Microsoft、新CIOに社内刷新を期待:ITベンダーのCIOに求められる役割とは
Microsoftの新CIOに起用されたトニー・スコット氏は、元Walt DisneyのCIO。同氏には、一般のCIO以上の責任と手腕が求められている。
米Microsoftは2008年1月、新CIOにトニー・スコット氏(56)を起用すると発表した。同社の世界販売、マーケティング、サービス事業、エンタープライズシステム、ビジネスアプリケーションを統括することになる。
Microsoftによると、Walt DisneyのCIOだったスコット氏は、会社の方針に違反したとして20007年11月に解雇されたスチュアート・L・スコット氏(親せき関係はない)の後任となる(具体的に何の方針に違反したかをMicrosoftは明らかにしていない。スチュアート・スコット氏はすぐに住宅ローン会社の米Taylor, Bean & Whitaker Mortgageで職を見つけた)。
しかしMicrosoftの新CIOは、普通以上の意味でMicrosoftのポリシーに目を配らなければならないだろうと、IT業界に詳しい関係者は言う。CIOには頭の痛くなるような責任は付き物だが、大手IT企業のCIOにはちょっとした演技力と相当のマーケティング手腕も求められる。
「大手コンピュータシステムベンダーのCIOは、ただでさえ困難なCIOの仕事の中でも特に困難だ。ほかのCIOがやるべき仕事に加え、自社製品を披露するという意味を持たせながら仕事をする必要がある。自分が本当にその製品を使いたいと思っているかどうかは関係ない」。調査会社米Illuminataの主席ITアドバイザー、ゴードン・ハフ氏はこう指摘する。
同氏によれば、その好例はHewlett-Packard(HP)とIBMのIT業務だ。両社とも近年、顧客に売り込むベストプラクティスを示すものとして、社内プラクティスにスポットを当てる取り組みを進めてきた。
「どこのメーカーでも、CIOは自社の業務に目を向けて、それがMicrosoftだろうがIBMだろうがHPだろうが『なるほど、わが社の製品でこんなことができるのか。これは本当に素晴らしい』と言わなければならない」とハフ氏。
一般的なCIOの職務に加え、MicrosoftのCIOは顧客のためにソフトウェアをプロデュースする。Forrester ResearchのCIO部門アナリスト、フィル・マーフィー氏によると、例えばMicrosoftはパートナーと協力して、プラットフォームを問わないサードパーティー製ソフトを作っている。Microsoftの場合は、CIOの責任がこうした商用ソフトにまで及ぶ。
マーフィー氏は言う。「単純に一部の社内ユーザーを満足させようとするのと、商用ソフトに携わっているのとではまったく次元が違う。もう1つ大きいのは、Microsoftの社内ユーザーなら相当の知識を持っているだろうということだ。間違いなく簡単な仕事ではない」
スコット氏はDisney入りする以前はGeneral Motors(GM)の最高技術責任者(CTO)、Bristol-Myers Squibbの業務担当副社長を歴任している。
実際、この職務のマーケティング的側面は、スコット氏の直属の上司となるMicrosoftの最高業務責任者(COO)、ケビン・ターナー氏もはっきりと口にしている。ターナー氏は、スコット氏にITの経験と人前で話す経験を生かしてCIO顧客を取り込んでほしいと表明した。
ターナー氏は1月17日の発表に当たり「当社事業の成功において、そして市場の中で顧客に新技術と先端技術をどう届けるかにおいて、当社のITシステムと業務は重大な役割を果たしている」とコメントし、次のように述べている。
「世界規模のIT部門運営に加え、トニーとITチームは社内全体で当社のソリューションと実装を推し進め、製品部門に貴重なノウハウや意見を提供してくれるだろう。第3に、世界中のCIOと交流・協力し、当社の顧客およびパートナーと定期的にベストプラクティスを共有する役割をトニーに期待する」
Microsoftは最近、重要な幹部ポストを外部から迎えた人材に担わせる傾向があり、スコット氏を選んだのもその一例だとみるアナリストも多い。
スコット氏を採用する前の週、MicrosoftはJuniper NetworksのCOOだったスティーブン・エルソップ氏を、生え抜きのジェフ・レイキス氏の後任としてビジネス部門社長に据えた。Ask.comのCEOを務めていたスティーブ・バーコウィッツ氏は2006年、オンラインサービス事業部の責任者に就任している。その前年にはGroove Networks創業者のレイ・オジー氏を最高技術責任者(CTO)に抜てきし、Microsoftとして恐らく最も劇的な形で企業文化刷新の必要性を認めた。
スコット氏は、現状を刷新できる人物との評判を携えてMicrosoft入りした。発表によれば、同氏はDisneyで情報システムの信頼性向上や従業員の士気向上といった大規模な改革を主導した。
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