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学校ITは「全校統一」「先生の裁量任せ」のどちらが適切? 教員志望の学生が議論“教員の卵”×iTeachers座談会【第4回】

教育機関でIT製品を導入する際、製品や使い方を全校で統一すべきなのか。それとも教員の裁量に任せるべきなのか。教員志望の学生と教員との座談会の内容を基に考える。

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 第3回「先生も生徒も幸せになる『プログラミング教育』の条件は? 教員志望の学生が議論」まで3回にわたって、教員志望の学生と大学教員による、教育IT分野に関する座談会の内容をお伝えしてきた本連載。最終回となる今回は、教育機関におけるIT製品の採用方法や、ITの可能性と課題に関する議論を紹介する。

 座談会には、玉川大学の学生である相原拓実さんと加藤千春さんが学生側、同大学准教授の小酒井 正和氏が教員側として参加。モデレーターはNPO法人(特定非営利活動法人)iTeachers Academyの事務局長である小池幸司氏が務めた。小酒井氏と小池氏は、IT活用を推進する教育者チーム「iTeachers」のメンバーだ。

参加者(所属・役職は取材時)

小酒井 正和氏 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科准教授

相原拓実さん 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科3年

加藤千春さん 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科3年

モデレーター

小池幸司氏 iTeachers Academy事務局長


IT製品は「全校統一」か「教員任せ」か

小池氏 教育機関によって、IT製品の導入や活用の方針はさまざまです。授業で利用するIT製品やその使い方を全校で統一する教育機関もあれば、各教員に任せている教育機関もあり、どちらも一長一短があります。どのような導入方法を選択すべきでしょうか。

加藤さん IT製品については、学校全体で同じものを利用した方がよいと考えています。活用の仕方についても、最低限の内容は決めておくべきです。その上で、より高度な活用へと進めていきたい教員がいたら、それを許可すればいい。

 全てを教員一人一人に任せきりにしてしまうと、教員間でのIT活用の内容やレベルの差が広がり、ひいては授業の質のばらつきにつながりかねません。それによって学習者の理解度に差が出てしまうような事態は避けるべきです。

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玉川大学の相原拓実さん

相原さん 教員が自ら使うIT製品であれば、その選択は各教員の裁量に任せてもよいのではないかというのが、私の考えです。標準のIT製品を定める場合でも、各教員には自ら発掘したIT製品を試すことを許可して、一度標準として決めたIT製品でも定期的に見直せるようにしたい。ITに詳しい教員がせっかく優れたIT製品を見つけてきても、活用できないとなるともったいないからです。

 とはいえ加藤さんが言うように「隣のクラスはITを使って分かりやすい授業をしているのに、うちのクラスの授業は分かりにくい」といった状況が生まれることは、確かに避けなければいけません。他のクラスともレポートや成果物を共有したりして、IT活用の成功事例を広めていくべきです。その際にも、コミュニケーションツールなどのITが役立つはずです。

加藤さん IT活用の不得手な教員がいたら、教員同士で情報共有してフォローする仕組みがあるといいですね。

相原さん 情報共有の推進役となる、リーダー的な役割の教員が求められそうです。

保護者との“ダイレクトコミュニケーション”の功罪

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モデレーターの小池幸司氏

小池氏 教員間や教員・学習者間といった校内の情報共有を円滑に進めるために、標準のコミュニケーションツールを整備している教育機関は少なくありません。その次の段階として、教員と保護者との間のやりとりにもコミュニケーションツールの活用を広げることが考えられます。

小酒井氏 教育機関には紙の文化が根強く残っており、保護者への連絡も紙が中心です。連絡事項を紙でもらうよりも、PDFファイルなどのデータでもらいたいと考える保護者は少なくないでしょう。

小池氏 保護者との素早く緊密な情報交換を可能にする上で、コミュニケーションツールは大いに有用です。一方で保護者と直接つながるコミュニケーション手段を持つようになると、教員は勤務時間かどうかに関係なく、保護者と連絡を取り続けなければならなくなる可能性があります。

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