TechTargetジャパン&キーマンズネット編集部が注目!実態調査から見る2017年 7つのITトピックス

依然として世間を揺るがすセキュリティ問題、大きな関心を集めたAI、企業に押し寄せるデジタルトランスフォーメーションの波……
今、企業が直面している課題や取り組むべきトピックスは山積みです。
そして始まった2017年、これらIT課題への対策や計画に着手する企業も少なくないと思いますが、その実態はどうなっているのでしょうか。

今回、TechTargetジャパンとキーマンズネットでは「IT導入に関するアンケート調査」を実施し、IT部門が重要視している課題や対策、注目のキーワードなどの実態を調査しました。本結果から2017年の動向を7つのポイントで紐解いていきます。またこれらの課題に、ITベンダはどのようなソリューションで対応しようとしているのかなども、併せてお届けします。

トピックス1:クラウド

クラウドサービスの利用率は5割以上、順調に増加

  • クラウドの利用率は約56%、利用意向を含めると約65%

  • 期待はコスト削減、可用性、業務継続性の向上

 クラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS、ハイブリッドクラウド、プライベートクラウドなど)の利用率は56.5%。キーマンズネットが2015年11月に実施したクラウドサービスの利用状況調査より7.3ポイント上昇し、半数以上の企業でクラウドを既に利用している状況が明らかとなった。一方で「利用していない/利用する予定はない」という回答も同調査より8.7ポイント上昇した。2015年にクラウドを検討していた層(24.2%)の一部が、何らかの理由で利用を断念した模様だ。


クラウドサービスの利用状況(N=935)

 ユーザーがクラウドに最も期待していることは、「ハードウェアやソフトウェアの運用コストの削減」(63.6%)だ。IaaSを利用するだけでもハードウェアを運用保守する必要がなくなる。近年パブリッククラウドには、サーバの存在を意識する必要がない「マネージドサービス」や「サーバレス」といった、運用サービス付きの機能が出ている。こうした機能を利用することで、運用コストをより削減できるようになるだろう。


 また、「サービスやシステムの可用性、業務継続性の向上」についても51.0%が期待するという結果だった。「Microsoft Azure」が2016年9月にDNS(Domain Name System)で大規模障害を起こしたことは記憶に新しい。クラウドの稼働率もサービスを選ぶ上では重要な指標といえる。


クラウドサービスに期待すること(N=588)

 利用している/利用予定のサービス形態については、IaaSが38.6%、PaaSは27.7%、SaaSは55.4%だった。2015年調査同様にSaaSの利用率/利用予定が最も多い。IaaSを利用している割合とプライベートクラウドを構築している割合(37.2%)はほぼ同じことから、プライベートクラウドにも引き続き需要のあることが分かる。


利用している/利用予定のクラウドサービス形態(N=588)

 利用している/利用予定のアプリケーションについては、利用率が高いものから順にメールやグループウェアなどの情報系システム、Webサービス、基幹システム、情報共有ポータルとなった。本調査におけるクラウドの定義にはプライベートクラウドも含まれるため、2015年調査と比べて基幹システムの割合が増えたようだ。


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トピックス2:セキュリティ

セキュリティ対策、担当者が最も苦労しているのは?

  • 製品ライセンスや運用管理のコストへの課題がトップ

  • 「対策によってユーザーの利便性が犠牲」、41.2%が課題と認識

 セキュリティ対策の課題は「セキュリティ対策製品のライセンスや運用管理のコスト増」(46.1%)がトップとなった。4位に「投資対効果の説明が難しい」(30.9%)も挙がり、予算確保に苦悩するセキュリティ担当者の苦労が垣間見える。「従業員へのセキュリティ教育が十分にできていない」(42.4%)、「セキュリティ対策によってエンドユーザーの利便性が犠牲になる」(41.2%)など、セキュリティ対策の従業員への影響を懸念する声も多い。


セキュリティ対策における課題(N=828)

 対応が求められているセキュリティ課題としては「従業員による社内情報の公開や持ち出し(内部犯行)」(53.9%)や「自社システムに対する不正アクセスや侵入」(51.4%)がそれぞれ1位と2位となり、内部犯行にも外部からの攻撃にもバランスよく対処しようとする姿勢が感じられる。5位に挙がった「DDoS攻撃などによるサービスの停止」に関しては、最近になってモノのインターネット(IoT)を悪用した大規模DDoS攻撃が明るみに出た。今後も同様の攻撃が発生する可能性があることから、2017年も継続した対策が求められる。


対応が求められているセキュリティ脅威(N=828)

 セキュリティ対策の中でも重要性が高い情報漏えい対策について、利用している/利用予定の製品/技術を聞くと、「各種マルウェア対策」(65.5%)、「Webゲートウェイ/Webプロキシ」(44.8%)、「各種フィルタリング」(44.0%)などが上位に上った。特にマルウェア対策はシグネチャをベースとした従来型製品の欠点を補うべく、膨大な脅威情報や機械学習を生かした新たな製品/機能が登場し始めており、市場があらためて活性化しそうだ。


利用している/利用予定の情報漏えい対策製品/技術(N=828)


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トピックス3:ITインフラ

導入率でも新規導入でも人気の「サーバ仮想化」、その理由は?

  • ITインフラ導入で期待したいのは「高速化」が51.9%

  • オールフラッシュ、ストレージ仮想化の導入機運も拡大

ITインフラ製品/技術の利用状況(N=872)

 ITインフラ製品や技術を導入しているのは、調査に回答した会員が所属する企業の83.3%に達する。なお、回答者の7%は、2017年中の追加投資(4.6%)、もしくは、新規導入(2.4%)を検討している。導入している(または導入を予定している)ITインフラ製品や技術で最も回答が多かったのは「サーバ仮想化」(63%)だ。


 アンケート結果では、次いで「NAS」を上げる回答が多かった。以下、「IAサーバ」(41.2%)、「UNIXサーバ」(30.9%)、「ブレードサーバ」(27.5%)と続く。NASに続くストレージ関連製品では、「テープドライブ」(24.5%)、「SAN」(19.8%)、「ストレージ仮想化」(17.3%)とする回答が多い。「オールフラッシュストレージ」の回答は4.4%だった。


導入している/導入予定のITインフラ製品/技術(N=728)

 現在使っているITインフラ製品や技術の課題としては、「運用・保守における人的負担やコストが大きい」(54.8%)、「増設に伴うハードウェアコストが掛かる」(46.8%)と手間とコストの問題を挙げる回答が多かった。また、機能や拡張性の不足、設置スペースや消費電力の不満が続くが、その中でも「事業継続計画(BCP)/DR(災害復旧)対策が不十分」とする回答が25.4%と最も高かった。その他、ハードウェア保守期限の短さや要因の技術レベルの低さを挙げる回答もみられた。


ITインフラ製品/技術の課題(N=728)

 今後、増設を検討しているITインフラや技術に対する質問では、導入実績と同様に、「サーバ仮想化」(32.0%)が他を引き離して多くの回答を集めていた。また、導入実績で少なかった「ストレージ仮想化」(14.1%)、「オールフラッシュストレージ」(7.6%)が上位に挙がっている。最近見聞きすることが多くなってきたネットワーク仮想化やハイバーコンバージドインフラを挙げる回答もあった。


 増設を検討しているITインフラ製品/技術に期待することとしては、「パフォーマンスの高速化」(51.9%)に「運用管理コストの削減」(42.7%)、そして「サーバ/ストレージ関連コストの削減」(32.3%)と、処理能力の向上とコスト削減の期待が高い。それに次いで多い回答では、「サーバ/ストレージの統合」(28.1%)、「サーバ/ストレージリソースの効率的な利用」(24.8%)が挙がり、効率的な運用を望む回答が多かった。


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トピックス4:ワークスタイル改革

注目のワークスタイル変革、その実現に向けた投資先は?

  • 42.9%が「ワークスタイル変革に取り組む」と回答

  • タブレット、スマートフォン導入率も50%以上

 ワークスタイル変革に現在取り組んでいる企業は36.2%、「2017年に取り組む予定」の企業は6.7%で、全体の42.9%がワークスタイル変革に取り組んでいるという結果となった。


 また、ワークスタイル変革に取り組んでいる企業(予定含む)のうち、既に導入しているクライアント製品/技術の筆頭としては、デスクトップPCが77.7%、ノートPC(15型以下)が77.1%となった。この他、ノートPC(15型以上)、タブレット、スマートフォンの導入率も50%以上という結果だった。


 全回答者のうち「スマートフォン、タブレット、2-in-1端末を導入している/導入予定の方」にとって、これらの端末に何を期待するかを尋ねたところ、スマートフォンに関しては電子メールの利用(55.1%)と社内システムの利用(54.2%)の割合が特に高く、タブレット/2-in-1端末に関しては社内システムの利用(44.1%)が最も高い割合となった。


ワークスタイル変革への取り組み状況(N=851)

スマートデバイスに期待すること(N=354)

 ワークスタイル変革に取り組んでいる企業(予定含む)の理由については、「従業員の働き方の幅を広げたい」(60.2%)の割合が最も高かった。次いで「労働時間を減らすため」(44.9%)、「業務の効率・生産性を高めたい」(36.2%)という結果となった。一方で「優秀な従業員を確保するため」(21.8%)、「従業員の流出を阻止するため」(13.8%)といった、人手不足を理由にする割合はそれほど高くなかった。


ワークスタイル変革に取り組む理由(N=354)

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トピックス5:ビッグデータ/AI

2016年も活用は進まず――
ビッグデータ活用は10%以下、AI活用は5%以下が実態

  • 人材やスキル不足、体制/組織の整備に課題

  • 約3分の1は具体的な活用イメージができていない

 ここ数年、「ビッグデータ」というキーワードは当たり前のように使われるようになった。だが、毎年行っている本調査によると、ビッグデータの活用は拡がっていないのが現状のようだ。


 「既に取り組みを開始している(ビジネスで活用中)」と回答した人はわずか9.5%で、2016年の9.0%から、0.5ポイントしか増加していない。「ビッグデータ活用について具体的に検討中」も9.8%で2016年の6.6%から3.2ポイント増と大きな変化は見られなかった。「今後の重要課題として認識しており情報を収集している」に関しては2016年に比べ10ポイントほど増加したものの、2016年でもビッグデータは実活用には至らなかったようだ。


ビッグデータ活用への取り組み状況(N=838)

 一方、収集したビッグデータを「AI(人工知能)」に読み込ませて、人間には発見できない相関性や解を導くなど期待が寄せられているAI活用についても実態を調査した。その結果、「既に取組みを開始している(ビジネスで活用中)」と回答した人はわずか4.7%にとどまった。


 「AI活用について具体的に検討中(7.1%)」「今後の重要課題として認識しており情報を収集している(41.4%)」を合計すると、約5割がAI活用に注目していることが分かる。具体的に何が課題となってAI活用が進んでいないのだろうか。


AI活用への取り組み状況(N=833)

 「AIに関する知識が不足している(59.6%)」が最も多く、「担当者不足」や「組織の整備不足」「費用対効果が不明瞭」といった回答が4割を超えた。さらに、「AIに業務を任せることに不安がある」という回答も11.1%に上った。また、「その他」と回答した方からは「AIを活用するためのビッグデータが整理できていない、不足している」といったコメントも寄せられた。ビッグデータ活用が進めば、分析工数の削減やイノベーションの創出を期待し、AI活用も一気に加速するかもしれない。2017年こそはこれらの活用が進むことを期待したい。


AI活用における課題(N=443)

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トピックス6:VR/AR

VR/ARはコンシューマー向けのもの? ビジネスシーンでの活用は?

  • VR/ARの認知や理解は進む

  • ビジネスでの活用を検討している企業は40%未満にとどまる

 近年、VR(仮想現実:Virtual Reality)やAR(拡張現実:Augmented Reality)といった新しいITに注目が集まっている。これらはコンピュータゲームのようなB2C分野での活用イメージが強いが、例えば日本航空(JAL)がパイロット育成や機体整備士教育などでAR技術を試験的に取り入れるなどB2B分野でも導入が始まっている。


 まずは、VRについて見ていこう。約7割が「内容を知っている」と回答している(「内容を詳しく知っている(13.9%)」と「内容をある程度知っている(58.9%)」の合算)。「名前を聞いたことがある(23.2%)」も合わせると認知度は96.0%という結果だ。だが、勤務先での活用状況を聞くと63.2%が「必要性を感じない」と答えている。


左図:VRの認知状況(N=833) 右図:VRの活用状況(N=816)

 ARについては、「知らない」と答えた人が17.5%まで増える。一方で、勤務先での活用状況では 「既に活用を開始している(4.0%)」「活用について具体的に検討中(5.2%)」「今後の重要課題として認識しており情報を収集している(28.7%)」という結果になった。


左図:ARの認知状況(N=833) 右図:ARの活用状況(N=696)

 VRやARのビジネスシーンでの活用は、まだまだ一部の先進企業の取り組みにとどまっているようだ。しかしながら、どちらの技術に対しても今後の課題として情報収集が始まっている様子も明らかとなった。2017年は多くの取り組み事例を紹介できるかもしれない。


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トピックス7:ビジネスのデジタル化

言葉だけが先行? ビジネスのデジタル変革の準備は3割程度

  • 約2割が事業部門によるITサービス開発の実現を目指す

  • 新しいデータを生かす取り組みに着手する企業はわずか

 IT戦略の文脈では「Uberization」の造語とともに、「APIエコノミー」による「サービスデザイン」や「オープンプラットフォーム」といったキーワードに注目が集まった。最少の投資でサービスを作り上げるような新しいビジネスモデルに既存企業側が対抗するには、新しいチャレンジを進めることと同時に、現在のビジネスに関わる情報をデジタル化していく必要もある。


 しかし、調査では、既存のビジネスにおけるデジタル化やクラウド化について何らかの対応を進めている企業は全体の3割程度(「既に用意がある(15.2%)」と「予定はある(15.6%)」)にとどまっていることが明らかになった。


既存のビジネスにおけるデジタル化やクラウド化の対応状況(N=829)

 そもそもデジタル化に向けたデータの管理体制が整っているかと聞いたところ、対策を実施済みとした回答者が30.0%で、デジタル化やクラウド化を推進する企業の割合と同程度の水準となった。これに加えて「着手中」とした回答者が19.5%、「実施意向はあるが実現していない」とする回答者が3.7%あり、これらを合わせると半数以上が何らかのデータ管理対策を意識していることが分かった。


 ビジネス開発においては事業部門がITを活用したサービスデザインを担うことが期待されているが、「情報システム部門を介さずに、事業部門が主体となって新規事業向けシステム開発を推進する環境を整備しているかどうか」の問いでは、「既に整備されている」が12.5%、「整備する予定がある」が10.0%と、全体の2割ほどであった。


事業部門が主体となった新規事業向けシステム開発の環境整備状況(N=829)

 一方で、IoTデータなどの新しいデジタルデータをビジネスに生かす試みは、絶対数こそ多くないものの(7.1%)、多様な領域で実施され始めていることが分かった。特に、生産や物流の自動化、スループット改善といった、工場のスマート化で具体的な利用例を示す回答が目立った。次いで、マーケティング業務やコールセンター業務のデジタル化、就労管理のデジタル化を実施しているとの回答も見られた。


 これらのことから、2016年に注目を集めた「企業のデジタル変革」が一部の先進的な企業以外に普及するには、相応の時間がかかることが予想される。また、新しいデータを使ったデジタル変革では、ソリューション導入のための評価検証などに一定の工数が掛かること、スマート工場などのように、1件当たりの導入規模が大きくなりやすいことを考えると、2017年に検討を始めた取り組みが今後数年で具体化する可能性もあるだろう。


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提供:
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部/掲載内容有効期限:2017年4月30日

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