「LINE」やAIも活用、オムニチャネル攻略のために今すべきことは?業務効率化と新たな顧客価値創造

企業と消費者とを結ぶ「接点」が複雑化しつつある。これは課題であると同時にチャンスでもある。業務を効率化しつつ、新たな顧客価値を創造するために企業は今何をすべきか。

2018年01月30日 10時00分 公開
[ITmedia]

次世代のコンタクトセンターは何を担うのか

 顧客が用いるコミュニケーションツールが多様化する中、コンタクトセンターの業務においては、これまでとは違った対応が求められている。

 固定電話と異なりモバイルではいつでも好きなときに電話をかけられるため、以前とは異なる時間帯に電話のアクセスが集中することもある。また、スマートフォンが主流になると、音声通話以外のチャネル、例えばWebサイトやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、チャットツールなどを通じての問い合わせが増えるといった変化もある。

 こうした中、顧客対応の在り方は複雑化しつつある。さまざまな接点でのアクセスを可能にし、迅速かつ効率的にサポート業務を遂行するためには、現場業務の効率化が急務だ。

 さらに、サービス品質を維持した上で、これらの接点を有効活用した新たな価値創造も求められるようになるだろう。人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といった高度なテクノロジーの活用も欠かせない。

 これらの課題に、企業は何から取り組めばいいのか。「ITmedia ビジネスオンライン」編集部は2017年11月29日、この分野で有力なサービスを提供する2社から講師を招いて勉強会を開催した。

「LINE」が深化させる企業と顧客との関係性

 最初に登壇したのは、LINEでビジネス系のプラットフォーム事業に携わるAD事業マーケティング&テクニカルアシスタンスチームの垣内隆志氏だ。顧客接点の多様化を語る上で、国内における月間アクティブユーザー数7100万人を誇るメッセージングサービス「LINE」の存在は欠かせない。

 「LINE」の特徴として垣内氏はまず、「リーチ力の強さ」を指摘する。無料で使える通話とチャットのツールとして登場したLINEはこれまで「若い人のツール」というイメージが強かった。しかし、世代を超えて利用者を拡大し、今や日本における重要なコミュニケーションのインフラとなっている。実際、現在は利用者の約7割(69%)を30歳以上が占めるという。

 企業利用も増えている。スマートフォンでの利用を前提に設計されたLINEは、メッセージを受信すると音や表示で知らせるといった特性があり、開封率も高い。購買力があるユーザーに確実にアプローチするための手段として評価されているのだ。

垣内氏 LINEの垣内隆志氏

「LINE」が深化させる企業と顧客との関係性

 LINEは文字や音声、画像を複合的に扱えるため、意思疎通が図りやすく、カスタマーサポートにも有用だ。例えば、テレビの画面表示に不具合がある場合、ユーザーはLINEでカスタマーサポートに連絡を入れ、会話の途中で不具合の状態を写真に撮って送信することなどが容易にできる。

 LINEでは、企業と個人の関係性を発展させるサービスとして「LINE ビジネスコネクト」と「LINE カスタマーコネクト」を用意している。前者は企業の顧客データベースや顧客管理システムとLINEをAPIで連携させるサービスだが、後者は企業向けのカスタマーサポートサービスだ。

 LINE カスタマーコネクトは、顧客からの問い合わせに対し、AIを応用したチャットbotが自動対応するサービスだ。もちろん、チャットbotが対応し切れない内容に関しては人間のオペレーターにエスカレーションすることもできる。一次対応を効率化するという点だけでも、その導入効果は計り知れない。次世代のカスタマーサポートにLINE活用は欠かせないと言えよう。

図 「LINE カスタマーコネクト」のコア機能《クリックで拡大》

自然な日本語に対応する高精度のAI「COTOHA(コトハ)」シリーズ

 次に登壇したのは、NTTコミュニケーションズ AI推進室の小川貴弘氏だ。小川氏は冒頭、1995年に比べて2060年の労働人口が約50%減少するというデータを提示し、さまざまな業種におけるAI活用の重要性を示唆した。

 急激な労働人口の減少と高齢化が同時進行する現在の日本において、今後は顧客対応に携わる人員の確保がさらに困難になると考えられる。AIやロボットなどの高度なテクノロジーを活用して生産性を高めることは必須となるだろう。

 それらのテクノロジーは既に一般の生活に浸透し始めている。例えばスマートスピーカーは、AI技術がなければ実現しないものだ。また、生活で普通にやりとりされる日本語を解析する技術も重要となってくる。

 NTTコミュニケーションズは、この日本語を解析する分野で、非常に高い技術を持つ。同社が開発したAIによる言語解析を活用したサービス「COTOHA(コトハ)」には、NTT研究所が数十年にわたり研究した成果を用いた。COTOHAシリーズには現在、オペレーター代行の「COTOHA」、自己解決支援の「COTOHA Chat&FAQ」、AI翻訳プラットフォームの「COTOHA Translator」というラインアップがある。

 COTOHAでは、日本最大級の日本語辞書群を採用している。さらに、他の自動応答システムでも行っている一般的な構文分析だけではなく、文から述語とその述語に対する意味役割を成す要素を抽出することで、文脈を理解し、深い日本語解析を実現している。

小川氏 NTTコミュニケーションズの小川貴弘氏

高度な日本語解析でスムーズな顧客対応を実現

 COTOHAは、さまざまなツールと連携可能だ。例えばLINEに導入すれば、顧客対応を自動化できる。

 小川氏は、SMBC日興証券が口座開設などの問い合わせをLINEで受け付けるCOTOHAの事例、コンカーが総務、営業、ITサポートなどの社内問い合わせを一括して対応するCOTOHA Chat & FAQの事例を紹介した。コンカーではこれにより、10人分の稼働人員削減を試算して導入を決定した。社員一人一人の対応業務の一部をAIに任せることで、コンタクトセンター業務だけではなく、会社全体として働き方改革にも活用できるというのだ。

 他にも小川氏は、NTTコミュニケーションズのLINE公式アカウントでの導入例として、顧客との会話から商品をレコメンドするようにしたことで売り上げを大きく伸ばしたケースも紹介した。小川氏は「AIはコスト削減用途を期待しがちだが、売り上げの向上に使えるようになると、非常にパワフルになってくると思う」と述べる。

 AI導入による24時間365日対応は、平日の日勤帯に対応できない顧客のCS(顧客満足)向上に貢献できる。さらに、採用/育成コストや有スキル者離職リスクなどトータルに考えれば、今すぐにでも、導入に着手する必要性がある。

図 高度なコミュニケーションを実現する「COTOHA」《クリックで拡大》

オペレーターを疲弊させないサポート環境の実現に向けて

 最後に登壇したNTTコミュニケーションズ ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部の永井 雅氏は、「進化するコンタクトセンターソリューション、オムニチャネル時代に今やるべきこととは?」をテーマに語った。

 ネットワークやデバイスの高度化、多様化によって、顧客接点は多様化している。Web検索、メール、アプリ、SNS、チャットなど、1人の顧客がさまざまな手段で企業にアクセスするのは今や普通のことだ。この傾向は、今後も変わらないだろう。しかし、「電話」による問い合わせ件数は減っているわけではなく、顧客がシーンによって手段を使い分けていると永井氏は指摘する。

 現在は「多様化するチャネル」「問い合わせ数の増加」「現場での人手不足」の3つの問題があり、「オペレーターを疲弊させない状況を作らないと、コンタクトセンター運営はどんどん悪化して、顧客に満足を提供することができなくなる」と永井氏は訴える。そして、改革の手段として、「AI・IoTの活用」のみならず「自動化」「クラウド化」など総合的な対策が必要だと語った。

 電話対応自動化の一例として永井氏が紹介したのが、NTTコミュニケーションズの「Vポータルダイレクト(クラウドIVR)」と「ナビダイヤルSMS送信サービス」だ。電話の場合、従来は最初に必ず人間が受ける必要があった。しかし、このサービスを使うことで、人間が対応するまでもない単純な内容であればショートメッセージサービス(SMS)からWebサイトのサポートページに誘導するなど、問題の事前振り分けと自動処理が可能になる。オペレーターは、人間にしか対応できない業務に労力を集中でき、負担軽減につながるだろう。

永井氏 NTTコミュニケーションズ ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部 永井 雅氏

「通話中」をなくして機会損失を回避

 電話での問い合わせ件数に対して対応するオペレーターが不足していれば、必然的に「通話中の待ち時間」が増える。これは、顧客の心証を悪くするばかりか、購入・利用意向の喪失や解約につながり、売り上げに影響しかねない。

 複数のコンタクトセンター拠点を持っている企業であれば、ナビダイヤルやフリーダイヤルといったサービスを併用することで、通話中による機会損失を定量的に把握して、各拠点にコールを振り分けることができる。これに加え、永井氏は、各地に点在する拠点をクラウドで統合することを推奨する。これにより、各拠点のPBX(構内交換機)の能力の限界から解放され、より柔軟な運用が可能になるというのだ。

 NTTコミュニケーションズが提供する次世代のクラウド型コンタクトセンターサービス「Arcstar Contact Center(ACC)」は、柔軟なコンタクトセンター運営に大きく貢献する。例えば、席数の増減は最短2営業日で対応ができるという。必要に応じて短期的に新拠点を立ち上げ、期間限定で処理能力を高めることも可能だ。同サービスは調査会社フロスト&サリバン ジャパンの「ジャパン ホステッド コンタクトセンターサービス プロバイダーオブザイヤー」を受賞している。

 NTTコミュニケーションズでは、今後ACCのオプションとして、オムニチャネルに対応したサービスのリリースも予定している。このシステムでは、異なるチャネルでアクセスしたユーザーの履歴が同一画面上で確認できる。これにより、よりきめ細かい対応ができ顧客満足の向上につながるはずだ。

図 高品質で拡張性の高い柔軟なコンタクトセンター運営をクラウド環境で実現する「Arcstar Contact Center」《クリックで拡大》

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