データセンター構築のプロが教える3つのアドバイス:Case Study
現在、事業の成長に合わせて新しいデータセンターを構築中の米ターゲット。同社のテクニカルアーキテクトにデータセンター構築のポイントを聞いた。
小売り大手のターゲットは現在、事業の成長に合わせて新しいデータセンターを構築中だ。同社は5年前に1つデータセンターを構築したばかりだが、同社のIT部門は、今の調子で成長が続くのであれば5年に1つは新しいデータセンターを構築する必要があると予測している。
そうなれば、ターゲットのテクニカルアーキテクト、ダグ・ホール氏は今後、データセンター構築の腕をどんどん磨いていくことになるだろう。既に2つのデータセンターの設計と構築を経験している同氏に、構築プロセスについて話を聞いた。
小売り大手のターゲットは現在、事業の成長に合わせて新しいデータセンターを構築中だ。同社は5年前に1つデータセンターを構築したばかりだが、同社のIT部門は、今の調子で成長が続くのであれば5年に1つは新しいデータセンターを構築する必要があると予測している。
そうなれば、ターゲットのテクニカルアーキテクト、ダグ・ホール氏は今後、データセンター構築の腕をどんどん磨いていくことになるだろう。既に2つのデータセンターの設計と構築を経験している同氏は、アフコムが3月に開催したData Center Worldカンファレンスで世界規模のオペレーションについて講演した。
ホール氏によるベストプラクティスのセッションの後、同氏に構築プロセスについて話を聞いた。「新しいデータセンターには大幅な強化を施した。計画に着手したのは2005年10月、完成は2007年9月の予定だ。構築プロセスは23カ月間だ。それに先立ち、設計には6カ月間ほどを費やした。そして今も設計の微調整を続けている」と同氏。
ホール氏によれば、データセンターではいずれは「スペース」「電力」「冷却機能」「ネットワークポート」の4要素のどれか1つが足りなくなるものだ。ターゲットにとっては、新しい設備の構築を正当化する最初の大義名分は「スペースがもっと必要だから」というものだった。
「残念ながら、当社にはサーバ数と店舗数の比率を算出するための基準がない。われわれが店舗とデータリソースを増やせば、サーバも増やすことになり、より多くのスペースが必要となる。例えば、ドラッグストアだが、ターゲットはこの分野に参入してからまだそれほど長くない。この分野では多くのデータ処理が必要となる。クレジットカード、店舗そのもの、インターネットホスティング──これらの成長は素晴らしいことだが、それに伴い、建築物ももっと必要になる」と同氏。
ホール氏は5年前にミネソタ州ブルックリンパークに4万5000平方フィートのデータセンターを構築したが、その際に学んだことを現在、最新の設備に応用している。そして同氏は、他社からも学んでいる。
「今回の構築は、最初のデータセンターの構築よりもはるかに簡単だった。われわれの知識ははるかに多くなっている。そして、われわれは5〜6年前よりもはるかに賢くなっている」と同氏。
ホール氏は多数のデータセンターを訪問し、ベストプラクティスについて取材し、また多数のカンファレンスにも出席した。同氏によれば、あるグループが特に役立ったという。「(業界団体アップタイムインスティテュートが1993年に結成した)サイトアップタイムネットワークには80社の加盟企業とすべてのデータセンター設備の管理スタッフが参加している。このネットワークにはベンダーは参加せず、各社が互いにプレゼンテーションを行う。会合を主催する会社が、自分たちの設備を案内することになっている」と同氏。
ホール氏は、どうすればより良い設備を構築できるかを学ぶためには、外に出て、人と会うべきだとアドバイスしている。「われわれは他社からノウハウを盗むのにやぶさかではない。すべてがわれわれのオリジナルのアイデアというわけではない」と同氏。
ホール氏が新しい設備に加えた変更点には、シンプルなものもあれば、大きなものもあった。新しいデータセンターでの2つの大きな変更点は、冷水熱交換器の容量、および中電圧(MV)を扱えるような設備を構築したことだ。
「われわれはフロアにリーベルトの水冷式ユニットを設置した。だが、熱交換器が必要になったときのための準備もできている。熱交換器は今はまだ設置しないが、そのためのスペースと電源は用意してある」とホール氏。
中電圧設備では、変圧器が地所に隣接して置かれ、企業が配電を管理する。そのため電気配線を節約でき、ビルの収容力を増やせる。
「中電圧ではフロアにより多くの電力を送れる。高密度のデータセンターではよくあることだ。1平方フィート(約0.093平方メートル)当たり100W以上になると、中電圧が必要だ。より多くの電力が必要となるのだ。われわれが最初に構築したビルにも中電圧を採用したかったが、予算オーバーだった。購入希望リストには載っていたが、認められなかった」とホール氏。
非常用シャワーの流量センサーのように、そのほかの要素はもっと簡単に済んだ。「われわれは流量センサーは用意しなかった。誰かが非常用シャワールームにいても分からないようになっている。シャワーの設置は法律で義務付けられているが、他社の設備を訪問したところ、流量センサーは特に重要ではないことが分かった」とホール氏。
ホール氏は、新設備の構築を検討しているデータセンターのプロフェッショナル向けに次の3つのアドバイスを提供している。
- アップタイムインスティテュートの基準でTier IIIレベルを満たすようビルを建築する。Tier IIIレベルでは、設備の同時保守が可能でなければならない。システムの一部をシャットダウンし、それを保守しながら、一方ではフリーアクセスフロアの負荷を維持できるようにする。また、データセンターの動作に影響を及ぼさずに、あらゆる要素について保守を行えるようにする必要がある。すべてのインフラで完全な冗長性を実現するTier IVレベルの企業も多数存在する。
- 週7日間24時間体制で対応できるような設備/セキュリティスタッフを現場に配備する。例えば、誰かが午前3時にデータセンターに入る必要がある場合に、データセンターへのカードアクセスを確認するための人員をメインセキュリティデスクに配置するといったことだ。
- データセンターでのオペレーションに関する厳密なポリシーと手順を管理する。ターゲットでは、フリーアクセスフロアの管理に4人のスタッフを割り当てており、機器の接続はこの4人以外には認められていない。サーバ技術者やネットワーク設計者もいるだろうが、彼らは設置の専門家ではない。さらにターゲットは、フリーアクセスフロアと対応させたアルファベットと数字の組み合わせによる座標表示方法を使って、すべての機器にラベルを印刷している(機器の名前はグリッドロケーションをベースとしている)。そして、ラベルのない機器は、データセンター内には持ち込めないことになっている。
こうしたアドバイスにもかかわらず、ホール氏によれば、最大の問題の1つはすべての関係者の間での調整だという。「われわれは多様なソースから非常に多くのインプットを得る。われわれの組織には、施設マネジャーもいれば、サーバ/ネットワークの担当者もいれば、請負業者、建設者もいる」と同氏。
ホール氏はこの25〜30人の関係者全員を2週間ごとに招集し、予定を確認したり、その時々の課題を話し合ったり、構築に関する問題を議論したりしている。
「私も含めターゲットのIT設備担当者の3人は、毎日ある程度の時間をこのビルの構築に費やしている。われわれはこの設計にしっかりかかわっていたい」と同氏は語っている。
(この記事は2006年3月28日に掲載されたものを翻訳しました。)
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