VMworld User awards受賞企業に学ぶ、仮想化活用術これが仮想化のベストプラクティス

VMworld Europe User awardsを2回も受賞したドイツの旅行代理店は、仮想化をどのように活用しているのか? VDIによるWindows 7への移行作業など、彼らの事例を詳しく紹介する。

2015年02月23日 08時00分 公開
[Mark Samuels,Computer Weekly]
Computer Weekly

 仮想化に対するアプローチが卓越しているという称賛を受けることは、企業にとってもIT部門にとっても輝かしい成果だ。それが二度の受賞ともなれば一層素晴らしい。こんな栄誉を受けたのは、ドイツの旅行代理店、DER Deutsches Reisebüro GmbH & Co OHG(DER)でIT運用およびサポートチームの責任者を務めるサッシャ・カープギンスキー氏だ。

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 同社は2010年から米VMwareのVMware Viewで仮想デスクトップを運用しており、これが2012年のVMworld Europe User Awardsで最優秀ホームオフィス/リモートオフィスプロジェクト賞を受けた。さらにその2年後、カープギンスキー氏のチームは再び大きな成果を挙げた。今度は、仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)プロジェクトと、米MicrosoftのWindows 7環境への迅速な移行を実現したのが授賞理由となった。

 「二度も表彰を受けるのは本当にうれしい。私の上司もとても喜んでくれている」とカープギンスキー氏は語る。「受賞によって、われわれのチームの士気も大いに上がった。この機会にわれわれから皆さんに伝えたいのは、テクノロジーを業務に導入することには、実に多くのメリットがあるということだ。二度も受賞することができたのは、われわれの能力が認められた証拠だと捉えている」

 DERはドイツ全域で560の支店を展開している。カープギンスキー氏によると、同社の各支店には旅行エキスパートが常駐しており、ホテル、イベントの入場券、客船クルーズ、オールインクルーシブツアー(移動手段、宿、食事などの全てを一括手配するツアー)などを顧客の要望に応じて手配する、ごく普通の旅行代理店業務を運営しているという。

 同社の旅行エキスパートはセールス活動の中で、観光地やイベントの短い動画や写真を駆使し、旅のリアリティをアピールする工夫をこらしている。従って各支店ではさまざまなOfficeアプリケーションを組み合わせて使ったり、比較的サイズが小さいマルチメディアコンテンツを再生することが多い。カープギンスキー氏が率いる同社のITチームは、こんなふうに支店ごとに使い方が異なるITシステムを、本社のオフィスから管理している。

仮想化によって業務改革を継続

 「仮想化を初めて導入したときに、このアプローチでわれわれのサポート活動が改善できることに気づいた。(障害からの)リカバリ時間が数日から数時間に短縮できたからだ」と同氏は振り返る。「それ以来われわれは仮想化の導入に注力してきた。なぜならイノベーションを実現することができるし、通常業務がその開発作業の影響を受けることもない。仮想化技術を導入したことで、リソースの集約やIT展開の自動化が実現できた」

 また、営業時間中は顧客へのサービス提供に影響を与えることなく、DERのITシステムを実行できることも非常に重要だ。各地の支店に配備されている端末は、非対称(暗号化方式)の仮想プライベートネットワーク(VPN)回線経由で同社の中央データセンターに接続されている。この回線の速度は2M〜16Mbpsで、同時接続しているデスクトップの数によって変動する。

 同社は最近、Windows 7環境への移行を完了した。これは同社にとって効果の高い施策で、同時に社内システムの費用効率も向上させることができたとカープギンスキー氏は話す。同氏が責任者を務めるITチームは少数精鋭で、システム管理者2人、開発者1人のみという構成だ。このチームで、実に2300台分ものデスクトップが接続されている仮想インフラストラクチャ全体の管理運用を進めている。ただし社内環境の移行の際は、3人のサポート業務スペシャリストがハイレベルのシステム管理者と同等の立場としてITチームに加わり、移行の準備段階から移行完了直後のフォローに至るまで、社内の旅行エキスパートからの問い合わせに対応した。

 カープギンスキー氏のチームは1カ月をかけて、VDIのマスターイメージを2個準備した。よく知られたベストプラクティスに沿った方法でWindows 7の社内展開を進めると同時に、同社の業務ニーズを明確にするためだ。続いて一部のユーザーに範囲を限定した、4週間のβテストを実施した。このβテストを通して、カープギンスキー氏のチームはシステム移行の手法に磨きをかけた。

 βテストと並行して、同社のITチームはWindows 7環境の展開戦略の立案を開始した。Windows 7への移行に当たって、チームのメンバーはスクリプト作成、社内プロセスの自動化、フロントエンドのカスタムアプリケーションのコーディングなど、幾つかの重要分野に集中して多くの時間を費やしたとカープギンスキー氏は語る。その結果ITチームは、スクリプトとデータベース内のデータとの統合を実現させて、システム実装中の障害発生率を抑えることができた。

Windows 7移行は迅速&無停止で完了

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