「プライベートクラウド、実はこんなに魅力的」と評価が変わる日は来るかかつての課題は解決されつつある

コストは低下の一途をたどり、パブリッククラウドとの相互運用性も向上し続けていることから、プライベートクラウドを実装するメリットはますます顕著になっている。

2017年08月07日 05時00分 公開
[Jim O'ReillyTechTarget]

 プライベートクラウド技術のメリットとして一般的に挙げられるのは、セキュリティ問題に焦点を当てたものになる傾向がある。かつてパブリッククラウドのセキュリティが、未熟であまり保護されていない環境から、安定してセキュリティが確保された今の環境に進化しなければならなかったのは事実だ。クロステナント攻撃などの問題は、各テナントのメモリ空間を相互に保護するCPUチップのハードウェアサポートによって解消され、オーケストレーションソフトウェアは認証を強化する形で進歩している。そして、クラウドで保管中のデータを暗号化することが可能になっている。だが、テナントの使用率は依然として高くないのが実情である。

 プライベートクラウド支持者の大半は、外部のテナントがなければ、こうした全ての問題は防ぐことができるという。だが、この考え方は短絡的だ。多くのマルウェアの問題は、クラウドにコードを侵入させた不注意な管理者やユーザーまたは集中的な攻撃のどちらかによって引き起こされている。これは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方に見られる現象だ。パブリッククラウドベンダーは規模の経済であり、格段に大きなセキュリティ予算を持っているから、他の企業よりずっと良い仕事をしているといえるのか、説得力のある議論がなされるべきだろう。

 実際、プライベートクラウドを維持する論拠は、別のところに求める必要がある。明らかなメリットは、運用のシンプルさだ。現在のハイブリッドクラウド環境では、OpenStackなどのプライベートセグメントとパブリックセグメントの間に不連続性が見られる。この不連続性は、インスタンスのイメージ、オーケストレーションとネットワークの制御スクリプト、より一般的なものとしてはクラウドの運用方法の違いにおいて発生することがある。

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パブリッククラウドとプライベートクラウドを連携

 クラウドソフトウェアの開発者は、ハイブリッドクラウドのパブリックセグメントとプライベートセグメントの相互運用性について集中的に取り組んでいる。優秀な製品・サービスは、「Amazon Web Services」(AWS)「Google Cloud」「Microsoft Azure」などのサービスとOpenStackをシームレスに接続するだけでなく、パブリックセグメント間のトランザクションも簡単に処理できなければならない。近年、OpenStackと他の類似製品の連携に注力する動きが見られる。成熟は進んでいるものの、完全な柔軟性とシームレスな相互運用性を実現するには、あと1年ほど歳月がかかるだろう。

 大手パブリッククラウドサービスプロバイダーには、自社のクラウドソフトウェアを民間企業に提供するチャンスがある。Microsoftは既に同社の「Azure Stack」で実験を行い、この取り組みを進めることに全力を注いでいる。そのため2018年には、この動きにAWSとGoogleが追随すると見て間違いはないだろう。上述した共通の運用ツール実現に向けた動きによって、アプリとオーケストレーションの相互運用性に関する問題は解消されることが予想される。

 それから、ストレージへの関心がプライベートクラウドとハイブリッドクラウドの実装に関する様相を変化させている。優れたソリューションであるかどうかは、パフォーマンス調整の機敏さと最適化されたデータの完全性の有無にかかっている。悲しいことだが、これらを欠きがちなソフトウェア開発者の多くが、ストレージを必要悪と見なしているのは自明のことだ。

 全てのアプリはデータを原動力としている。そこで、クラウドバースト(注1)によるピーク時の負荷に対処するハイブリッドクラウド環境を構築する状況について考えてみよう。ピーク時に重要なファイルをコピーすると、数十分から数時間かかる場合があり、バーストの機会を逃す可能性がある。

注1:通常はプライアベートクラウドやオンプレミスでアプリケーションを稼働させ、ピーク時にだけパブリッククラウドにアプリケーションを移してサービスを継続する手法。

 問題の一端は、ハイブリッドクラウド環境の仕組みにある。企業は重要なデータをプライベートセグメントに保持しているため、バーストが始まる前にパブリックセグメントにデータのコピーを作成しなければならない。データセットとデータベースのシャーディングによる適切なデータ管理を行えば、この問題は打開することができる。ただし、変化に対応するために、データの配置戦略は継続的に調整する必要がある。

 2019年までには仮想マシンでなくコンテナを使うであろうことを認識したとき、データの配置に関する問題はさらに深刻になるように見えるだろう。ただし、コンテナのインスタンスは数ミリ秒で起動できるため、データ遅延の問題に本腰を入れて取り組むことができる。

 データの配置に関する問題を軽減できる可能性があるのは、Storage as a Service(サービスとしてのストレージ)のアプローチだ。このアプローチでは、データはパブリックセグメントに保管され、ローカルキャッシュは高速なゲートウェイとして機能する。このアプローチがキャッシュアルゴリズムのパフォーマンスに依存しているのは明らかである。しかし、一般的にゲートウェイは、高速アクセスを実現するためにSSDベースとなっている。もう1つのアプローチは、クラウドサービスプロバイダーのデータセンターと高速なファイバートランクケーブルで接続されているホスティングサイトのプライベートセグメントのコロケーションだ。

 プライベートクラウドについて、もう1つ検討すべきはコストだ。大手クラウドサービスプロバイダーは膨大な購買力を持っているため、原価プラス数パーセントの価格で取引することが多く、ほとんどの企業がうらやむ価格で取引している。また、クラウドサービスプロバイダーには、現在IT機器の大半を製造している台湾や中国の相手先ブランド設計製造業者(ODM)から直接購入する傾向が見られる。これには、大手ブランドの製品も含まれる。こうしたレバレッジ購入が、非常に低価格でレンタル用インスタンスやストレージを提供できる理由だ。

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