デジタル変革を実現する、マイクロソフトのグローバル対応ERPとは?ポイントは、クラウド、機械学習、自動化、内製化

中堅・中小企業にもグローバル展開やデジタル改革を求める声が多い。実現するためには、適切な製品とベンダーの選択が鍵になる。

2017年04月21日 10時00分 公開
[TechTargetジャパン]

グローバル企業の課題はデータ連携

 グローバルに事業を展開する企業にとって大きな課題の1つが、会計や業務プロセスのガバナンスを行き届かせるための仕組みをいかに整備するかという点だ。そのためには本社側のシステムに現地法人のデータを連携させ、数字で把握する必要があるが、税制や商慣習などの違いからうまくいかず、このために必要な情報の全てを本社が入手できていないケースも多い。情報連携不足は現地法人に対する管理が行き届かなくなることを意味し、ひいては経営上のトラブルへの対処が遅れるというリスクを招く。

 こうした課題をクリアする有力な手段となるのが、グローバル対応のERPだ。構成や設定を共通化して各国の拠点に同じ環境を展開できれば、そのデータを本社側に連携することで共通の数字を基に状況を把握できるようになる。

マイクロソフトのグローバルERPを取り扱う老舗企業

 パシフィックビジネスコンサルティング(以下、PBC)が取り扱っているグローバルERPは、マイクロソフトの「Microsoft Dynamics 365 for Operations(旧Microsoft Dynamics AX)」および「Microsoft Dynamics NAV」だ。最初にパートナー契約を締結したのは、マイクロソフトが開発元を買収する前の2001年であり、十数年来の老舗パートナーだ。

 PBCはDynamicsシリーズ製品について、コンサルティングから導入・開発、保守サポート、トレーニングなど一連のサービスを提供している。国内企業のみならず、日本企業の海外法人や外資系企業の日本法人にも多く提供している。これまでにDynamics 365 for Operations、Dynamics NAVを合わせて約300サイトの導入実績を持つという。Dynamics 365 for Operationsでは医薬製薬・化粧品業界向けテンプレートを、Dynamics NAVでは製造業、商社、流通小売業、保守・メンテナンス業界向けテンプレートを展開している。もちろん、オンプレミス環境だけでなく、近年では「Microsoft Azure」などクラウド環境での構築にも応じている。

パシフィックビジネスコンサルティングの吉島良平氏

 「ERPの中でも『Tier-1』とも呼ばれる大企業向けのDynamics 365 for Operationsと、子会社や海外現地法人、中堅・中小規模向けの『Tier-2』のDynamics NAVの両方を取り扱っているのは、日本でも当社だけです」と同社の取締役戦略事業推進室長の吉島良平氏は話す。このうちDynamics NAVは世界12万社の導入実績がある製品だ。

 Tier-2は国内において高いポテンシャルがあるブルーオーシャン市場と吉島氏は見ている。なぜなら、日本の中堅・中小企業は、まだERPが浸透しておらず、どちらかというと会計や販売、生産、原価といった業務別パッケージを個々に組み合わせて運用する傾向が強いからだ。しかし近年、こうした企業も海外に進出するケースが増え、その結果として前述のようなガバナンス上の課題に直面するようになってきた。

 そもそも言語や通貨、税制、商慣習などさまざまな要件が日本とは異なる海外で、そのまま使える日本の業務パッケージは多くない。日本の業務パッケージを導入保守してくれるパートナーもほぼない。加えて多くの海外拠点は日本の本社よりも規模が小さく、専任のシステム担当者を置いていないケースが大半だ。日本と異なり離職率が高い国も多いことから、現地のITパートナー企業も含めた運用体制の継続も課題だ。こうした背景から、海外拠点では現地企業が開発した業務パッケージを導入せざるを得ない場合も多いという。

 「日本企業は海外拠点に対しても、管理会計や在庫管理といったガバナンスやプロセスに関する部分で日本国内と同等の水準を求める傾向が強いのですが、現地パッケージではそこまで対応できるものが多くありません。その結果、『現地の管理会計の情報が不完全で、グローバルでの在庫や業績の見える化が課題』という状況に陥りがちなのです」と吉島氏は指摘する。

強力なパートナー体制で海外展開を円滑化

 ERP導入には、グローバルでのガバナンスや業務標準化の向上が期待される。PBCはグローバル企業における日本および現地法人のERP導入を支援する体制を整えており、その展開を強力にサポートすることができる。

 「当社の社員の約4割は外国人であり、また日本人スタッフにもバイリンガルの者が多いため、英語や中国語でのシステム導入サポートが可能です。これによりアジア圏の相当な範囲をカバーすることができます。そして当社には、日本からの直接サポートが困難な米州や、独特の事情がある欧州を含めて、それぞれ安心して任せられるITパートナーがいます。これにより、日本のユーザー企業本社と連携しつつ海外の現地法人にグローバルERPを導入していく体制を実現、本社主導で各国拠点にERPを展開することができるのです」(吉島氏)

 グローバルにDynamics NAVを展開するPBCの活躍は、ユーザー事例からもうかがえる。医療機器や関連製品を開発、製造、販売する旭化成メディカルでは、日本の本社はマイクロソフト以外のグローバルERPを利用し、各国の海外法人ではDynamics NAVを使っている。2009年から各国の海外法人に対しDynamics NAVによるシステム統一を進め、さらに2014年にその全体を再構築、本社で作成したテンプレートを各国に展開することで業務標準化やIT統制の強化を図った。限られた期間の中、PBCのプロジェクト進行により海外法人からの協力を得ることに成功。これにより、業務や経営管理を支える基盤を構築でき、グループ経営管理の高度化に着手できるようになったという。

わずか3カ月、「短納期」「低コスト」でできるERP導入

 Tier-2グローバルERPであるDynamics NAVは、各モジュールが比較的コンパクトに作られており、Tier-1のERPに比べてプロジェクト規模も小さくできる。このため導入コストや期間も抑えられるのが大きなメリットだ。具体的に導入にはコンサルタント1人でプロジェクト全体を見渡すことも難しくないという。そしてMicrosoft AzureでDynamics NAVを構築すれば、さらに短納期での導入が可能となる。ユーザー企業にとっては、早い段階から実際の環境に触れることができ、イメージをつかみやすい。しかもMicrosoft Azureであれば日本の本社側からメンテナンスを行うといったことも容易になり、データ連携にも有利だ。

 短納期での導入事例としては、顔認証入退室管理システムなどのセキュリティ製品の開発やインテグレーションを手掛けるセキュアの例がある。同社は2016年に「Microsoft Dynamics CRM」と共にDynamics NAVをMicrosoft Azureへ導入。選定から本稼働まで3カ月という短期間でクラウドCRMと連携したクラウドERP導入を実現したという。

In Office 365, On Azure, With Dynamics CRM

 Dynamics NAVの特徴はそれだけにとどまらない。マイクロソフト製品となってから十数年の歴史があり、Officeアプリケーションにも通じるユーザー体験を実現しているなどの強みも持っている。

 「Dynamicsシリーズは全体として見た目や直感的な操作が特徴ですが、その中でもより直感的なのがDynamics NAVです。しかもMicrosoft Azure上に構築すれば、マイクロソフトのさまざまなクラウドサービスとも連携して使うことができます。『Office 365』や、さらには『Azure Machine Learning』などといったサービスとも密な連携ができるのです」(吉島氏)

 マイクロソフト製品との密な連携によるメリットは計り知れない。例えば「Microsoft Outlook」内のメールから直接見積もりを作成する、「Microsoft Power BI」とネイティブ連携でき、Dynamics NAVのデータから直接Power BIのレポートを作成するといったように、ユーザーはERPを利用していることを意識することなく、システムの垣根を越えて業務を回していくことが可能となる。さらに、数百のシステムやWebサービスと連携できる「Microsoft Flow」を使うことで、プログラムを1行も書くことなく他システムとの連携環境を構築することができるという。

Dynamics NAV 2017では、メールクライアントであるOutlookの中から与信の確認や見積もり・受注などの作成、送信が行える《クリックで拡大》

 「最新のDynamics NAV 2017のグローバル製品キーワードは、“In Office 365”“On Azure”“With Dynamics CRM”“Plus Power BI”、そこに個人的には“Extend Visual Studio Code, PowerApps, Microsoft Flow”を加え、表現しています。“One Microsoft”でできる、しかも開発者でなくても開発できる。他ベンダーのERPとは全く違う点だといえるでしょう」と吉島氏は強調する。

 Dynamics NAVは、マイクロソフトが持つさまざまなテクノロジーを組み合わせることで、新しいERPの世界を作り出すことができる。例えばマイクロソフト自身も、ファイナンス・経営企画部門において機械学習技術の活用に取り組んでおり、さまざまなノウハウを積んでいるという。

 退屈に思われがちな従来のERPに対して、Microsoft Dynamicsは、新しく面白い世界を作れる可能性を秘めている。マイクロソフトが持つAI(人工知能)ボット、機械学習、「Microsoft Cognitive Service」といった画像認識、音声認識、自然言語処理、「Microsoft HoloLens」を活用したAR(拡張現実)とVR(仮想現実)が融合したMX(複合現実)の世界の開発などと組み合わさることもあり得るだろう。まさにIoT時代にふさわしいインテリジェントなERPといえる。

インテリジェントERP、Dynamics NAV 2017のコンセプト

 導入のしやすさという点だけでなく、さまざまなマイクロソフト製品との連携や同社のテクノロジーを活用することによって働き方の変革や自社を差別化していくことができるという意味でも、Dynamics NAVのメリットは大きいといえるだろう。


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