クラウドでビッグデータ分散処理も可能
Hadoop技術解説 注目の背景にはクラウドの普及
大量データを使用するアプリケーションの増加やクラウドの普及により、多くの企業で注目されているHadoop。その技術を詳しく解説するとともに、導入・運用を支援するベンダーの動向を紹介する。
オープンソースの「Hadoop」は、多数のサーバを使った“ビッグデータ”アプリケーションの分散データ処理を可能にする。この技術は、クラウドでの分散並列処理によって冗長性と強力なアプリケーションパフォーマンスを実現し、障害を防止するという考え方に基づいている。
HadoopはApache Software Foundationのオープンソースプロジェクトの1つであり、米Google、米Yahoo!、米AOL、米Facebookといった企業のニーズから生まれた。こうした企業は、分散されたサーバ上の膨大なデータセットへのアクセスを日々サポートする必要がある。
しかし、2つの要因から、Hadoopは多くの企業で必要かつ利用可能なものになっている。その1つは、非常に大規模なデータセットを使用するアプリケーションが増えていること。もう1つは、搭載プロセッサ数が合計数百あるいは数千個に上る分散サーバをほぼ無尽蔵のストレージとともに提供するクラウドが利用できるようになってきたことだ。
Hadoopはクラウド上で、こうした多数のサーバによる分散並列処理を実現し、ジョブを迅速に完了させる。Hadoopを使えば、小売りチェーンが店頭での数百万件の購入からトレンドを探るために行うデータマイニングや、情報機関が幅広いソースから公安情報を収集して行うテロリストの行動パターン分析など、さまざまなシナリオにおけるデータの探索や処理のパフォーマンスを大幅に向上させることができる。
Hadoopによる分散データ処理を支えるHDFS
Hadoopは、分散ファイルシステム「HDFS(Hadoop Distributed File System)」と、コンピュータクラスタ上で大規模データセットを分散処理するためのソフトウェアフレームワーク「MapReduce」などで構成されている。
HDFSはHDFSクラスタから成り、各クラスタはそれぞれ1つ以上のデータノードを含んでいる。並列処理が行われるように、入力データはセグメントに分割され、データノードに分散される。さらに、各セグメントは複数のデータノードに複製される。ノードに障害が発生しても、処理を継続できるようにするためだ。
耐障害性を高めるため、コピーは、複数のラック上にあるデータノードに配置される。デフォルトでは複製は3回行われ、セグメントの2つのコピーは同じラック上のノードに配置され、もう1つのコピーは別のラック上のノードに配置される。
HDFSは、一部のタイプの障害に対して耐性があるが、完全にフォールトトレラントなわけではない。HDFSでは、1つのネームノードを1台のサーバに配置する必要がある。このサーバがダウンすると、ファイルシステム全体が停止してしまう。セカンダリネームノードがこのプライマリネームノードを定期的にバックアップするが、バックアップデータは、プライマリネームノードの再起動に利用できるものの、オペレーションの維持には利用できない。
Hadoop環境では一般的にHDFSが使われるが、サポートされている分散ファイルシステムは他にもある。米MapR Technologiesは最近、Hadoop互換のファイルシステムを発表した。このファイルシステムには新しい機能が導入されており、その1つとして、HDFSに存在する単一障害ポイントを解消する分散ネームノードがある。
Amazon S3のファイルシステムも使えるが、このファイルシステムは、データセグメントの位置情報を保持しない。このため、サーバやラックの障害に対するHadoopの耐性を低下させる。しかし、オープンソースのCloudStoreや、MapRのファイルシステムなど、位置情報を保持するファイルシステムはHDFS以外にもある。
分散データ処理を管理するMapReduceエンジン
MapReduceは、1つのジョブトラッカーと複数のタスクトラッカーで構成される。クライアントアプリケーションはジョブトラッカーにジョブを提出し、ジョブトラッカーは各ジョブをタスクトラッカーノードに割り当てる。位置を認識するHDFSなどのファイルシステムが使われている場合、ジョブトラッカーは各データセグメントの位置を考慮に入れる。具体的には、要求されたデータが配置されているのと同じノードに処理を割り当てようとする。
各タスクトラッカーは、設定された数のタスクの同時処理をサポートする。データと同じノード上のタスクトラッカーに追加タスクを割り当てられなくなると、ジョブトラッカーは、データと同じラック上のノードに処理を割り当てようとする。この方式は、データセンターのバックボーンネットワークのトラフィックを最小化し、ラック内で提供される広いネットワーク帯域を利用するのに役立つ。
タスクトラッカーは、1つのタスク障害でタスクトラッカー全体がクラッシュしないように、独立したJava仮想マシン(JVM)を作成する。タスクに障害が発生すると、タスクトラッカーはジョブトラッカーに通知し、ジョブトラッカーはそのタスクを他の場所に割り当てる。タスクトラッカーに障害が発生すると、それに割り当てられていたタスクは全て再割り当てされる。ジョブトラッカーは処理の進行状況を定期的にチェックしており、ジョブトラッカーに障害が発生すると、新しいジョブトラッカーが起動し、最後のチェックポイントから処理を開始する。
各MapReduceタスクの出力は、以降の処理のために他のタスクの出力と結合される。複数のタスクの出力が結合されるため、大量のデータがより少数のプロセッサに送られる。次のフェーズの処理が行われるノードにデータが集中すると、ネットワークスイッチに負荷が掛かる。スイッチは、パケットをブロックまたはドロップすることなく、こうした転送をサポートできなければならない。
Hadoopの導入、運用を支援するベンダー
HadoopソフトウェアはApacheサイトからダウンロードできるが、さまざまなベンダーがHadoopの導入とサポートを容易にする製品やサービスを提供している。以下ではそれらの例を紹介する。
米Hortonworks
Yahoo!からのスピンオフ企業。主要なHadoopコンポーネントを設計、実装した元Yahoo!社員の多くを擁している。Hortonworksの「Hortonworks Data Platform」は、オープンソースのHadoopソフトウェアコンポーネントがパッケージ化されたテスト済みのセット。HortonworksはHadoopユーザー向けのサポートとトレーニングも提供している。
米Cloudera
「CDH」と「Cloudera Enterprise」を提供している。CDHは、オープンソースのHadoopコンポーネントが統合されたテスト済みパッケージで、無料でダウンロードできる。Cloudera Enterpriseはサブスクリプションベースの製品で、オープンソースのHadoopコンポーネントに加えて管理アプリケーション「Cloudera Manager」と、Clouderaスタッフによるサポートが含まれる。Clouderaは、自社製品が顧客の社内データセンターとパブリッククラウド(Amazon EC2、Rackspace、SoftLayer、VMware vCloudなど)のどちらで使われる場合でもサポートを提供している。また、Hadoopに関するトレーニングとプロフェッショナルサービスも手掛けている。
米EMC
MapRと提携し、「Greenplum HD Community Edition」「Greenplum HD Enterprise Edition」「Greenplum HD Module」を提供している。Community Editionは、オープンソースのApache Hadoopコンポーネントのテスト済みのセット。Enterprise Editionは、Apache Hadoopスタックのインタフェース互換の実装。Enterprise Editionでは、HDFSに代えてMapRのファイルシステムが採用されている。このファイルシステムでは、高可用性機能が強化されている他、計算集約型アプリケーションを高性能プロセッサ搭載サーバに配置できるように、データ配置を管理する機能が導入されている。また、EMCは、Enterprise EditionはApache Hadoopよりもはるかにパフォーマンスが高いとしている。Greenplum HD Moduleは、データコプロセッシングHadoopアプライアンスモジュール。
米IBMと米Dell
統合されたHadoopパッケージを提供している。IBMは「InfoSphere BigInsights Basic Edition」と「InfoSphere BigInsights Enterprise Edition」を提供しており、DellはClouderaとの提携に基づき、Cloudera Enterpriseを提供している。
Hadoopのサポートを強化しているソフトウェアベンダーもある。米MicrosoftはHortonworksと提携し、Windows環境へのHadoopの移植を進めている。米Oracle、米Sybase、米Informaticaは、いずれもHadoopのサポート計画を発表している。
Hadoopへの関心は今後も高まると予想される。統合されたテスト済みのディストリビューションや、ベンダーの製品、サポート、トレーニングが提供されるようになってきたため、企業にとってHadoopの導入と運用はより容易になっている。こうした要因に加え、大量データの分析ニーズの高まりや、パブリックおよびプライベートクラウドが利用可能になってきたことからみて、Hadoopは広く普及する可能性が高い。
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