「高額なデータマート開発費」はもう“化石”、インメモリDBがもたらす見逃せない価値とは予測分析を実現する「次世代DWH」構築

ビジネス環境の変化に瞬時に対応する「リアルタイム経営」を実践するには「次世代データウェアハウス」構築が必須。だが、企業にとってはデータマート開発コストが重荷になっている。どう解決すべきか。

2016年06月28日 10時00分 公開
[TechTargetジャパン]

 企業は近年、企業間競争を勝ち抜くため「リアルタイム経営」の実践に力を入れている。その一端として、各業務部門において「データをビジネスに生かす」ことが浸透し、より情報活用のニーズが高まっている。

 ただ、その情報活用にはまだ多くの課題が存在する。ビジネス変化を瞬時に察知するには、リアルタイムデータの多角的な活用が不可欠だ。だが、既存データベースの処理性能の限界が足かせとなっている。もちろん、チューニングやサーバリソースの増強など、データベースの処理性能を高める手だては存在するが、その実行には、多大なコストが発生する。

 加えて、企業は、データ分析をするためにデータマートの整備を続けているが、集計テーブルの新規開発や維持に無視できないほど多くのコストが掛かっている。業務に必要な分析レポートの提供に数カ月掛かるという、ビジネススピードへの対応課題もある。

 このような課題を解決するシステムとして注目されているのがインメモリデータベースの「SAP HANA」だ。SAP HANAはデータベース処理の超高速化を実現することができ、分析用データマート開発コストの低減にも効果的だとしてユーザーの関心を集めている。SAP HANAを中心にビッグデータ分析に最適なインテル® Xeon® プロセッサーを搭載したサーバを基盤として活用する画期的なアプローチを紹介する。

高速化に向けた“インメモリ+α”のこだわり

 データベースにまつわる各種課題に対して、IT部門はどう対策を講じるべきなのだろうか。今、脚光を浴びているのが、メモリを使ってデータを管理することで、従来型データベースに対する圧倒的な処理性能を実現したインメモリデータベースの活用だ。インメモリデータベースの代表格と呼べる製品が、2010年の発売以来、国内外の名だたるグローバル企業で採用が相次ぐSAPの「SAP HANA」である。

 SAP HANAがユーザー企業から支持を集めているのはなぜか。理由としてまず挙げられるのが、既に述べた通り、インメモリ技術の採用によるデータベース処理の高速化を実現していることだ。ディスクとメモリのCPUのデータの読み出し速度を比較すると、単純計算でメモリがディスクを10万倍も上回る。この特性を生かすことで、データベース処理のボトルネックであったディスクI/O問題を抜本的に解消しているのだ。

 SAPのデータベース処理高速化に向けたこだわりは、それにとどまらない。その一端は、データの格納形式からも見て取れる。

 一般にデータベースのデータ形式はトランザクション処理に強いローストア形式と、分析処理に強いカラムストア形式に大別され、システムごとに使い分けられてきた。リアルタイム経営に向けた情報活用の点では、分析対象データに対して効率的にアクセスできるカラムストア形式の利用が適している。

 SAP HANAはこのカラムストア形式に対応。カラムごとの分割管理と、冗長性の高いデータの圧縮により、分析処理の高速化を可能としているだけでなく、トランザクション処理にも対応している。

 インテルとの共同開発による、最新のCPU技術を取り入れたマルチコアでの並列処理アルゴリズムも見逃せない。カラムストア形式によりSQL処理がカラム単位で細分化された場合、処理の並列化は、高速化に大きな力を発揮する。また、SAP HANAは大規模テーブルを複数に分割でき、並列処理が重いテーブルのアクセス処理の解消に極めて有益だ。

 これらの幾多の工夫が、SAP HANAの処理能力を底上げし、ひいてはリアルタイム経営を目指す企業に広く受け入れられる原動力となっているのである。

分析処理とトランザクション処理を高速実行するSAP HANAの仕組み《クリックで拡大》

レポートから可視化、さらに次世代の予測分析へ

 ここまでの説明から、SAP HANAは冒頭の課題解決に極めて効果的なことが理解できるはずである。処理能力の高さから、システムのボトルネックを抜本的に解消でき、データベースのチューニングに伴うコスト負担の縛りからも解放される。さらに、既存アプリの明細データへ極めて高速にアクセスすることが可能となる。データマートは不要となり、その開発や運用に掛かっていたコストをゼロにできるのだ。

 企業データのリアルタイム処理化は、企業が従来してきたデータ分析をより“次世代版”へとステップアップさせる。バッチ処理によって作成されていた“過去”のデータマートがなくなり、“今”を反映した分析業務が可能になるため、意思決定の迅速化や自動化、分析結果精度の向上、さらにはビジネスモデル変革につなげられる。

 SAP HANAは分析業務を支える機能も豊富に用意している。統計解析や機械学習など、豊富な分析関数を利用できる「Predictive Analysis Library(PAL)」もその1つだ。SAP HANAには「データが存在するところで分析・計算処理を行う」という設計思想がある。分析対象の生データを全てメモリ上に持ち、その上で分析ロジックを走らせる。

 分析レポートの視点を現場レベルでトライ&エラーで導き、情報活用のスピードを速めるだけでなく、データ分析を「レポーティング」から「現状の可視化」、さらに「予測分析」へと、段階的に高度化できるのだ。

リアルタイムコンピューティングに向かう企業のITシステム《クリックで拡大》

中堅規模企業向けに最適なライセンスを用意

 一方で、メモリの低価格化が急速に進んでいるとはいえ、現状では、あらゆるデータをメモリで管理することは、中堅規模の企業にとってコスト負担が心配だ。その点を踏まえ、SAP HANAでは、階層型のデータ管理手法である「Dynamic Tiering」を採用。具体的には、利用価値の高い「ホットデータ」をSAP HANAのインメモリストアに格納し、価値が低下しつつある「ウォームデータ」はHDD、長期間にわたり保存する必要がある「コールドデータ」はオープンソースの分散処理基盤「Apache Hadoop」でそれぞれ管理する。これによってデータ管理のコストを最適化することができる。

 SAPはSAP HANAのメリットをより多くの企業に享受してもらうべく、中堅規模企業向けにライセンス価格を抑えたエディションの提供も開始した。それが、メモリ容量を128GBまでとする「Edge Edition」だ。拡張ストレージ機能を含むSAP HANAの代表的な機能はいずれもEdge Editionにも実装されており、中小規模のデータウェアハウス(DWH)環境には十分過ぎるほどの能力を備えている。

 今回、デルでは、データの戦略的活用ソリューションの実績が豊富なTISと共同でSAP HANA、Dynamic Tieringの機能を用い、販売データの分析シナリオに基づいた性能検証を実施した。

 全てのデータをSAP HANAのメモリ上に配置した場合と一部の「ウォームデータ」をDynamic Tieringに配置した場合の性能差など最新の検証と実効性の確認を行った。この検証結果については、ホワイトペーパーにまとめているため、SAP HANAの自社導入を検討している企業にはデルに問い合わせをしていただきたい。

迅速に、そしてシンプルに――SAP HANA Edge Edition from Dell

 SAP HANAを用いてエンタープライズクラスのレポーティング、予測分析をいかに迅速に、コストを抑えながら実現できるかがリアルタイム経営のキーになる。

 そのためには、デルとSAPとの協業で開設された専用ラボで、データ分析で鍵となる多様な分析機能や性能などを検証した、デルのSAP HANAアプライアンスの導入が有効だ。SAP HANAを事前にインストールしているのでインフラの迅速な導入が可能。さらにSAP HANA Edge Editionはアプライアンスだけでなく、Intel® Xeon®プロセッサー搭載のデルの豊富なサーバラインアップからSAP HANA テイラードデータセンター統合(TDI)構成でも動作可能。高速性を有するサーバ1台で、コストを抑えながら導入検討することもできる。またDynamic Tiering用に物理サーバを1台加えたり、SAP HANA Edge EditionとDynamic Tieringを仮想環境で統合するなど柔軟なソリューションも準備している。

 ライセンスコストも見逃せない。SAP HANA Edge Editionをメモリ128GBで使用すれば、著名な他のDBベンダー製品を同スペックのサーバに搭載した場合と比べ、ライセンス費用は圧倒的に削減できる。

 デルは協業パートナーと連携して、計画から運用までのあらゆるフェーズでの包括的なサポートを提供している。まず、無償でユーザー向けにデータ活用に関するコンサルティングワークショップやSAP HANAハンズオントレーニングを提供する。さらにデルの検証センターで、PoC(概念実証)や、高速アクセス処理によるユーザーのデータマート削減とその性能などの効果測定が可能である。

デルがパートナーと連携して提供するSAP HANAソリューション《クリックで拡大》

 企業におけるデータ分析は予測分析へと進化し、システム環境もリアルタイム処理をベースにした次世代DWHが必須になるだろう。そうした中、デルとSAPよる製品レベルでの処理能力の高さと協業パートナーとの連携サポートは、他社と一線を画す切り札になりそうだ。

無償提供!:Hadoop/SAP HANAソリューションガイド

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  • JP_SAP_Team@Dell.com


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