巨人に挑む新興ストレージベンダーが熱い理由、「AWS下位互換」「SDSとフラッシュの融合」に注目大手の独走態勢は過去 注目の8社を紹介(1/4 ページ)

ビジネス向けストレージ市場に参入しようとして敗れていった企業がある中、新たに既存ベンダーとの戦いに挑むスタートアップ企業が誕生している。彼らは成功をつかむことができるのか。

2018年01月18日 05時00分 公開
[Garry KranzTechTarget]
画像 広がりを見せるストレージ業界、成功者は誰?

 新しい年を迎え、ビジネス向けデータストレージ市場にも新顔が出そろった。本稿では、フラッシュやハイブリッドクラウド、スケールアウト型ファイルシステム、オブジェクトストレージといった成長分野に新規参入したスタートアップベンダー8社を紹介する。こうした新興企業登場の影では、過去に注目のスタートアップとして名を連ねながら姿を消していった企業もある。

 2017年にはCoho Data、DataGravity、Formation Data Systemsといった企業が倒産や資産売却に追い込まれ、スタートアップの厳しい状況を物語っている。しかし、ストレージ市場にはまだ新興企業が参入する余地が残されている。以下に、2018年に注目したい新興データストレージベンダー8社を社名のアルファベット順に紹介する。

APARAVI

会長・創業者:エイドリアン・クナップ氏

主要製品:Aparavi

発売日:2017年10月

カテゴリー:クラウドデータ保護、サービスとしてのリモート障害復旧

注目理由:クラウドデータ管理の人気上昇

懸念点:クラウドデータ管理の人気上昇に伴う競争激化


 ストレージ市場の中でもクラウドを利用したデータ管理は特に大きな注目を集めている。データ保護やビッグデータの分析と保存などハイブリッドクラウドストレージの用途は増え続けており、増大する一方のデータ量も拍車を掛けている。Aparaviは仮想化製品、オンプレミス型のハードウェアクライアント、クライアント側のソフトウェアで構成される3層の基盤で中堅市場に狙いを定める。

 同社の製品「Aparavi」はホスティングサービスを提供するが、利用者は直接接続のストレージや、プライベートクラウド、Amazon互換のオブジェクトストレージでのバックアップも選択できる。Webホスト型製品ではファイル重複排除やバイト単位の増分に対応する。クライアントソフトウェアは、AES-256暗号化(256bit長の鍵で暗号化)を適用したファイルサーバで動作し、素早い復元のためのリカバリーターゲット(一時的な回復場所)として動作する。

 同製品は複数のクラウドやオンプレミス型ストレージ環境からのポイントインタイムリカバリーを提供する。ポイントインタイムリカバリーとはアーカイブログからリカバリー(復旧)する技術で、ログがあればバックアップ時点よりも最新の状態に復元できる特徴がある。同社によれば、この基盤により、データセットを単一の場所に一括して配置する必要がなくなり、多数のサイロ(非連携の仕組み)に分散したデータを一元管理できるという。Aparaviのオープンデータフォーマットを経由することで、複数クラウド間でシームレスにデータを移動できる。Aparaviは、リモートオフィスのバックアップを除いて、コンプライアンスをサービスとして提供しようとするクラウドプロバイダーをターゲットにしている。

 AparaviはAmazonやGoogle、Microsoftなど大手のクラウドストレージに代わる安価な商品として成功を狙うが、道のりは険しい。バックアップは高可用性へ進化しつつあり、大手ベンダーやCohesity、Rubrikといったセカンダリーストレージの新興企業が支配する市場で地位を獲得する必要がある。

Attala Systems

CEO・共同創業者:タウフィック・マー氏

主要商品:Attala High Performance Composable Storage Infrastructure

発売日:2017年8月

カテゴリー:ハイパフォーマンスコンピューティング、プライマリークラウドストレージ

注目理由:ハードウェア差別化への揺り戻しが起こるか

懸念点:ストレージ購買企業の理解を得ることが課題


 ソフトウェア定義ストレージシステムはx86サーバ技術に基づくものであり、「Field Programmable Gate Array(FPGA)」を出発点としている。FPGAとは製造後に購入者や設計者が構成を設定(カスタマイズ)できる集積回路を指す。新興データストレージベンダーのAttala Systemsが発売した「Attala High Performance Composable Storage Infrastructure」はFPGAとフラッシュの技術を融合し、ストレージハードウェアに自動フラッシュ管理を加えた。

 この製品は「Non-Volatile Memory Express(NVMe)」フラッシュファブリックで1つに統合されたFPGAで構成する。エージェント(管理用マシン)およびサーバがない構成で、ベアメタル上で動作するマルチテナントシステムの稼働用に、またはコンテナ用、仮想マシン(VM)であればフラッシュプール(フラッシュストレージ容量の共有)機能を提供する。

 標準ストレージエンクロージャーにはIntel傘下のAlteraのチップセットを搭載し、FPGAで従来のCPU機能を担う基盤を提供する。こうしたFPGAには、演算処理や標準シリアルインタフェース「PCIe」のハードウェアエミュレーションのようなネットワーク処理を実装したものや、NVMeフラッシュに書き込まれたデータの保存先を提供するものなどがある。FPGAを利用するホストインタフェースは「Remote Direct Memory Access over Converged Ethernet v2 NVMe」ネットワーク層を使ってスケールアウト型データノードと通信する。

 Attala Systemsはこのアプローチで、SSDの基本性能を最大限に生かし、ネットワークの最大速度でフラッシュ容量をクラスタ全体で共有できるようにするという。また複数SSDによる複数のデータパスとレプリケーション(冗長化)でデータの完全性と冗長性や、OSである「Attala OS」のリアルタイムモニタリング(監視)とサービス品質管理も提供する。

 2017年11月、Attalaはペタバイト規模の高パフォーマンスを実現するコンピューティングシステムを発表した。一般提供開始は2018年中を予定しており、Super Micro ComputerのサーバとIntelのSSD「Optane」と「3D NAND」を採用するという。

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