仮想化技術ハイパーバイザーの実相に迫る:Column
ハイパーバイザーは、ハードレベルでソフトレイヤーを使い、複数のOSを動作させる技術。ゼンソースやサン・マイクロシステムズが関連製品を発表し、注目を集めている。
ハイパーバイザー技術は、サーバの利用効率を最大限に高めるために仮想化を利用しようと考えているIT部門に大きなメリットをもたらすといわれている。
仮想化というアイデアそのものは、決して新しいものではない――この用語は何十年も前から、メインフレームのパーティショニング技術に関連して用いられてきた。しかし「ハイパーバイザー」と呼ばれる薄いソフトウェアレイヤーをハードウェアレベルで使用し、複数のOSを同時に動作させるという斬新な手法が注目を集めているのは、サーバリソースをかつてなく効率的に利用できる可能性があるからだ。
ハイパーバイザー技術は、サーバの利用効率を最大限に高めるために仮想化を利用しようと考えているIT部門に大きなメリットをもたらすといわれている。
仮想化というアイデアそのものは、決して新しいものではない――この用語は何十年も前から、メインフレームのパーティショニング技術に関連して用いられてきた。しかし「ハイパーバイザー」と呼ばれる薄いソフトウェアレイヤーをハードウェアレベルで使用し、複数のOSを同時に動作させるという斬新な手法が注目を集めているのは、サーバリソースをかつてなく効率的に利用できる可能性があるからだ。
ITマネジャーにとっては、仮想化技術はコスト削減を意味する。プロセッサ、I/O、ディスクの利用効率を高めることができるからだ。ユーザーにとっては、同じ物理ハードウェア上で異なるOS用のアプリケーションを同時に利用できるため、生産性の向上を期待することができる。
ストレージとサーバの販売・サービスを手掛けるソリューションズIIでプロフェッショナルサービスを担当するディレクター、ニック・ウェリング氏は、「当社の顧客は、サーバ、管理、消費電力などあらゆる面で経費を削減するための技術として、仮想化に強い関心を抱いている」と話す。
調査会社IDCの調査も、仮想化技術に対する関心の高さを示している。調査に協力したFortune 500企業のうち75%が、「すでに仮想化技術を利用している」あるいは「1年以内に導入を予定している」と答えた。
仮想化をめぐる最近の傾向としては、ホストOSとゲストOSの間でリソースを管理するソフトウェアレイヤーよりも、組み込み型のハイパーバイザーの人気が高まっているようだ。「ハイパーバイザーがOSに組み込まれている方が自然だ」と話すのは、調査会社イルミネータで主任ITアドバイザーを務めるゴードン・ハフ氏だ。アドオンタイプよりも組み込み型のハイパーバイザーをユーザーが選ぶと思われるもう1つの理由として、ライセンスの問題があるという。
この斬新なデザイン手法は、仮想化技術の最適化に向けて各社が開発中のハードウェア/ソフトウェアで登場する見込みだ。すでに数社の大手ベンダーが、それぞれの最新の仮想化製品にソフトウェアレイヤーを統合する方針を明らかにしている。
- ゼンソースの「Xen 3.0」は、ハードウェア仮想化技術を利用できるハイパーバイザーを組み込み、プロプライエタリなOSもサポートする。Xenは、ケンブリッジ大学で開発されたオープンソースの仮想マシンモニタ(すなわちハイパーバイザー)であり、Xen開発チームの当初のメンバーがゼンソースを運営している。
Xen 3.0では、32ウェイのSMPマシン上で仮想ゲストを実行することができる。ブレードシステムでのCPUのホットプラグのサポートも追加された。これにより、利用可能なサーバリソースにワークロードを最適配分することが可能になるという。大手ベンダーの中では、レッドハットおよびノベルが、Xen 3.0とその組み込み型ハイパーバイザーを統合した製品を発表した。
- サン・マイクロシステムズは、ハイエンドの省電力型プロセッサ「UltraSPARC T1」にハイパーバイザー技術を組み込み、任意のゲストOSが動作する仮想マシン環境を実現した。さらに同社は、OpenSPARC構想の一環として、LinuxやBSDなどのOS、ミドルウェア、アプリケーションをUltraSPARC T1プロセッサ(以前は「Niagara」のコードネームで呼ばれていたCPU)にポーティングする作業を支援するために、「UltraSPARC Architecture 2005」および「HyperVisor API」規格を策定した。
- ヴイエムウェア(カリフォルニア州パロアルト)は6月、次世代の「ESX Server 3」および「VirtualCenter 2」プラットフォームのリリース予定と価格を発表した。ESX Serverでは、x86サーバハードウェアと仮想マシンの間にハイパーバイザーレイヤーを挿入する「ベアメタル」アーキテクチャが採用された。
マイクロソフトは最近、Windows用に最適化された先進的なハイパーバイザー仮想化ソフトウェア(コードネームは「Viridian」)の計画を明らかにした。それによると、Longhorn Serverの後期版の製造工程向けリリース(2007年中に行われる予定)から180日以内にViridianを出荷する予定だとしている。
マイクロソフトでは次世代サーバの開発に精を出しているが、セキュリティを強化すると同時に、複数のOSの軽快な稼働を可能にするハイパーバイザーレイヤーを含めるという目標を同社が達成するのは難しい(あるいは不可能)という懐疑的な見方もある。Windowsがモノリシックなデザインであるからだ。
「Windowsは伝統的にモノリシックなOSである」とハフ氏は指摘する。しかしWindows Longhornでは、マイクロソフトは異なるアプローチで臨んでおり、Release 2にはハイパーバイザーを直接組み込む方針だ、と同氏は話す。
マイクロソフトで仮想マシン技術を担当するプロダクトユニットマネジャー、マイク・ニール氏によると、同社はプロセッサメーカー各社と共同で、「AMD-V」および「Intel VT」仮想化支援機構を利用するハイパーバイザーを一からデザインしたという。「ハイパーバイザーレイヤーを非常に薄くし、ハイパーバイザーの特権レベル内での外部コードの実行を禁止することにより、トラステッドコンピューティングのための非常にセキュアな基盤を構築することが可能になる」と同氏は説明する。
ニール氏によると、ITマネジャーがハイパーバイザー技術に注目すべき理由として、セキュリティの改善に加え、コスト面でのメリットが大きいという。一般に、リソースの統合に必要な経費は、運用コストの削減によって賄うことができる。マシンの数が少なければ、使用床面積も少なくて済み、メンテナンスコストや電力/冷却コストも低下し、これらはすべて運用コストの削減につながる、と同氏は話す。
「Windows Server Longhornの基本技術を利用することにより、ペアレントパーティションの総合フットプリントを縮小することができ、その結果、システムに関連したメンテナンスコストが減少する」とニール氏は話す。
ハイパーバイザー技術を活用するには、ハードウェアのアップグレードも必要になるが、ハフ氏によると、そういったコストは、ユーザーがハイパーバイザーを採用する上での妨げにはならないという。仮想化を配備する上でもう1つ好都合なことは、マイクロソフトのハイパーバイザーの登場を待たなくてもWindowsを動作させることができるという点である。「ヴイエムウェアなどのベンダーから提供されているツールを利用すれば、現時点で仮想化技術を配備することができる」とハフ氏は話す。
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