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OSを仮想化アーキテクチャに適合させるために克服すべき課題【前編】Microsoftの仮想化計画は?

x86ベースコンピューティングアーキテクチャのOSを仮想化ベースコンピューティングアーキテクチャに適合させる上での課題を、2回にわたって解説する。

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 メインフレーム分野の技術として生まれた仮想化が異なる分野で新たな進化を遂げているように、OSもハイパーバイザーと仮想アプライアンスソフトウェアという形で生まれ変わりつつあり、この流れは今後も進んでいくだろう。こうしたOSの変化はユーザーにメリットをもたらすだろうが、その過渡期においては変化のプロセスが難航する可能性がある(ひょっとするとWindowsの方がLinuxよりも難航するかもしれない)。そこで注目されるのが、Microsoftがどのような手を打つかだ。

 この重要な変化がITの世界にもたらす課題を2回にわたって取り上げる。

 次世代のOSがその可能性をサーバ仮想化環境でフルに発揮するには、その前提として幾つかの重要な課題や問題がクリアされていなければならない。それらの中には、仮想アプライアンスのパッケージングと堅固性の問題、Microsoftのビジネス防衛策、業界標準策定などが含まれる。

仮想アプライアンスにおけるOSのパッケージング

 仮想アプライアンスの利用を促進するには、サーバ仮想化ベンダーとOSベンダーが協力し、仮想マシン上で動作させる特定のアプリケーションに合わせて既存OSをスリム化してカスタマイズするプロセスを構築しなければならない。アプリケーションを効果的にサポートするのに必要なOSコンポーネントだけを仮想アプライアンスに含めれば、ベンダーはそのサイズとセキュリティリスクを軽減しながら効率性とアプリケーションパフォーマンスを高めることができる。

 こうした「JeOS」(Just Enough Operating System:必要最小限のOS)という考え方は従来のソフトウェアアプライアンスの開発で利用されてきたが、仮想アプライアンスにも同様に当てはまる。

 だが、仮想アプライアンスの作成にJeOSの考え方をどのように生かすかという点では、大きな問題が残っている。例えば、スリム化されて特定アプリケーションに特化した仮想アプライアンスOSを誰が定義し、開発し、パッケージングするか。そうしたOSのサポートと保守に誰が責任を持つかといった問題だ。

LinuxのJeOS実装

 Linuxやそのほかの非プロプライエタリOSの場合、サーバ仮想化ベンダーとOSベンダーは、アプリケーションプロバイダーと協力してこれらの問題に答えを出さなければならない。少なくとも2社の商用OSベンダー(OSV)が、JeOSの独自の実装を既に開発、サポートしている。Ubuntuが「Ubuntu JeOS」(発音は「Juice:ジュース」)を、Red Hatが「Red Hat Appliance OS(AOS)」を提供中だ。アプリケーションプロバイダーはこうしたOSVがJeOSを提供することを期待できるほか、自ら責任を持ってJeOSを開発、サポート、保守することもできる。

 そうした作業が容易に行えるように、仮想アプライアンス用のJeOS型OSを開発し、パッケージングするための自動化されたツールやプロセスが多数利用できるようになれば理想的だ。既にrPathやNovellなど数社が提供する製品により、ISVは自社アプリケーションをスリム化されたLinuxディストリビューションと組み合わせて仮想アプライアンスで動作させ、ブラウザインタフェースでその構成と保守を行えるようになっている。また、LinuxベースではないJeOSの実装も少なくとも1つある。BEA Systemsの「BEA Liquid VM」だ。これは仮想化に最適化されたJava仮想マシンであり、Javaアプリケーションが仮想化レイヤー(現在のところ、「VMware ESX Server 3」と「同ESX Server 3i」のハイパーバイザー)上で直接動作するように設計されている。

 Linuxは、仮想アプライアンスで動作するアプリケーションに合わせてスリム化し、カスタマイズするOSとしてうってつけに見える。一方、Windowsは事情が異なっている。Windowsが仮想アプライアンスで活用されるようになるためには、MicrosoftはWindowsのスリム版をISVが構築できるようにするか、あるいは自社でスリム版を構築しなければならない。2007年半ばにMicrosoftは、Windows Server 2008のServer Coreインストールオプションを発表し、この両方のアプローチを採用する方針を示した。

MicrosoftのServer Coreインストールオプション

 Server Coreインストールオプションでは、顧客やISVは特定のサーバ機能、例えばActive Directory、DNS、ファイル/プリントサーバなどに対応した最小限のWindows環境を構築できる。フェイルオーバーやロードバランシング、バックアップといったオプション機能もサポートされている。

 Microsoftはこれらがインストールされた環境を、管理者がMicrosoft 管理コンソール(MMC)やターミナルサービスリモートデスクトップなど、幾つかの一般的な手段のいずれかでリモート管理できるようにしている。Server Coreインストールオプションは仮想アプライアンスの構築と配布に役立つ。使用ディスク容量を削減し、管理や保守の要件を軽減するからだ。

 Server Coreインストールは正しい方向への一歩だが、Microsoftは仮想アプライアンスに関する計画を明確に打ち出す必要があるとわれわれは考えている。その計画にはMicrosoftの仮想化のロードマップと市場計画という次の問題がかかわってくる。

Microsoftは仮想コンピューティング環境にどう適応するのか

 過去の例から見て、MicrosoftはWindows Serverが強みを持つ市場を守るとともに継続的に拡大していくために、積極的な施策を講じるだろう。例えば、まずMicrosoftは、独自のハイパーバイザーである「Windows Server 2008 Hyper-V」を、Windows Server 2008のリリースから6カ月以内に提供開始する。これまでの発表によると、同社は顧客がWindows Server 2008の一部として、あるいは単体の仮想化サーバとして、Hyper-Vのライセンスを取得できるようにする。これによってMicrosoftは多くの顧客の環境におけるハードウェアとアプリケーションの間の重要なレイヤーに対するコントロールを維持できるだけでなく、非Windows環境を利用する企業に同社のサーバ仮想化ソフトウェアを販売することもできる。

 Microsoftの単体のHyper-Vは、主要なサーバハードウェアプラットフォームにバンドルされるほか、企業ユーザーにソフトウェアアドオンとして低料金で直接提供されるだろう。またMicrosoftは、大口優良顧客にライセンスとサポートの魅力的な条件を提示し、データセンターの大部分をWindows Server 2008とHyper-Vで統一するよう勧める可能性が高い。

MicrosoftとCitrix

 こうした製品関連の施策を進めるだけでなく、MicrosoftはCitrixと提携し、Windows Server 2008 Hyper-Vと「Citrix XenServer」のXenハイパーバイザーの間で仮想マシンを移行できるようにすることに取り組んでいる。また、WindowsプラットフォームとLinuxプラットフォームの相互運用性を促進するため、MicrosoftはハイパーコールAPIやVirtual Hard Disk(VHD)フォーマットなど、仮想化に関連する主要な開発コンポーネントとパッケージングコンポーネントを同社のOpen Specification Promise(OSP)の適用対象に含めている。

 OSPでは、サードパーティーがMicrosoftの仮想化技術のコンポーネントを無料で変更して実装できることが規定されている。Citrixは、顧客がCitrix XenServerとWindows Server 2008 Hyper-Vの間で仮想マシンを容易に移行できるツールを開発中だ。こうした取り組みは、Microsoftの仮想化製品にとどまらず、Windows Server 2008全体の市場を拡大することにも貢献するとみられる。

 1つ確かなことがある。Microsoftが今後も企業顧客とのビジネスを守り、拡大するための施策を活発に展開していくことだ。

 後編に続く。

本稿筆者のジェフ・バーン氏は、Taneja Groupの上級アナリスト兼コンサルタント。主にサーバ仮想化市場を専門としている。Taneja Groupに入社する前は、VMwareでマーケティング担当副社長、次に企業戦略担当副社長として5年以上勤めた。それ以前にはMIPS、HP、Novellなどの企業のマーケティング幹部などを務めた。

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