この1本でスーパーヒーローに
マルウェア対策用USBメモリ携行の勧め
最低限必要な診断ツールやウイルス対策ツールをUSBメモリにまとめてポケットに忍ばせておけば、いざというときに対処できる。
医者や弁護士は、カクテルパーティーのような場では自分の職業をあまり人に明かしたがらないという話を聞いたことがある。それを耳にしたほかの出席者が病気や法律問題に関するアドバイスを求めて周囲に集まり、無料相談の輪が形成されてしまうからだ。昨今のパーティーでは、コンピュータセキュリティの分野で働いているとほのめかそうものなら、あっという間にそういった輪ができるのは間違いない。セキュリティ専門家が出席していると聞けば、誰もが動作の遅くなったPCや煩わしいポップアップウィンドウに関してアドバイスを求めようと思うのは無理からぬことだ。
情報セキュリティ専門家にとって、手元に本格的なツールセットがなくても、取りあえず応急対策を実施する必要がある、といったケースはよくある。本稿ではこういった場合のために、マルウェアに感染したマシンに対して利用できるポータブルなソフトウェアキットを作成する方法を紹介する。インターネットでは、無料で非常に有用なシステム分析ツールやマルウェア対策ツールがたくさん出回っている。これらのツールを安価な1GバイトのUSBメモリに保存しておけば便利だ。どこに出掛けるときでも(おしゃれなカクテルパーティーに出席するときでも)このUSBメモリを持ち歩くようにすれば、困った人々を助ける情報セキュリティのスーパーヒーローのようにさっそうと登場できるというわけだ。スーパーヒーローが携行すべき武器を以下にリストアップした。
アイテム1:ウイルス/スパイウェア対策ツール
まず必要なのは、システムをスキャンしてマルウェアを検出し、それをマシンから除去することができるウイルス/スパイウェア対策ツールだ。筆者のお気に入りの無償のウイルス対策スキャナは「ClamAV」だ(このツールは、Sourcefireが2007年に取得した)。ただし、シグネチャのアップデートは定期的にダウンロードする必要がある。
スパイウェア対策用として気に入っている無償ツールとしては、Lavasoftの「Ad-Aware」と「Spybot Search and Destroy」、そしてTrend Microの「HijackThis」などがある。商用ベンダー各社はこれらのツールの買収に乗り出しているが、今後も無償で提供され、高品質で最新状態が維持されるのであれば、使い続けても何の問題もない。
アイテム2:マシンアナライザー
Windowsシステムの詳細な分析ツールのソースとして特にお勧めしたいのがSysinternalsだ。同社は2006年7月、Microsoftに買収された。筆者は、いずれSysinternalsのツールの多くがWindows本体に統合されるものと期待しているが、それまでの間はこれらのツールをダウンロードして利用すればいい。必須のSysinternalsツールは以下の通りだ。
- 「Process Explorer」は、Windows Task Managerが本来備えるべき機能をすべて提供する。動作中のすべてのプロセスを表示し、これらのプロセスの関係の階層に加え、各プロセスが読み込んだDLLを示してくれる
- 「Filemon」と「Regmon」は、それぞれファイルシステムおよびレジストリに対するすべてのインタラクションをリアルタイムで記録する
- 「Process Monitor」は、Sysinternalsのツールセットに新たに追加されたプログラムだ。基本的に上記の3つのツールを統合したもので、マシンで動作中のすべてのプロセスを詳細に把握することができる
- 「Autoruns」プログラムは、システムの起動時あるいはユーザーがログオンしたときに自動起動されるプログラムをすべて表示する。スパイウェアは自動起動用ディレクトリやレジストリキーを操作することが多いため、このプログラムはマシンの状態を分析する際に不可欠だ
- 「TCPView」は、TCPとUDPポートの利用状況をグラフィカルに表示し、各ポートとそれを使用しているプロセスを関連付ける
- 「Strings」は、ファイルの文字列を画面上に表示する。コードの中に文字列を残したままにしておく不注意なマルウェアの作成者も少なくない。ASCII文字列が残されている場合も多く、StringsプログラムでUnicode文字列ではなくASCII文字列を検索するには、[-a]を付けて実行する
- 「RootkitRevealer」は、存在するファイルとレジストリキーに関して、システムが誤った情報を提供したかどうかを判定することでrootkitを検出する
これらのツール(そして補助ツールとして、特定のプロセス、DLL、ファイル名を探すための簡単な検索エンジン)から得られる洞察は、マシン上での不正な挙動を特定するのに役立つ。
アイテム3:MBSA(Microsoft Baseline Security Analyzer)
MBSAはMicrosoftが無償で提供する便利な診断ツールで、Windowsマシン上の何百項目にも及ぶ設定を調べ、そのセキュリティ状態を判定し、推奨設定を示してくれる。マルウェアの感染を招く恐れがある脆弱性(期限切れのパッチなど)を洗い出す機能もある。筆者は「Netcat」というツールも持ち歩いている。これは定評のあるネットワーク通信ウィジェットで、TCPコネクションあるいはUDPポートを通じて任意のデータを送信できる。ファイル(MBSAやClamAVが生成したリポートなど)をやりとりしたり、リモートシェルアクセスを実現したりすることも可能だ。
アイテム4:LADS(List Alternate Data Streams)
フランク・ハイネ氏が開発したフリーウェアツールのLADSは、NTFSベースのファイルシステム上で代替データストリーム(ADS)を検索する。ADSはファイルを隠すことのできるファイルで、攻撃者が悪意のあるコードを隠ぺいするために用いることがある。Windows Vistaには、「dir」コマンドを「/r」フラグと組み合わせることによってADSを表示できる新しいオプションが追加されている。現実にはVista以前のマシンがまだ多いため、LADSのようなツールも必須のアイテムの1つだ。
アイテム5:VMware Player/VMwareセーフブラウジングアプライアンス
VMware Playerは無償の仮想化アプリケーションで、Windowsマシン上でゲストマシンを動作させることができる。VMware Browser Applianceには、無償のUbuntu(DebianベースのLinuxディストリビューション)とFirefoxが含まれる。
追加ツールをダウンロードするために、インターネットにアクセスしなければならない場合もある。ほかに適当なマシンが手元にない場合には(カクテルパーティーの会場にはないだろう)、トラブルに見舞われているマシンにVMwareをインストールすればいい。そうすれば、仮想マシンを使ってインターネットにアクセスできる。
マルウェア対策用のUSBツールキットを作成したら、必ずリードオンリーに設定しておくこと。USBメモリの多くは、リードオンリーアクセス用の小さなハードウェアスイッチを備えているので、このスイッチを入れておくように。ツールキットにマルウェアが感染したら大変だからだ。筆者は、リードオンリーアクセスをハードウェア的にサポートしないUSBメモリは購入しないようにしている。
最後に付け加えると、USBツールキットに含めるツールを、本記事で紹介したものだけに限定する必要はない。ニーズに合わせて、ほかのコンポーネントも自由に追加してツールキットを充実させていただきたい。ただし、ツールの機能を理解せずに何でもかんでもUSBメモリに詰め込んだりしないように。ツールの使用法を誤ると、さらに大きな被害をマシンに与えることにもなりかねない。ラボで実験用マシンを使ってツールの使用法を練習し、感染したマシンの修復で各ツールがどんな役割を果たすのかよく理解しておくこと。きちんと準備し、練習を積み重ねておけば、いざというときにマルウェア対策USBメモリがきっと役立つだろう。
本稿筆者のエド・スコウディス氏は、情報セキュリティコンサルティング会社Intelguardiansの創業者で、同社の上級セキュリティコンサルタントを務める。専門分野はハッカーの攻撃と防御対策、情報セキュリティ業界、コンピュータプライバシー問題など。「Counter Hack Reloaded」(Prentice Hall)や「Malware: Fighting Malicious Code」(Prentice Hall)などの著作がある。同氏は2004年、2005年、2006年にセキュリティ分野のMicrosoft MVPを受賞したほか、Honeynet Projectにも携わった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー