満たされないユーザーニーズ
VMware vCloud Expressがいまいちはやらない理由
VMwareのクラウド事業者向けプログラム「VMware vCloud Express」の不振が続いているようだ。その理由をサービスプロバイダーが明かす。
VMwareが「VMware vCloud Express」を発表してから2年が経過したが、このサービスプログラムは低迷しているようだ。エンドユーザーの関心が低く、プロバイダーにとって魅力的な収入源ではないことが響いている。
vCloud Expressは2009年に、VMwareのユーザー企業を顧客に抱えるマネージドホスティングプロバイダーが、Amazon.comのAmazon Web Services(AWS)風のクラウドサービスを提供する方法として発表された。vCloud Expressによるクラウドサービスでは、完全に自動化されたセルフサービス型の柔軟なオンデマンドコンピューティングインフラが、APIやWebポータルを通じて提供される。このクラウドサービスは、仮想化されたエンタープライズインフラのほとんどと互換性があり、プロバイダーが企業のIT部門に対し、テストや開発などへのクラウドの利用を促進できる方法として宣伝されていた。
しかし、vCloud Expressには発表当初、サービスプロバイダー5社が参加していたが、このうち今も引き続き参加しているのは2社にすぎない。当初の5社はTerremark、Hosting.com、Logica、Melbourne IT、BlueLockで、残ったのはTerremarkとHosting.comだ。また、vCloud Expressが発表されてから、このプログラムに新たに加わったのはVirtacoreだけだ。
これら3社は、さまざまなクラウドコンピューティングサービスを展開しているが、vCloud Expressは成功には至っていないようだ。BlueLockはVMwareの強力なパートナーであり、vCloudに積極的に取り組んできたが、vCloud Expressサービスを打ち切り、より複雑なvCloud Datacenter Servicesを提供するようになっている。
vCloud Express失敗の背景
BlueLockはその理由について、「vCloud Expressで提供できるよりも多くの機能を、企業がクラウドに求めていることが分かったため」と説明した。BlueLockはVMwareから、vCloud Datacenter Servicesを提供するよう持ち掛けられ、この取り組みに集中することを決めたと、BlueLockの担当者は話している。
BlueLockは、vCloud Datacenter Servicesは、複雑なクラウドニーズを抱える企業がITニーズの変化に応じて迅速に行動し、未知の事態に対応し、社内外の適切な場所にあるITリソースを活用できるようにするクラウドコンピューティングインフラサービスであり、VMwareに認定されたプロバイダーによって提供されていると説明している。
vCloud Expressサービスでは、ユーザーはサーバとストレージを自社でプロビジョニングできるにすぎない。これに対し、vCloud Datacenter Servicesは、既存のオンプレミスVMwareアプリケーションと互換性があり、より完全な“仮想データセンター”に加え、vApp(仮想アプリケーションコンテナ)との互換性や、LDAPのようなディレクトリサービスとの統合を提供する。このため、企業はvCloud Datacenter Servicesに既存の管理システムを適用でき、このサービスを、オフサイトでホストされるセミプライベートクラウド環境のように扱える。
vCloud Expressサービスを打ち切った他のプロバイダーは、vCloud Datacenter Servicesに移行していないが、これらのプロバイダーからも、vCloud Expressサービスでは顧客を獲得しにくいとの声が出ている。Melbourne ITは6月にvCloud Expressサービスから撤退し、自社の中核顧客であるSMB(中堅・中小企業)からの関心が低いことを理由に挙げた。サーバやストレージをプロビジョニングできるようにするサービスのSMB市場では、AWSやRackspaceのサービスが優位を占めている。
Melbourne ITは、2011年7月1日付でvCloud Expressサービスの全アカウントと関連データを削除しており、将来のいずれかの時点でvCloudベースのエンタープライズクラウドサービスを開始する計画を表明している。だが、そのサービスが、BlueLockが提供しているようなvCloud Datacenter Servicesかどうかは明らかにしていない。
一方、TerremarkはvCloud Expressサービスを提供中だが、同サービスのフォーラムの利用は低調だ。週2回くらいの頻度で少しずつエンドユーザーの投稿がある程度で、人気サービスのフォーラムで見られる活発なやりとりは行われていない。この記事のために取材したところ、Terremarkはコメントはないとしている。
ユーザーの不満は明らか
「クラウドコンピューティングによるコスト削減といううたい文句と、VMwareの時として複雑な料金設定には、相反する面がある」という不満の声がよく聞かれる。
「数社の顧客をこの優れたプラットフォームに移行させたいと考えたが、ポートを開くごとに発生する追加費用を正当化できなかった」。あるベンダーの担当者は、VMwareの料金モデルについてそう語った。同社のモデルは、通信帯域やストレージ、CPU時間などに加え、仮想マシン(VM)へのアクティブなポート接続ごとに課金するというものだ。1台のVM(例えば、Webサーバ用など)で4つの標準ポートを開くと、ユーザーが実行するVMごとに月額28ドルの追加費用が掛かる。
VMwareとは異なり、AWSやRackspaceの料金モデルでは、個々のVMについてより高い柔軟性が提供される(ただしもちろん、ユーザーが利用サービスを増やせば、途端に料金が加算される)。VMwareの料金モデルは、vCloud Expressサービスを試そうという開発者の意欲をそいでしまいかねない。このサービスの価格は、各プロバイダーが同社の料金モデルを踏まえて設定するからだ。
Hosting.comはvCloud Expressサービスを、スタンドアロンのパブリッククラウドサービスとして打ち出していない。同社のvCloud Expressサービスにアクセスするには、月額基本料金が掛かる同社のエンタープライズクラウドサービスのいずれかをあらかじめ契約しておく必要がある。
Logicaは、vCloud Expressの発表から8カ月後の2010年3月、同社のWebサイトからVMwareのサービスに関する記載を全て削除した。LogicaはvCloud Expressプログラムから脱退しただけでなく、広く知られていたVMwareとの提携を解消したのかもしれない。Logicaにコメントを求めたが、回答は得られていない。
vCloud Expressの行方はいかに
vCloud Expressプログラムに2011年4月に加わり、同プログラムの最後発のプロバイダーとなったVirtacoreは、米国バージニア州に本社を置き、VMwareとパートナーを組んでいる中規模のマネージドサービスプロバイダー(MSP)だ。Virtacoreは、同社のvCloud Expressサービスは、他にほとんど類を見ないとして宣伝している。「vCloud Expressサービスを提供するグローバルプロバイダーは2社しかなく、その1社がVirtacoreだ」と同社は強調している。VMwareは、vCloud Expressプログラムへのプロバイダーの参加を引き続き受け入れていると述べている。また、VMwareのクラウドサービスプロバイダーパートナープログラムは大きな支持を得ており、これまでに5100社以上のプロバイダーが参加しているという。
「われわれは、vCloud Expressを含む全てのVMware vCloudプログラムのサービスプロバイダーパートナーを継続的に評価している」と、VMwareのプロダクトマーケティングディレクター、ジョー・アンドルーズ氏は語った。VMwareは、vCloud Expressは順調に継続されていると述べたが、vCloud Expressサービスの総ユーザー数や、同プログラムの今後の計画は明らかにしなかった。「われわれは、vCloudイニシアチブに基づくサービス全体の集客力を測定している。その結果は非常に良好だ」と、アンドルーズ氏は電子メールで述べた。
VMwareは、vCloud Expressサービスの主要なユーザーは、開発者の他、小規模なインフラを柔軟に展開する必要がある組織であり、小規模企業がこのサービスを導入してきたと説明している。同社はvCloud Expressサービスの主な強みとして、既存のVMware VMのワークロードとの互換性を挙げている。
しかし、その互換性は、AWSなど他のパブリッククラウドサービスの何万人ものユーザーにとっては、あまり重要ではないようだ。vCloud Expressとは異なり、これらのサービスは急速に成長している。VMwareのパブリッククラウドサービスは今後、活況を呈するのか。あるいは停滞を続け、MSPやホスティングプロバイダーは、企業の需要が実際にありそうな、より複雑なハイブリッド/プライベートサービス(VMwareベースまたはそれ以外の)に乗り換えるのか。
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