CERNがビデオ会議システムを全面移行、科学者の反応は?旧システムはCERN独自開発

1990年代に独自のビデオ会議システムを開発したCERNが、システムを全面リプレース。厳しい要求を満たし世界中の科学者から好評を博したビデオ会議ソリューションとは?

2014年02月18日 08時00分 公開
[Jennifer Scott,Computer Weekly]
Computer Weekly

 スイスのジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(通称CERN)は、World Wide Webの発案や大型ハドロン衝突型加速器による「神の素粒子」の発見など、画期的な科学成果で世界的に有名である。

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 CERNは113カ国の600の大学や機関に所属する2万人以上の科学者から構成されており、メンバー同士の共同作業によって多数のプロジェクトが運営されている。そのため、CERNではコミュニケーションが重要になり、非常に早い時期からビデオ会議を取り入れ、必要に応じてメンバーが顔を合わせて対話できるようにしている。

 CERNがビデオ会議への第一歩を踏み出したのは1996年。その際、科学機構としてシステムを独自開発することを決定した。

 「ビデオ会議に初めて取り組む組織だったので、CERNは技術的な課題に何度も直面した。原因は規模の大きさや設定の複雑さなどによるもので、多くの場合、問題を解決するために独自のソリューションを開発する必要があった」と、CERNのIT部門でコラボレーションと情報サービスのグループリーダーを務めるティム・スミス氏は話す。

 「われわれは本質的に共同作業を必要とすることから、世界中の物理学者と面と向かって対話するため、ビデオ会議に着目したのは当然の成り行きだった。その結果、CERNはビデオ会議の最初の導入者となり、テクノロジーの開発にも寄与した」

 コラボレーションチームは、スミス氏が「原始的」と呼ぶソリューションを開発した。自前のテクノロジーが研究者のニーズに応じてカスタマイズされていくにつれ、このソリューションは急速に広がっていったという。とはいえ、このソリューションが永遠に使用され続けることはないと分かっていた。

 「早期導入者が、オープンソース開発や商業製品によって世間に追い付かれ、追い越されるのはよくあることだ」とスミス氏は語る。「1990年代と2000年代の大半はうまく進んでいたが、競争は激化し、新しい標準や新しいソリューションを使った新たなテクノロジーが生み出される時代になった」

 そこで2009年、CERNのITチームは他の選択肢の調査を開始し、SVC(スケーラブルビデオコーディング)テクノロジーを使用する米Vidyoを最有力候補とした。SVCテクノロジーは、サイズの大きなビデオを転送する際、必要な帯域幅の再利用にサブセットビデオビットストリームを使用して、高解像度ビデオのストリーミングを実現するものである。

 2010年、スミス氏が率いるチームはVidyoのパフォーマンスだけでなく相互運用性に魅力を感じ、同社のパイロットを実装することに決めた。「どのデバイスでも機能することが決め手の1つだ」と同氏は説明する。「われわれは、共同作業の相手が使用しているデバイスを管理するつもりはない。Windows、Mac、多種多様なLinux、モバイルデバイスなど、何を使っているかは問題ではない。重要なのは、どのようなデバイスでも品質が維持されることだ」

 IT部門が実施したパイロットは、完全に終了するまでに2年近い年月がかかった。「Vidyoと協力し、CERNのニーズを確実に満たせるようパイロットを進めていった。時間はかかったが、決して早急に進めるつもりはなかった」とスミス氏は語る。「例えば、Linux統合に関するVidyoの技術力は当初は十分とはいえなかった。だが、2012年末には全てのニーズが満たされると感じるまでになり、完全移行を考えるようになった」

 CERNが開発した旧システムは2012年末までVidyoと平行して運用され、年が明けると新システムに完全に切り替えられた。「全てのゲートウェイ、SIP、従来型電話などを相互接続するといった運用上の問題は幾つか発生していたが、パイロットは比較的順調に進んでおり、切り替え時には準備万全の状態だった」とスミス氏は語る。

 「それ以降大きな問題は発生しておらず、クライアントの開発やアップグレードは迅速かつスムーズに行われた。民間のプロバイダーと共同作業したメリットの1つは、CERNが自前でソリューションを開発したときに比べて、プロバイダーが開発やアップグレードに熱心に取り組んでくれることだ」

 CERN職員や物理学者は評価が厳しいことに定評がある。新システムにはいかなる評価が下されたのか?

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