集中治療室の患者と家族のコミュニケーションにiPadを活用iPadを安全に提供するには?

英Walton Centre NHS基金トラストの集中治療室では、iPadを使って重症患者がコンサルタントや家族とコミュニケーションを取れるようにしている。

2013年09月17日 08時00分 公開
[Jennifer Scott,Computer Weekly]
Computer Weekly

 英国リバプールにあるWalton Centre NHS基金トラスト(訳注)は、神経疾患の専門病院として名高く、この病院ならではの治療を必要とする患者を英国全土から受け入れている。

訳注:NHSは、英国の公共医療サービス(National Health Service)の略。

 しかし、はるばる英国各地から来た患者にとって、身近な人間と遠く離れての闘病生活はさらに厳しく感じられる場合もある。

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 この病院には、Horsley集中治療施設(intensive therapy unit:ITU)という施設内に重症管理室がある。これは、命にかかわるけがや大手術、急性疾患の発症後に継続的な管理と治療が必要な患者のための治療室だ。

 コンサルタント神経麻酔専門医、ウィル・ロー医師は自身の私物のiPadを使って、患者が家族と連絡を取れないものかと試みた。だが、容体によっては患者がiPadを持って操作することができなかった。そこでロー医師は、今後ITUで治療を受ける患者のために、実践的で一時しのぎではないソリューションを求めてIT部門に相談した。

 この件のテクニカルプロジェクトリードを務めたのが、アンドリュー・エヴィソン氏だ。ロー医師とエヴィソン氏の2人は、患者が家族との時間を持つ上でも、コンサルタントが「仮想クリニック」を開設して最近の患者の状態について伝える上でも、ビデオ通話機能が有効だと判断した。

 また、話ができない患者のためには、医療チームに質問ができるようにするソフトウェアを調達することでも意見が一致した。それを踏まえて、医師は患者の入院中の気分を確認できる。

Wi-Fi接続

 このプロジェクトの成功は、適切なWi-Fiネットワークを準備して、このようなソリューションに必要な接続を提供できるかどうかにかかっている。

 「院内のWi-Fiを使うこともできたが、NHSネットワークを利用することになるため、帯域幅の問題でトラフィックのスパイク現象が発生するのではないかと感じた。また、セキュリティの問題も心配だった」とエヴィソン氏は言う。

 しかし、病院は既に公衆Wi-Fiネットワークを導入しており、これが答えになるのではないかと考えた。「このネットワークは10M〜12Mbpsとかなりの帯域幅があったので、Wi-FiベンダーのWi-Fi Sparkとすぐに話をした」(エヴィソン氏)

 Wi-Fi Sparkによると、この無料の公衆Wi-Fiで使われる端末を分離し、一定の帯域幅を付与できるとのことだった。

要件にかなったiPad

 エヴィソン氏は、このプロジェクトに米AppleのiPadを採用することにした。iPadは既に病院内の至る所で使用されていて、サポートが既に提供されていたからだ。

 「当院には70〜80台ほどのiPadが、さまざまな形で使われている。例えば、役員はiPadで安全なソフトを使ってメールをチェックしている。また、従来は紙ベースだったリスク評価や文書を電子形式にしてiPadで閲覧できるようにするePatientというプロジェクトを進めている」とエヴィソン氏は説明する。

 「その他の端末も検討しているが、最初の段階ではiPadが最も楽だった。他の端末は、セキュリティ、構成、端末の管理の面で要件に合わない。ツールはAppleから既に提供されていたし、iPadなら他の領域に展開するのも非常に簡単だった」

 Wi-Fi Sparkは、iPadのMACアドレスを使ってネットワークの他の機器からiPadを分離し、ソリューションに必要な帯域幅が割り当てられるようにした。

 患者の家族がApple製品を所有している場合は、Appleの組み込みのビデオ通話ツール「FaceTime」を使うことにした。また、Apple製品以外にも対応するためSkypeもインストールし、プライベートの会話や医師との相談に使えるようにした。

 病状から、話すことができない患者のためには、AssistiveWareのProloquo2Goをインストールすることにした。Proloquo2Goは、予測入力機能を使って簡単に入力でき、入力した内容を音声に変換してくれる。

 「導入時にぶつかった唯一の問題は、どのようにしてiPadを患者に提供するかだった。ハンズフリーで使え、持ち運びでき、セキュリティ対策も取り、さらに何らかの方法でスタンドに取り付ける必要があった」とエヴィソン氏は説明する。

 ところでNHSトラストでは、患者のデータをオフィスに戻ってデスクトップPCから入力するのではなく、ノートPCを設置した可動式デスクを使って病院内を移動し、スタッフが患者の隣でデータを入力できるようにするCOWs(computers on wheels)というプロジェクトにも取り組んでいた。実はこのCOWsプロジェクトにおいて、医療現場向けのPC関連製品を扱う英RDP Healthの協力の下、上記のような問題に既に取り組んでいた。

 COWsプロジェクトと同じ基本のスタンドに、ErgotronのフレキシブルなアームとKensingtonのセキュアバックセキュリティーケースを取り付けて、iPadをベッドに固定した。これで、患者が操作できる範囲にiPadを保持でき、けがの心配もなく、清掃も簡単にできる。

 「これは、異なるコンポーネントを組み合わせて、このプロジェクトに適した構成を考えるケースだった。コンポーネントは既にあったので、今回は組み合わせるだけだった」

報われる結果

 エヴィソン氏とチームは、わずか4カ月、予算1万ポンド未満でプロジェクトを完了し、ITU内の5室にソリューションを導入した。ソリューションが実際に使われているところを初めて目にしたとき、チームが取り組んできたことの意義が明らかになった。

続きはComputer Weekly日本語版 2013年9月11日号にて

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