ここまで変わった! Windows Server 2012のHyper-V 3.0の新機能ハイパーバイザー製品紹介:Hyper-V 3.0

Microsoftのエバンジェリストが「スペック比較表ではVMwareに劣らない」と豪語するほど進化したWindows Server 2012のHyper-V。大小さまざまな新機能を一挙紹介する。

2014年06月13日 17時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 Microsoftは、Windows Server 2008 R2に次ぐ新しいサーバOS「Windows Server 8」(開発コードネーム)の正式名称を「Windows Server 2012」と発表、2012年内のリリースも公表している。サーバOSのバージョンアップに伴い、Windows Serverの一機能であるHyper-Vの機能にも変化があった。本稿では、2012年5月31日に開催された「Windows Server Cloud Day 2012」の中から、マイクロソフト エバンジェリスト 高添 修氏による講演を基に、Hyper-V 3.0(※)の新機能を紹介する。

※ MicrosoftはWindows Server 2012に搭載するHyper-Vを「Windows Server 2012 Hyper-V」あるいは「Windows Server 2012 のHyper-V」と表記しています。本稿ではWindows Server 2012に搭載されるHyper-Vを、便宜上「Hyper-V 3.0」と表記します。

Hyper-Vの新機能 〜小さな変化

 大きな機能拡張を紹介する前に、これまでのおさらいも兼ねて小さな変化から紹介していきたい。

メモリの動的割り当てを支援するスマートページング

 Hyper-VはWindows Server 2008 R2 SP1で、仮想マシン(VM)にメモリを動的に割り当てる「Dynamic Memory」機能が導入された。この機能を使うと、VM起動時に使用するメモリ量「スタートアップRAM」と最大メモリ量「最大RAM」を指定し、サーバ全体で利用可能なメモリ量を柔軟に増減することができる。そして、Hyper-V 3.0では、最小メモリ量を指定する「最小RAM」のパラメータが追加された。

 Dynamic Memory機能によって、例えばスタートアップRAMを1024Mバイト、最小RAMを512Mバイトと指定した場合、VM起動後は512Mバイトまで使用メモリ量を落とすことが可能だ。ただし、高添氏によると「512Mバイトで動いていたVMをシャットダウンし、再度立ち上げようとした場合など、スタートアップで物理メモリを1024Mバイト確保できないことがある」という。

 そのための工夫としてHyper-V 3.0では、メモリ管理機能の1つにスマートページングが加わった。設定はメモリ管理画面の「Smart Paging File Location」で行う。これによって、VM立ち上げ時に物理メモリが不足した際はページファイルのメモリを使うことで、若干遅くても立ち上げることができるという。

図 スマートページング機能

ファイルサーバ対応と新ファイル形式VHDX

 Hyper-V 3.0は、VMのファイルをDASなどのローカルストレージやiSCSIストレージだけでなく、ファイルサーバにも置くことができる。ディスクの種類は、仮想ディスクイメージ(「容量可変」「容量固定」「差分」)、物理HDDで従来と変わらない。

 仮想ディスクイメージには、新しいファイルフォーマット「VHDX」が追加された。サイズは64Tバイトまでサポートする(従来の「VHD」は最大2Tバイト)。高添氏はVHDXのフォーマット拡張によって、「データベースの仮想化が現実的になった」と述べた。また、VHDXにはディスクI/Oをより高速化するメリットもあるという。

仮想ディスクのコントローラー関連機能、ReFS/ODX

 Hyper-Vの仮想ディスクのインタフェースは、IDEコントローラーとSCSIコントローラーの2種類がある。起動用のOSが入っているVHD/VHDXファイルはIDEでブートすることになっている。一方、一般的にデータを保持するディスクはSCSI経由でVHD/VHDXファイルをつなぐ。また、ホットプラグに対応しているため、電源を入れたままディスクを外したり付け直したりできる。

 これら仮想ディスクのコントローラーに関する新機能のポイントは2つ。1つはNTFSに加え、ReFS(Resilient File System)という信頼性と耐障害性に重点を置いたファイルシステムが導入された点だ。ReFSはブートシステムに対応していないため、IDEでななくSCSIコントローラーにつなぐ。

 もう1つは、ODX(Offload Data Transfer)という仮想ディスクへのオフロード処理ができるようになった点だ。VMにデータを書き込む際に、Hyper-Vサーバが処理をするのではなく、ストレージに書き込みの指示をするだけで処理が返ってくる仕組みだ。VMware vStorage API for Array Integration(VAAI)と同様の機能といえる。オフロード処理を行うには、VHD/VHDXファイルをSCSIコントローラーに接続している必要がある。

図 仮想ディスクとコントローラー

 以上、これまでのおさらいとともに細かい新機能についてまとめた。続いて、大きな機能拡張を紹介する。

Hyper-Vの新機能 〜大きな変化

スペックの向上

 Windows Server 2012が大幅なスペックの向上を果たしたように、Hyper-Vも比較にならないほどの進化を遂げている。高添氏はライバルのVMwareを取り上げ、「機能比較表を作ったときにVMware vSphereに劣ることがないように開発を進めてきた」と自信を見せた。

カテゴリ Windows Server 2008 R2 SP1 Windows Server 2012
論理プロセッサの最大数 64 160
アクティブなVMの最大値 384 1024
VMの最大プロセッサ数 4 32
ホストごとの仮想プロセッサ最大値 512 1024
VMの最大メモリ量 64Gバイト 1Tバイト
ホストの最大メモリ量 1Tバイト 2Tバイト

 ホストサーバでは1024の仮想プロセッサをサポートし、VM1台に対し32の仮想プロセッサ(vCPU)を割り当てられる。1台のホストサーバで最大1024のVMが実行可能だ。また、VMの最大メモリ量は1Tバイトと、全体的にスケーラビリティが大きく向上した。

NUMA対応

 しかし、いくらスペックが向上したとはいえ、高性能なホストサーバ上のVMに対し、単純にメモリとvCPUを上限まで割り当てたところでパフォーマンスが向上するかというと、そう簡単ではない。一般的に、マルチコアの高性能な物理サーバは、「NUMA(Non-Uniform Memory Access」アーキテクチャを採用している。NUMAでは、複数のプロセッサやローカルメモリなどのリソースを「NUMAノード」というグループに分割し相互接続する。もしVMに物理サーバのNUMAノードを超えるリソースが割り当てられた場合、(ローカルメモリではない)外部メモリへのアクセスが発生し、パフォーマンスが低下する恐れがある。

 新しいHyper-VはNUMAに対応する。各VMが物理サーバのNUMAノード(CPUとメモリのセット)を意識して処理をすることによって、VMに多数のメモリやvCPUを割り当ててもパフォーマンスが劣化しないよう工夫されている。

 「例えば、図のように1台の物理サーバに4つのNUMAノードがあるとする。その上で動くVMに2つのノード(vNUMAノードA、B)を割り当てると、VMのOSが2つのvNUMAノードを意識して動作する。VMは、できるだけ片方のノードに寄せた方が速いと判断し処理するだろう」(高添氏)

図 NUMAアーキテクチャ

Hyper-Vレプリカ

 続いて、注目の機能に「Hyper-Vレプリカ」がある。Hyper-Vレプリカは、2台のHyper-Vホスト間でVMをレプリケーションし、災害時などプライマリサーバで障害が発生した際に、フェイルオーバーでサービスを継続できる機能だ。当然、2台のVM間には排他制御が掛かる。共有ストレージは不要だ。

 また、テスト機能があり、一時的にVMのレプリケーションでフェイルオーバーのテストをし、動作を確認したら元に戻すことが可能。レプリケーションの際のデータ量も確認できる。

 さらに、地理的に離れた状況での利用も想定し、遠隔地で立ち上がるVMのIPアドレスを事前にセットすることもできる。

ライブストレージマイグレーション

 高添氏が「運用上すごく欲しいといわれ続けてきた機能」と強調するのが「ライブストレージマイグレーション」だ。VMwareではStorage vMotionと呼ばれる。

 Hyper-VはWindows Server 2008 R2で「Quick Storage Migration」に対応した。だが、稼働中の仮想ディスク(VHD/VHDファイル)をリアルタイムで別のストレージに移行する機能はサポートしていなかった。ライブストレージマイグレーションを使えば、仮想ディスクをダウンタイムなしで別のストレージに移行できる。ストレージの買い替えやメンテナンス時に便利だ。

 なお、高添氏によればこの機能も、前述のオフロード処理が効くという。ストレージがサポートしていれば、Hyper-Vサーバ側のCPUで処理をせずにストレージに処理を投げられる。

クラスタいらずのライブマイグレーション

 新しいHyper-Vでは、共有ストレージがなくてもHyper-Vホスト2台でライブマイグレーションが実現できる。クラスタ構成を組まなくても、ネットワークにさえつながっていればダウンタイムなしでVMを移行できる。

NICチーミング

 最後は、これまで一部のサーバベンダーのサポートに依存していたNIC(Network Interface Card)チーミングについて紹介したい。Hyper-V 3.0はOSがNICチーミングに対応している。NICチーミングは、複数のNICを束ねて帯域の負荷分散を図りネットワーク速度を向上させたり、可用性を高めたりする技術だ。

 NICチーミングの方法は2つ。1つは、Hyper-Vホスト側で物理NICをチーミングし1つに見せてVMに割り当てるパターン。もう1つは、Hyper-Vホスト側のNICはそのままでVMの仮想NICをチーミングする方法。仮に物理サーバに搭載されているNICの種類が異なっても、ゲストOS側で差異を吸収するため問題ない。

図 2つのNICチーミング

 さらに、ネットワーク帯域を制御するQoS機能もサポートした。高添氏は「NICをチーミングしてQoSで制御すると、VMごとに最小/最大の帯域幅を指定し、通信を動的にコントロールできる。例えば、複数のファイルをコピーするときに速度のコントロールができる他、重いファイルをコピーするときにHyper-Vホスト側の通信を制御できるといったメリットがある」と述べた。


 以上、Hyper-V 3.0の大小さまざまな新機能を紹介した。Hyper-V 3.0は、大幅に性能が向上しただけでなく、それを支えるハードウェアやネットワークの機能も強化された点が特徴だ。また、Windows Serverをインストールすれば役割を追加するだけですぐに導入でき、共有ストレージがなくてもさまざまな機能を実現できる容易さも魅力だ。

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提供:TechTargetジャパン編集部
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