データガバナンスプロジェクトはなぜ失敗するのか:Column
財務の透明性の要請やSOX法など、データガバナンスの必要性に直面しているにもかかわらず、なぜうまくいかないのだろうか。その主な原因と対策を紹介する。
データガバナンスプロジェクトは呪われているのだろうか。ガートナーは最近の調査リポートで、「2008年時点では、データガバナンスに初めて取り組んで成功する組織は、10%未満だろう」と予測している。
10%未満というのは驚くべき数字だ。企業は競争圧力や、財務の透明性の要請、企業改革法(サーベンス・オクスリー法)やHIPAA法(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の順守の必要性に直面しており、これらに対応するという目的を掲げてデータガバナンスに取り組みやすい状況にあるはずからだ。しかも、データガバナンスに取り組む企業はホワイトペーパーを読んだり、外部の専門家を雇って力を借りたりしているのだから。
だが、少し考えると、10%未満の成功率はそれほど驚くべき数字ではないように思えてくる。データ管理の現場の人間にとっては特にそうだろう。
われわれは、データガバナンスは高いデータ品質と同じように、PowerPointのプレゼンを見たり、詳細なホワイトペーパーを読んだからといって、実現できるわけではないことを知っている。その実現には、堅実な努力を重ねなければならない。
データガバナンスの取り組みの成功率が低いというガートナーの予測の主な根拠は、「文化的な障壁と上層部のサポートの欠如」だ。筆者もこうした見方に賛成だが、成功を阻む大きな要因はほかにもある。筆者が顧客と話す中で気づいたものを以下に挙げる。
仕事量の見積もりが甘い
経営陣のコミットメントを確保し、組織体制とプロセスを整備しても、必要な仕事を誰かがこなさなければ、データガバナンスは絵に描いたもちだ。例えば、次のようなさまざまな実務を伴う。定義と文書化を行うべきデータフィールドとビジネスアルゴリズム(データ処理ロジック)を決定する。それらの項目に優先順位を付ける。すべての関係者と話し合ってそれらの定義について同意を得る。意見の違いが残った場合に、ビジネスの観点から判断を行う。文書化を行う。こうした定義をアプリケーション、データベース、リポート、BIツールに実装する――。そしてしばしば見られるのが、「適切な人材がこれらの仕事の担当者に任命されていない」「担当者に適切な権限が与えられていない」「担当者が時間を取れない」「担当者が十分に確保されていない」といった問題だ。
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