以上の導入実績を持つという製造/建設業向け工程管理ソリューション「SynViz/PJ」だ。

 同社は2010年6月、このSynViz/PJをベースとして、大規模システム開発向けの工程管理ソリューション「SynViz/SD」の提供を開始した。これにより「システム開発におけるプロジェクト情報の一元管理が可能となり、経営層からプロジェクト管理者、設計・作業担当者まで、すべての業務フローにおける情報の共有化と見える化を支援する」(佐藤氏)という。また佐藤氏は、SynViz/SDについて「属人的な工程管理を完全に排除し、“納期厳守”を実現するソリューションだ」と説明する。今回は、日立東日本ソリューションズのSynViz/SDを紹介する。

製造/建設業向け工程管理ソリューションをベースに開発

 SynViz/SDは、複数の企業や組織間にまたがるプロジェクトの管理を前提に設計され、「WBS(作業分解図)の共有」「日程すり合わせ」など、組織間の情報連携に重点を置いたWebベースのプロジェクト管理ツールだ。

画像 SynViz/SD画面《クリックで拡大》
SynViz/SDの主要機能一覧(※ SynViz/SDからの新機能)
機能 機能一覧
計画立案 プロジェクト作成機能(新規作成、ひな型展開、過去案件展開、XML形式取り込み、CSV取り込み)
サブプロジェクト作成機能
ガントチャート上でのタスク/アクティビティ/マイルストーンの作成・削除・移動・調整
プロジェクトWBS作成支援機能(※)
計画のすり合わせ機能
工程関連線の設定調整
多段表示機能
実績報告 作業実績入力/表示
成果物登録・ステータス管理機能
遅れ日数をベースにした進ちょく入力方法のサポート(※)
進ちょく集計値の主導調整報告機能
上位プロジェクトへの進ちょく報告機能
進ちょく率一括更新機能
プロジェクトごとの成果物一覧
監視機能 プロジェクト一覧画面でのチェックポイントにおける進ちょく確認機能
遅延アラート表示機能
作業負荷確認(リソース別負荷画面、タスク別ガントチャート画面)
ガントチャートでの複数プロジェクト表示機能(※)
ガントチャートの階層指定展開/折りたたみ
そのほか関連機能 ユーザー権限管理(プロジェクト/サブプロジェクトごとの承認・計画調整・実績入力・参照設定)
リアルタイム保存(アクティビティ/マイルストーンの作成・移動・調整)
プロジェクト単位でのひな型登録、アクティビティのパターン登録
懸案管理機能
ログイン認証方式(OpenLDAP、Active Directory、SiteWinder)

 またSynViz/SDは、SynViz/PJの機能や特徴を継承しながら、特に大規模システム開発プロジェクトの“見える化”を実現するためのさまざまな新機能を追加している。

 その代表的な機能が「WBS作成ワークシート」だ。企業内で定めている「標準の作業」と、各プロジェクトの「固有の作業」の両方を織り込んだWBSをExcelファイル形式で作成する機能である。作成したWBSのワークシートをSynViz/SDに取り込むと、詳細な工程表作業項目が自動展開されるため、工程表を作成する工数や作業負荷を削減することができる。また、WBSから自動作成した工程表をひな型登録しておくことで、類似プロジェクトの場合は、新たにWBSを作成することなく、ひな型を基に素早く工程管理を開始できる。

画像 WBSの例《クリックで拡大》

複数企業や組織にまたがるプロジェクト工程管理に対応

 最近では中国やインドなど海外の開発会社に業務委託するオフショア開発も盛んになっており、社内外・国内外の企業間をまたいだ横断的な開発プロジェクトも増加しつつある。大規模システム開発のプロジェクトは、1社のみですべて完結することはほとんどない。こうしたプロジェクトの場合、各企業がバラバラの手法で工程管理を行うと、全体の進ちょく把握は非常に難しくなる。WBS作成ワークシートの活用メリットについて、佐藤氏は「発注元の企業文化に合わせた工程管理ガイドラインに準拠したWBSをベースに、プロジェクトに携わる全企業、全スタッフの工程管理を標準化することができる」と説明する。

 またSynViz/SDでは大規模システム開発向けの機能として、「複数プロジェクトの一括モニタリング機能」を搭載している。この機能は、関連する複数のプロジェクトを選択して1つの工程表に並べることで、全体の進ちょく状況をふかんして確認することができる。これにより、「納期遅延」や「開発要員の確保状況や負荷」などがリアルタイムで把握でき、ボトルネックやリスクを早期に察知できるという。

画像 リソース別ガントチャート例《クリックで拡大》
画像 日立東日本ソリューションズの飯田氏

 さらにタスク別ガントチャートに搭載された「日程すり合わせ機能」も、SinViz/SDの特徴的な機能だ。同社のビジネスソリューション本部 Vizソリューション第一グループ 主任技師の飯田晴彦氏は「大規模システム開発の場合、顧客と開発元企業、一次請け企業、二次請け企業と重層構造になることが多い。日程すり合わせ機能を使うことで、上位日程と下位日程とのスケジュールのすり合わせを企業間で容易に行うことが可能となる」と説明する。

 例えば、上位日程をベースにした下位日程の作成や下位日程のフィードバックを反映した上位日程の再調整を行うことができ、最終的に上位・下位日程間で整合性が取れた日程作成が可能になる。また、参照権限を設定することで、上位と下位の双方向から工程状況を把握できる。さらに進ちょく報告については、補正した下位の進ちょく情報を上位に報告する機能も提供。これにより、実際に管理している進ちょく情報を基に、現場の状況判断を加味して上位に報告できる。

画像
画像 SynViz/SDの上位日程(画面上)と下位日程(画面下)の例。上位日程では全体状況を把握し、下位日程にドリルダウンすることでより詳細な工程状況を把握できる《クリックで拡大》

 そのほかにも、SynViz/SDでは品質管理システムや原価管理システムなどの既存システムやツールと連携するオプション機能「SynVizデータ連携オプション」を提供している。この機能を活用することで、SynViz上の情報を見積もり・原価システムなどの社内システムとの連携やSynVizのプロジェクト情報を基にした自社用の業務管理帳票の作成も可能だ。

日立グループにおいても導入が進む

 SynViz/SDは日立グループの情報系部門のシステム開発におけるプロジェクト管理ツールとして、順次導入が進んでいるという。同社では今後、この大規模導入の実績を生かしながら、SynViz/SDを積極的に拡販していく考え。

 佐藤氏は「SynViz/SDは優れた機能を備えているが、製品自体は単なるツールであり、それをどう使いこなすかが重要になる。販売に当たっても、この点を顧客に強く訴えながら、プロジェクト工程管理に課題を持っている企業に向けて、コンサルも含めて提案していく」と意欲を見せている。

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