VDIがPC市場で占める割合は2015年までに8~12%
安価になり導入進むか? デスクトップ仮想化2012年の動向
アナリストによれば、VDI(仮想デスクトップインフラ)は依然として小規模でニッチな市場ではあるが、2012年にはこれまでよりも多くの大企業がVDIを検討するという。
VDI(仮想デスクトップインフラ)がPCに取って代わることは、2012年といわず、この先もずっと起こらないだろう。VDIはこれまで「IT管理者がリモートデスクトップにアプリケーションを配信するための数多くの選択肢の1つ」にすぎなかったし、今後もそれは変わりそうにない。
実際、IT部門は2012年にはiPadやスマートフォンなど各種の携帯端末にアプリを配信する仕事に心を砕くことになりそうだ。クラウドホスト型の仮想デスクトップやサーバホスト型のVDIも含め、IT管理者はさまざまなタイプのデスクトップ仮想化技術を使用してエンタープライズアプリを配信することになるだろう。
「今後はWindowsデスクトップの配信よりも、ナレッジワーカーが持ち歩くあらゆる携帯端末へのアプリの配信に重点が移行していくだろう」と米調査会社The Taneja Groupで上級アナリストを務めるデイブ・バートレッティ氏は指摘している。
2012年のVDI
業界の専門家はここ何年間か、「いずれはVDIがすっかりPCに取って代わることになるだろう」と予想してきた。だがそうしたことはまだ起きておらず、その手の未来予測は徐々に廃れてきている。(The 451 Groupの調査ディレクター、レイチェル・チャーマーズ氏は「2012年は『今年はVDIの年になる』と言われ始めてめでたく5周年だ」と冗談めかして語っている)。
もっとも、アナリストにはVDIが従来のPCに取って代わると予想するだけの十分な理由があった。理論的には、VDIはIT部門にとって非常に理にかなった選択肢だ。実際、VDIは例えばリモートアクセス、セキュリティ、コンプライアンス、そして最近急速に広まりつつあるBYOPC(Bring-Your-Own-PC、個人所有のPCを職場に持ち込むこと)のトレンドなど、さまざまなニーズを解消してくれる。だがVDIに対する期待は資本支出(CAPEX)、複雑さ(complexity)、接続性(connectivity)という「3つのC」によって曇らされると米調査会社Gartnerのクライアントコンピューティングアナリスト、マーク・マーゲビシャス氏は指摘する。
つまり、何年かの間に改善が施されたとはいえ、サーバホスト型のVDIは依然PCよりもコストが掛かり、PCよりも実装が難しく、またクライアントハイパーバイザーがなければオフラインで仮想デスクトップにはアクセスできないということだ。
だがVDIは2011年に成熟し始め、粗削りな部分が一部解消され出した。米Citrix Systemsと米VMwareはそれぞれ2011年、多数の買収を行い、VDI製品の拡充を果たした。Citrixは2011年、アプリ仮想化ソフトの新版「XenDesktop 5.5」とともにクライアントハイパーバイザーの新版「XenClient 2.0」をリリースし、オフラインでの利用を可能にしている。VMwareはデスクトップ仮想化ソフトの新版「VMware View 5」でようやくプロファイル管理機能を追加し、PCoIPプロトコルにも大幅な改善を施した。CitrixのXenDesktop 5.5では、管理の大幅な簡素化も図られている。
さらにCitrixは2012年には高品位なユーザー体験を実現するHDXテクノロジーをチップ化した「HDX System-on-a-Chip(SoC)」などの新製品をリリース予定であり、そうした新製品により、VDIのコストを標準的なデスクトップPCのコストと同程度にできると主張している。2012年5月に開催のCitrix Synergy 2012までに、CitrixはVDIをPCより安価にすらできるかもしれない。「ただしディザスタリカバリ(DR)と事業継続性(BC)関連の機能を削らない限り、それは不可能だろう」と米技術コンサルタント会社Entelechy Associatesの創業者であり主任アナリストのサイモン・ブラムフィット氏は語っている。
VDIは改善されてきてはいるが、まだ改善の余地は他にもある。ITプロフェッショナルによれば、VDIはもっとインストールしやすくできるはずであり、より強力で高性能な仮想デスクトップの登場に期待しているという。またVDI製品にはフルスタックの構成に必要な要素が全て含まれているわけではないため、サードパーティー製品を追加しなければならず、その結果、コストや複雑さが増すという欠点もある。
そこで2012年には業界の整理統合が進むことが予想される。「CitrixやVMware、Questなどの企業は今後もスタートアップ企業の買収を進め、各社の技術を次世代製品に組み込んでいくだろう」とブラムフィット氏。
整理統合はシンクライアントハードウェアの業界でも進む見込みだ。ブラムフィット氏によると、利益幅の縮小や製品差別化の失敗により、少なくとも1社のシンクライアントベンダーが倒産する見通しという。「一部のシンクライアント製品にとっては、CitrixのHDX SoCのリファレンスアーキテクチャをベースとした低コストの新しいゼロクライアントがとどめの一撃となりそうだ」と同氏。HDX SoCを搭載する端末の第1弾は2012年初頭にリリースされる予定であり、中には100ドル以下のゼロクライアントも含まれる見通しだ。
CitrixやVMwareは各種の要素を寄せ集めてVDIのフルスイートを提供しているが、The Taneja Groupのバートレッティ氏によれば、2012年にロックダウンのWindowsデスクトップを提供する必要がある企業は既存のオールインワンソリューションに頼ることになりそうだ。
「今後もVDIのワンストップ提供が優勢を誇ることになるだろう。まだロックダウンのWindowsデスクトップを提供する必要があるクライアントにとって、Kaviza(現在はCitrix傘下)やVirtual Bridges、Desktoneなどのプロバイダーが提供するオールインワンソリューションは今後、社内でVDIインフラを構築するよりもますます魅力的な選択肢となっていくだろう」と同氏は言う。
DaaS(Desktop as a Service)では仮想デスクトップをクラウドからホスティングすることで管理の複雑さが解消されるため、2011年には米DesktoneのDaaSモデルも注目を集めた。ただし、このモデルにはまだコストと接続性の問題が残っている。「顧客はMicrosoftのWindowsライセンス料に加えて月額のホスティング料金を支払わなければならず、またデスクトップにアクセスするのにインターネット接続が必要だ」とマーゲビシャス氏は指摘している。
2012年にはこれまでよりも多くの大企業がVDIの検討するだろう
サーバホスト型のデスクトップ仮想化技術に関しては、「今後も一部の向きにとっては重要な選択肢となるだろう」という指摘がある。クラウドでは十分に広範なアプリセットを利用できそうにないとの理由からだ。
かつてCitrixのCTOを務め、現在はAppSenseのCTOを務めているハリー・ラバナ氏によると、IT管理者は2012年もデータセンターで1対1のVDIを提供することになりそうだ。またWindows XPのサポートが2014年4月で終了することから、IT管理者は高度なデスクトップ仮想化技術についての理解を深めることになるはずという(もちろん、IT部門がサーバホスト型のデスクトップ仮想化技術を使用することはAppSenseにとっては有利なことだ)。
ただしアナリストも同じく、「2012年にはこれまでよりも多くの大企業がVDIの検討と採用を行う」と予想している。実際、ブラムフィット氏によると、2012年に販売されるVDIライセンスの本数は恐らくこれまでに販売されたVDIライセンスの総数を上回る見通しという。
Gartnerによると、PCのインストールベースのうち、現在VDIを使用しているのは全体のわずか1%から2%にすぎず、これでは「VDIの採用は小規模」という事実は変わりそうにない。そしてVDIは今後もニッチな技術にとどまりそうだ。Gartnerの予測では、サーバホスト型のVDIがPC市場で占める割合は2015年までわずか8~12%にとどまる見通しという。
というのも、VDIは現在利用できる多くのデスクトップ仮想化技術の1つにすぎないからだ。
「それにVDIはPCに取って代わるものでもない。個々のユースケースに対処するためのツールが1つ、IT管理者のツールボックスに新たに追加されたにすぎない」とマーゲビシャス氏は語っている。
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