F1チームInfiniti Red Bull Racingが見せるIoTへの期待と懸念IoTには何らかの制約を設けるべき

IoTの導入に可能性を見いだすRed Bull Racingだが、無制限の利用には問題があると指摘する。F1にとってIoTはどのような存在であるべきなのか?

2015年11月19日 08時00分 公開
[Alex ScroxtonComputer Weekly]
Computer Weekly

 F1チームのInfiniti Red Bull Racing(以下「Red Bull」)は、2014年に締結した「Innovation Partnership」の成功を受けて、ネットワークインフラの改善に継続して取り組んでいる。モバイルを強化する一方、モノのインターネット(IoT)の可能性も追求している。

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 過去4回のワールドチャンピオンシップ優勝を誇るこの有力チームは、2014年シーズンに米AT&Tとのパートナーシップを拡大かつ強化した。F1がテクノロジー面で大きく変化する中、Red Bullも利用するコアネットワークを強化した。

 レギュレーションの変更、特にエンジンが2.4リッターV8から1.6リッターV6ターボに変更されたことによって、各チームは一からマシンを開発しなければならなくなった。しかも、その作業を効率よく進めなければならない。その結果、データ量が大幅に増えて、サーキットのICTインフラに掛かる負担も増している。

 Red Bullの努力は2014年シーズンに報われた。圧倒的大本命のMercedesチームを脅かす数少ないチームの一角に食い込む成績を残したのだ。2015年は優勝こそ逃しているものの、2人のドライバー、ダニエル・リカルドとダニール・クビアトは何度も表彰台に立っている。

 Red BullとAT&Tが提携関係を強化して1年が経過した。そのパートナーシップの影響として恐らく最も目立つのは、チームのCTO(最高技術責任者)であり主任デザイナーであるエイドリアン・ニューウェイ氏がRed Bullの本拠地ミルトンキーンズでほとんどの業務をこなすようになり、サーキットのピットウォールに座ることがなくなったことだろうと、Red Bullの技術提携部門の責任者アル・ピーズランド氏は語る。

 Red Bullはモバイルの利用を積極的に推進。端末を「BlackBerry」から「iPhone」に切り替え、AT&TのグローバルSIMサービスを導入した。

 「以前はコスト管理を厳しくせざるを得なかったので、費用対効果を考慮してスマートフォンを持たせるスタッフの人数を絞っていた」とピーズランド氏は振り返る。

 2014年から運用を開始したグローバルSIMは、世界中どこにいてもAT&Tのグローバルネットワークと、世界各国のパートナー企業が展開するインターネット接続を確保できる。AT&Tの広告によると、このサービスは200カ国をカバーしている。また、SIMのプロビジョニング、課金とリポート作成のためのツールが統一されているので、費用対効果に優れた端末管理ができるという。

 スマートフォンの効果は、金曜日のフリー走行で発揮される。この日はエンジニアの多くが本拠地のファクトリーではなくサーキットに出向くが、現地でマシンに急きょ改良を加える必要が生じることがある。サーキットから本拠地のシステムへのフルアクセスが必要な場面で、このスマートフォンが役立つ。「例えば、ロブ・マーシャル(Red Bullの主任エンジニア)が、フリー走行の合間にマシンの写真を撮り、ミルトンキーンズにいる設計チームにすぐ送信できるようになった」とピーズランド氏は説明する。

 グローバルSIMはまた、世界中を飛び回るサーキット担当メンバーの個人的な生活の満足度を高める役割も果たしている。Red Bullは企業の社会的責任を果たす活動の一環として、社員の福利厚生にも真剣に取り組んでいるからだ。

 現地でプリペイドSIMカードを購入したりすることなくモバイルネットワークが使えるので、自宅にいる家族にもすぐに連絡できる。これは、仕事の準備を整えるスピードが上がるということでもある。

IoTから得られる教訓

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