医薬品マーケターが利益に貢献したプロモーションを見抜く“すごいデータ分析”とは製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用【第4回】

製薬企業のマーケティング担当者が活用しやすく、「次のプロモーション施策では何が最適な打ち手となるのか」を考えるのに有効な、データ分析の代表的手法を解説します。

2017年04月17日 09時00分 公開

連載について

 製薬企業のプロモーションの在り方や行動基準を示した「医療用医薬品プロモーションコード」の厳しい規制の下で、製薬企業のMR(医薬情報担当者)やマーケティング担当者は適切な情報提供の在り方を模索している。eディテーリング(電子的な情報提供活動)ツールやメールマガジン、オウンドメディアなど、さまざまな情報提供の効果を判定するためには各活動の中で得られたログの分析が必要だ。だが十分な分析ができており、かつ分析結果を十分に活用できている製薬企業は多くない。

 本連載では、製薬企業の医療用医薬品ビジネスにおけるB2Bマーケティングの現状と課題を整理し、ITツールやデータの活用によってマーケティングの投資効果を高める解決策を探る。

製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用(連載インデックス)


 本シリーズでは、主に製薬企業のマーケティングやシステム担当者向けに、

というテーマについて述べてきました。最終回では、各種情報のデジタル化による恩恵を最大化させるための「ログデータ分析」について解説します。

 製薬企業による医療従事者に対するプロモーションや患者への疾患啓発などは、紙を使ったアナログな手法からデジタルツールを活用する方向へとシフトしています。デジタルプロモーションの特徴は、デジタルツールのアクセスログデータを計測できる点にあります。つまりデジタルプロモーションならば、これまで曖昧になりがちだったプロモーション施策の費用対効果を測ることが可能なのです。さらに、デジタルツールのアクセスログデータを蓄積することで「どこに、どのくらいの予算を投下すると、自社薬剤の処方がどの程度増加するのか」といった、施策の影響度を予測できるようになります。

 費用対効果の把握や重点施策の検討が可能になるなど、デジタルプロモーションによって得られるメリットは、どの製薬企業も十分に認識しているものと考えられます。しかし筆者は、ログデータが実際に効率的に活用されているケースはまだまだ多くないと感じています。

 ログデータを活用するために重要なのは、正しい分析手法を選択することです。しかし分析手法は多岐にわたり、必要な条件を満たしていなければ正しく分析できません。この複雑さがログデータ活用を困難にしている一因とも考えられます。製薬企業のマーケティング、システム担当者が活用しやすい、代表的な分析手法にはどのようなものがあるのでしょうか。

利益貢献度分析

 プロモーション施策が、ゴールである「利益」にどう影響しているのかを分析する手法が「利益貢献度分析」です。

 過去に実施したプロモーション施策や、自社が保有するログデータなどを活用し、「次のプロモーション施策で最適な打ち手は何か」を考える分析の進め方は次のようなものです。

 製薬企業のプロモーションの場合、医療従事者を対象としたB2B施策と、一般生活者を対象としたB2C施策を同時進行するケースが少なくありません。このように「医療従事者」と「一般生活者」という大きく異なる2つの対象を持つことは、プロモーション施策の利益貢献度を分析する際の影響要素が大幅に増えることを意味し、分析が非常に複雑になります。従って、分析では影響要因が多岐にわたることを理解した上で、プロモーションの効果測定のやり方を精緻化し、適正な投資利益率(ROI:Return on Investment)を算出する必要があります。

 具体的な分析手法を見ていきましょう。

1:共分散構造解析

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