Column
モバイル機器のセキュリティは「飲酒運転対策」レベル
モバイル機器のセキュリティに対する企業の姿勢は飲酒運転のようなもので、危険が分かっていながら対策が取られていないと専門家は指摘する。
ノートPCなどモバイル機器の重要なデータを保護する最善の策は暗号化だと専門家は言う。それは分かっていると、ほとんどのIT組織は話す。ではなぜ実際にそうしている企業がこれほど少ないのだろう。
「いまだに自社のデータを保護していない企業があまりに多いことが心配だ」。こう語るのは、調査会社ガートナーの著名アナリスト、ジョン・ジラード副社長。「過去数年の(暗号化)製品の売れ行きは、ノートPCやモバイル機器の普及に比べてまだほんの一部にすぎない」
モバイル暗号化技術を提供しているクレダント・テクノロジーズが各国のIT専門職426人を対象に最近実施した調査では、88%が「重要なデータがまだ大量に社員のモバイル機器に保存されている」と答えた。このデータを守る最善の方法は暗号化だと72%が認識していながら、実際に自社のデバイスに暗号を導入しているという回答は20%のみだった。
「この数字は納得がいく。われわれが話す相手のほとんどは、これがまだ自分の守備範囲にさえ入っていないと報告している」。調査会社インフォテック・リサーチグループの上級リサーチアナリスト、カルミ・レビー氏はこう話す。
レビー氏によれば、モバイル機器がデータセキュリティに投げ掛けるリスクについて、企業の間には心理的障壁があるようだという。
「これまで(モバイル機器は)低電力で機能も低い、会社のツールセットの付属品と見られてきた」とレビー氏。
しかしニュースを読んでいる人なら誰でも、顧客や従業員の個人情報が何千件も入ったノートPCが毎月のように紛失したり盗まれていることは承知だ。
セキュアでないモバイルデータに対する姿勢は飲酒運転のようなものだとレビー氏は言う。それがどういう意味かは明らかだ:飲酒運転は危険であり、法的に深刻な結果を招く可能性がある。それでもアルコールが絡む事故で依然として毎年数千人が死亡している。
「モバイルデータセキュリティにも同じことが言える。危険は分かっており、簡単に理解できるのに、ほとんどの組織がこれを真にコントロールするために必要なリソースを割いていない」とレビー氏。
クレダントの調査では自分の会社で暗号化を採用しない理由について尋ねた。56%は予算不足を挙げ、暗号化は経営上の優先課題ではないとの回答が51%。50%は限られたITリソースが足かせになっていると答えた。
「誰もこれに金を掛けたいと思っていない」とジラード氏。
病院チェーンを運営するインテグリス・ヘルスで上級ITコンサルタントを務めるランディ・マイブ氏は、5年前、自社のモバイル機器すべてにクレダントのモバイル暗号を導入した。
「(同僚たちとの)会話から判断すると、暗号化が必要だとの認識はますます高まっているが、暗号化をどこで、どんな状況で行うべきかという根本知識を持っていないことが多い」とマイブ氏。「しかしセキュリティとHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)について話す機会はますます増えている。だが、クライアントサイドの暗号化について聞いたことがない者も多く、パスワードがあれば十分だと考えている」
同氏によると、暗号化に関してインテグリスが先端を行く鍵となったのは同社の元CIOだった。
「当社の元CIOは相当のビジョナリーだった。われわれはまず(暗号化で)どこが先行しているかを調べ、業界がどのような実践を始めているかを見極めることから着手した」とマイブ氏。
「それ以前のセキュリティといえば、医師と総務担当者がPalmのセキュリティ機能をオンにする方法を知っている程度だった」(同氏)
同氏によれば、モバイル機器のみを仕事に使っているのは同社の数千人の医師のうち300人程度だが、その人数は増えつつある。
医師は患者情報が入手しにくくなることを好まないため、最初は暗号化導入に対する抵抗が強かったという。しかしマイブ氏は、医師が暗証番号で比較的簡単にデータの暗号を解除できるようにしたと説明する。
モバイルデータの処理方法としては暗号化が最もシンプルだが、実装に不安を持つ企業が多いとジラード氏は話す。
「暗号化するとデバイスが遅くなるという不安は強い。暗号化したデバイスは復旧、診断、修理が難しいという懸念もある。この両方とも、一定の状況下で的を射ているのは確かだ。しかし今ではほとんどのデバイスがパワーアップしている」(ジラード氏)
ユーザーはモバイル機器が利用しにくくなることに対し、何であれ反対するものだとジラード氏は言う。
「デバイスは簡単に利用できるものであるべきだ。PDAを起動するのに30秒以上かかる措置を導入したら、ユーザーはどう感じるだろう。ユーザーにとっては利便性がすべてだ。デバイスに導入するセキュリティは、ユーザーの妨げにならないよう配慮する必要があるが、目に見えないものであってはならない」(ジラード氏)
レビー氏は、モバイル暗号をIT上の優先課題とすべきだと話す。企業がモバイルセキュリティ戦略を導入していないため、必ずしもモバイル機器に目が向けられるとは限らない。これは、かつてモバイル機器といえば、エンドユーザーが組織に持ち込んでこっそり接続するものだった名残りでもあると、同氏は解説している。
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