「現場の脱アナログ化」支援ソリューション「Microsoft 365 F1」とは何か現場の脱アナログ作業、効率的に展開するには

これからの企業のデジタル化は、いかにオフィスの「外」を情報化するかが肝要だ。アナログなコミュニケーションや情報の分断を回避すべく、マイクロソフトが「現場のためのソリューションセット」を展開する。これで現場の何が変わるのか。

2018年12月19日 10時00分 公開
[ITmedia]

 業務のデジタル化は現在、企業の隅々まで広く浸透し始めている。かつて業務のデジタル化はオフィスワーカーや経営層など、デスクワークで情報を取り扱う従業員を中心に進められてきた。だがデジタルデバイスの進化やネットワークの高速化、クラウドサービスの多様化により、「現場」の最前線で働く従業員の業務生産性の向上にも大きな影響を与えるようになっている。ここでいう現場の最前線で働く従業員とは、特定の業種に限定せず「販売」「医療」「製造」「建設」「工場」「カスタマーサービス」など、組織として始めに顧客や製品に接触する人々を指す。

 こうした現場の最前線で働く従業員の業務に役立つツールとして、マイクロソフトは2017年9月、「Microsoft 365」のラインアップに「Microsoft 365 F1」というエディションを追加した。今までの「Microsoft 365 Enterprise」と何が違い、現場にどんなメリットがあるのか。Microsoft 365 F1を投入した狙いを日本マイクロソフト マーケティング&オペレーションズ部門 Microsoft 365 ビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャーの菅野亜紀氏に話を聞いた。

「企業の顔」である現場の最前線が抱える課題

 最新のデジタル技術を活用し、既存のビジネスから脱却して新たな価値を生み出す「デジタルトランスフォーメーション」を推進する企業が増える中、これまでデジタル化を進めにくかった「現場」にもITの利用を進めようという機運が高まっている。

 かつては、企業のIT利用はオフィスのデスクトップPCを前提としてきたため、どうしても社外で活動する「現場」はIT利用の外に置かれ、情報の分断を生みやすく、ITを活用すれば簡単にこなせるような、非効率なアナログ業務が残る状況があった。

 だが、現在はスマートフォンやタブレット端末などが広く普及し通信環境も整ってきたことから、現場の最前線で働く従業員の業務もITツールを利用してデジタル化を実現し、効率的にしたいというニーズが生まれてきた。

 こうした現場の従業員のデジタル化に注目したのがマイクロソフトだ。日本マイクロソフトの菅野亜紀氏は「現場の最前線で働く従業員は、最初に顧客と接し、最初に企業の顔になり、最初に製品に触れる、『企業の顔』となる存在であり、彼らの生産性向上は、その先にいるロイヤルカスタマーへの更なる満足度向上や企業としてより質の高い製品を提供することに直結します」と、その重要性を訴える。

 例えば、小売店舗で働く販売スタッフや病院で働く医療スタッフは、顧客や患者に直接接する。工場の生産現場や建設現場の作業スタッフは、製品に最初に触れる立場にある。

 ただし、デジタル化の外に置かれた現場の従業員の仕事はまだアナログな業務や作業が多く残っており、必ずしも効率的ではなく、セキュリティ面のリスクもはらんでいる状況だ。

 「現場は紙で業務を進めることが多く、手書きの情報を後でデータ化するといった非効率な作業が行われていたり、従業員がIT部門に無断でコンシューマー向けアプリやクラウドサービス上で会社の重要情報を扱ったりと、セキュリティの課題があるケースも少なくありません」(菅野氏)

 またデジタル化ができていないため、ノウハウやナレッジの蓄積も人が頼りだ。せっかくの知見や技術が属人化し、会社の資産として継承できないといった悩みを抱える企業も少なくない。さらに一部の業務にITツールを導入していたとしても、業務によってツールが異なるため、現場単体の情報共有ができたとしても、現場間の情報共有が困難だったり、現場と本部との間のコミュニケーションや情報連携がスムーズにいかなかったりするようなケースもよく見られる。

Microsoft 365 F1が現場にもたらす3つの価値

 マイクロソフトはこうした現場の最前線で働く従業員の業務課題を解決するために、さまざまなソリューションを提供してきている。例えば現場で扱いやすい軽量コンパクトなモバイルPC/タブレットの「Surface Go」、ヘッドマウントディスプレイ型のMR(複合現実)デバイスの「HoloLens」などもある。

 こうした現場の従業員向けソリューションの1つにMicrosoft 365 F1も位置付けられている。

 「Microsoft 365 F1は、現場で働く従業員の業務をデジタル化して改善するマイクロソフトの最新ソリューションです。統一したアプリを使って効率的な情報共有、コミュニケーションを実現するための機能を備えており、『Microsoft 365 E3/E5』などオフィスワーカーや経営者向けのエディションと組み合わせて利用することで、業務や組織の個別最適ではなく、企業全体の情報一元化とセキュリティ強化を実現します」(菅野氏)

Microsoft 365 F1は現場の業務をどう替えるか

 菅野氏は、Microsoft 365 F1を現場の最前線に導入することで「3つの価値」が得られる、と語る。

 1つ目は「企業文化の醸成とコミュニケーションの促進」だ。

 「当社の調査によると、現在多くの企業が現場の結束を高めたいと考えています。しかし実際の施策として使われているのは、紙に印刷した社内報などが中心でコミュニケーションが一方通行になっている傾向が多く、現場が求める現場同士あるいは現場と本部をつなぐような双方向のコミュニケーションの役割を果たせていません。そこにMicrosoft 365 F1を導入することで、例えば、経営者と現場の従業員をつなぐための場として、『Yammer』を活用すれば、いつでも現場の課題や懸念事項を経営者に直接伝えたり、経営者の考えを現場に共有したりすることが可能になりますし、『Teams』によるグループチャットなどを使って1つの現場だけでなく、本社と現場、現場間のナレッジを共有し、チームメンバー同士で密な情報連携を図れるようになります」(菅野氏)

 2つ目は「教育/研修の品質を高める」という点だ。同じアンケート調査で、現場の教育/研修には主に紙のマニュアルが使われている他、実践的なOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が中心だという。そのため「人によって教え方にバラつきがある」といった課題を抱えている。つまり、現場によっても、現場従業員によっても、企業として提供するサービスの質が一律ではないということを意味している。

 「Microsoft 365 F1による現場の従業員の教育/研究のデジタル化がこの課題解決の1つになると考えています。従業員育成のための社内トレーニングをWeb会議を通じてリアルタイムに実施し、トレーニング動画を『Stream』でストリーミング配信することも可能です。現場に浸透させたいことを企業として一貫して現場へ展開でき、現場はOJTやマニュアルに加えて、デジタルで実際の動きを目で見て再確認ながら学べるため、より正確な教育/研修が可能になります」(菅野氏)

 3つ目は「業務プロセスをデジタル化して見直す機運をつくる」という点だ。

 「当社が行った調査によると、現場で働く従業員の55%が紙の作業に悩み、68%が紙をデジタル化することで作業効率をアップができると考え、また88%が既存の業務プロセスを見直せば業務スピードが向上すると考えています。Microsoft 365 F1と、ビジネスアプリケーション作成ツール『Microsoft PowerApps』やタスク自動化ツール『Microsoft Flow』を組み合わせて利用すると、普段のアナログ業務プロセスを簡易的にデジタル化し、それをモバイルデバイスで操作できるようになります。さらに、業務プロセスもデータ化されるので、作業状況も可視化できるようになります」(菅野氏)

現場の業務プロセスをデジタル化。可視化にも有効<クリックで拡大>

現場だけでなくマネジャーや本部組織にも価値がある

 ここまで現場の従業員の業務を効率化するMicrosoft 365 F1の価値を見てきたが、もちろんMicrosoft 365 F1は、現場の最前線で働く従業員を統括するマネジャーや本部にとっても価値がある。

 その一つが「リアルタイムな課題解決と現場知見の蓄積を実現できる」ということだ。

 「現場で働く従業員の54%が、過去の情報が1カ所に蓄積されていないため、現場への適応ができないと回答しています。ノウハウやナレッジが蓄積されていないことは、会社にとって大きなマイナスです。なぜなら、企業が新しいことを目指すとき、過去データからも学べることが多いからです。Microsoft 365 F1を導入すると、部門やチームで共有サイトを作成してバラバラなデータやドキュメントを一元管理できるだけでなく、ドキュメントにひも付いたコミュニケーションもデータ化でき、『情報』として活用できるようになります。お客さまの中では社内SNSを使ってナレッジを蓄積し、後々活用している現場もあります」(菅野氏)

 「シフト/スケジュール管理やタスク(作業)管理をデジタル化できる」という価値もマネジャーにとって欠かせない。

 「現場では引き継ぎ作業を紙やノートで管理しているという企業は少なくありません。シフトのスケジュールをメールでやりとりしたり、シフト表を紙で印刷して郵送したりするために報告の抜け漏れが発生し、正しいシフトが組めずに困ったという企業もあります。Microsoft 365 F1には、マネジャーが従業員のスケジュールを作成し、一元管理できる『シフト管理機能』が備わっており、従業員が簡単に自分のシフトを確認したり、休暇をリクエストしたりといった操作ができるようになっています」(菅野氏)

 さらに会社にとって安心できるのが、「セキュリティリスクの低減」だ。Microsoft 365 F1は、会社用のモバイルデバイスのID管理やアクセス制御を一元化する機能、個人所有も含むスマートフォンやタブレットを安全に管理する機能、機密情報をファイルレベルで暗号化し保護する機能などが含まれている。最新の「Windows 10」のライセンスも含まれているため、Windows 10が提供する強固なセキュリティ機能も利用できる。

 「Microsoft 365 F1は既に小売業の販売スタッフ、製造業の工場スタッフ、建設業の作業スタッフ、サービス業のサービススタッフ、運輸業のトラックドライバーなど、現場で働く従業員と本部をつなぐソリューションとして広く活用されています。マイクロソフトは、企業全体の最適化という観点から既に本社に導入いただいているMicrosoft 365 Enterpriseと組み合わせ、連携できるMicrosoft 365 F1こそが現場の最前線で働く従業員のデジタルトランスフォーメーションを実現する最適なソリューションだと考えています」(菅野氏)

Microsoft 365 F1の導入で現場も安全に社内の情報連携の輪に参加できるようになる

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