パナマの法律事務所Mossack Fonsecaから2.6TBのデータが流出した事件では、世界の資産家や権力者が税逃れの目的で自分たちの富をオフショア企業に移転している実態が暴露され、有力政治家が辞任に追い込まれて摘発を求める声も強まった。だが、今になって復活してきた非常に古い技術、すなわちグラフデータベースの助けがなかったら、これほどの詳細は判明せず、発覚までにはもっと時間がかかっていたはずだ。
グラフデータベースは40年以上前の、リレーショナルデータベース(RDB)モデル以前にさかのぼる。データを平たんな行と列に保存して操作する代わりに、グラフデータベースは自由形式のメモ取りに使われる「マインドマップ」の走り書きのような構造を持ち、情報のまとまりを、互いの関連性や関係性を示すラベル付きの線の交差で結び付ける。
グラフデータベースでは、情報をノード(企業や個人といった項目)、プロパティ(ノードについての、あるいは関連した情報)、エッジ(ノード同士やプロパティを結ぶ線、重要な情報の大半はここにある)の形式で保存する。一般的に、データが厳密に構造化されていることは求められず、RDBよりも高速で拡張しやすい場合もある。
グラフモデルは特に、アイテムの関係が最も重要な要因となるアプリケーションに適している。
「つまり、ソーシャルネットワーキングやマッピング、ルート計画、ロジスティクス、資産管理、顧客忠誠度プログラム、不正検出、レコメンデーションエンジン、マスターデータ管理システムのようなアプリケーションに非常に適している」。451 Researchのデータプラットフォーム・分析担当調査ディレクター、マット・アスレット氏はそう話す。
さらにはパナマ文書のような、膨大な法律および資産関連データの中の、隠された関連性を暴く作業にも最適だ。
同モデルが関係性を持つ階層化されていない網の目の構造そのものをうまく映し出せること、そしてネットワーク化されたソーシャルアプリケーションの人気が上昇していることを考えれば、グラフデータベースの再浮上は恐らく驚くには当たらない。実際に、今回の復活に火を付けたのはTwitter、Facebook、Googleといったソーシャル大手だった。こうした企業は膨大なユーザーの関係をもっと効率的に管理し、理解する手段を必要としていた。ネットワーク化されたスマートシティーやモノのインターネット(IoT)が台頭すれば、この技術の用途はさらに増える見通しだ。
既にハイテク大手以外でも、グラフデータベースを利用する企業は増えている。例えばLufthansaはグラフデータベースを使って機内で提供するコンテンツと、そのコンテンツへのアクセスに使われる多様な端末の関係を保存している。「例えば映画や乗客の私物端末向け機内サービスを提供するため、航空会社は乗客が使う端末のことを知る必要がある。画面サイズや性能などを把握して、それを個々のユーザーに提供するコンテンツと結び付けて描き出すとともに、その乗客がマイレージ会員なのか、あるいは顧客忠誠度プログラムの会員なのかなど、乗客についての詳細を把握する」(アスレット氏)
他にも事例は豊富にある。携帯電話事業者のTelenorはユーザーについて理解を深める目的でこの技術を使い、ユーザーのいる場所や使用端末、アクセスを許可されている内容などを調べている。不正検知に利用する銀行や金融機関も多い。Royal Bank of Scotlandは変更管理ツールの「Dart」に利用して、主力トレーディングシステム「Agile Markets」上の変化の痕跡を継続的に把握する。オンラインギャンブルを手掛けるGamesysでは紹介システムの管理や顧客向けのFacebook統合に利用しているといった具合だ。
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ただしグラフデータベースがすぐにもリレーショナルデータベースに取って代わることはなさそうだ。
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