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クラウド比較は時間の無駄――東急ハンズ 長谷川氏が語るクラウド導入 5つの極意「AWS Cloud Roadshow福岡」東急ハンズ講演リポート(前編)

「Amazon Web Services」(AWS)の企業ユーザー会「Enterprise JAWS-UG」のコミッティメンバーとしておなじみ、東急ハンズ 長谷川氏がクラウド導入の極意を語る。

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 アマゾン データ サービス ジャパンは2014年11月6日、クラウドカンファレンス「AWS Cloud Roadshow 2014 powered by Intel 福岡」を開催した。30分のスペシャルセッションでは、「Amazon Web Services」(AWS)の企業ユーザー会である「Enterprise JAWS-UG」でもおなじみ、東急ハンズ 執行役員 長谷川 秀樹氏が、得意の“長谷川節”を披露。これまでも度々AWSのカンファレンスに登壇してきた長谷川氏だが、今回の講演でもクラウド導入における新たなヒントを提示した

クラウド導入5つの極意


東急ハンズ 長谷川氏

 AWSへの全面移行を表明している東急ハンズは、2012年以降サーバを新たに購入していないという。新規のシステムはファイルサーバやActive Directoryサーバなど細かいシステムを含め、ほぼ全てをAWSで稼働させている。ちなみに同社のシステム規模をオンプレミスで示すと、データセンターで13ラック程度だそうだ。それを2014年度中に全てAWSに移行する計画である。

極意1.AWSのサイジングは高めに設定しておき後で下げる

 長谷川氏がAWSを使用して「楽になった」と思うことの1つがサイジングだという。一般的に、オンプレミスで新規システムのサイジングをした場合、正確性を突き詰めることは不可能に近い。だがAWSをはじめとしたパブリッククラウドであれば、メモリ、ディスク、CPUといったリソースが要求と異なれば、すぐに直すことができる。

 ここで気を付けたいのが最初のリソースの取り方だ。長谷川氏は、「最初に低めに設定して足りなくなったら設定を上げるというやり方は、システムを停止に追い込む恐れがあるので止めた方がいい」と忠告する。そうではなく、「最初は高めに設定しておき、余裕が出てきたら設定を下げる。必要なスペックが大体分かったら、リザーブドインスタンスに切り替えベースのコストを下げる方法がお勧め」とアドバイスする。

極意2.比較はしない

 通常、クラウドサービスを導入する際、コンサルティング会社などに依頼して幾つかのクラウドサービスを比較検討する。各クラウドサービスに比較項目を設け、「○△×」のような評価をした上で選定する企業がほとんどだ。

 だが、長谷川氏の考えは違う。「僕の持論では、数カ月かけて何百万円もの額をコンサルティング会社に払うのは無駄」と述べる。その心は、「サービスの検討に時間やお金をかけるよりも、早く決めてトライ&エラーを繰り返し、サービスの癖に慣れた方がよい。そのための時間を確保したいので、どこのクラウドにしようかと検討する時間は極力カットする」という考えによる。

 長谷川氏がAWSを選んだ理由は、「AWSが機能や実績で圧倒的にNo.1だったから」。同社がクラウド導入を検討したきっかけは2011年3月の東日本大震災である。「業務を止めないシステム」(BCP対策)の実現においてAWSは、複数のリージョンを有し、データを3カ所以上のデータセンターにコピーする「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)があり、仮想マシン「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)は再作成が容易、インスタンスは即立ち上がるといった強みがある。「AWSの利用を決めた当時、周囲のITに詳しい人たちのほぼ全員が『AWSが良い』と言った。判断材料としてはそれで十分」

 比較資料は多くの場合、IT部門自らのためよりも役員に提出するために作る書類であることが多く、その準備に時間やお金を費やすことに本質的な意味はない。もし客観的な判断材料が必要ということであれば「『ガートナーのマジック・クアドラントが○○と言っている』でいい」と述べる長谷川氏。調査会社が公表している資料を利用するなどして、なるべく労力を掛けない方法を探す方が賢明だと話す。

極意3.“コスト削減”に縛られない

 長谷川氏は「一般的な企業とは違う考えかもしれない」と前置きしつつも、「コスト削減はあまり意識していない」と述べる。最初にAWSを導入しようとしたとき、既存のデータセンターからAWSへシステムを移行するといくら掛かるかの概算は出したが、それ以降は同様の計算はせず、他社サービスとの比較もしていないという。意味がないからだ。

 「クラウドを利用する真の目的はコスト削減ではなく、オンプレミスではできなかったことをやるため。自動車がマニュアル(マニュアルトランスミッション)からオートマ(オートマチックトランスミッション)へ替わるのと同じで、そのときに値段が上がったか下がったかはさほど重要ではない」と断言する。

 「コスト削減が重要ということであれば、既存のデータセンター事業者に、1ラック数万円になるまで値下げ交渉をし続けた方がいいのでは」と考えているそうだ。

極意4.自社開発の領域を広げる

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