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調査報告書で読み解くオリンパス失敗の本質:【IFRS】コーポレートガバナンス再構築【第1回】
オリンパスや大王製紙の不適切な会計処理であらためてコーポレートガバナンスが注目されている。仕組みとして整えられているコーポレートガバナンスを適切に機能させ、企業経営のリスク低減を図るにはどうすればいいのか。内部統制に詳しい公認会計士が解説する。
最近、不適切な会計処理が行われていたり、あるいは会社のお金を私的に流用したりするなど、企業の在り方を考えさせられるような事件が相次いでいる。これらの事件の特色は、経営者が主体的にかかわっているということである。経営者は会社の業務執行に関する意思決定を行い、その意思決定に従って業務を遂行するが、ときに上記のような不適切な行為に及ぶことがある。そのような不適切な行為は、従業員はもとより、株主や債権者などに対する不利益を招く可能性があるため、会社におけるコーポレートガバナンスの体制を構築し、強化することが必要になると考えられる。
しかしながら適切なコーポレートガバナンスの体制は、定まった定義があるわけではないため、各社試行錯誤しながら最適解を模索している。本稿では、いくつかの事例を参考に、どのような体制を敷くことが有効であるのか、日本企業の特質が何か隠れているのかなどについて検討する。なお、意見に関する部分は筆者の個人的な意見であり、筆者の所属する組織などにおける見解ではないことをあらかじめお断りしておく。
オリンパスの第三者委員会報告書
(1) コーポレートガバナンスの状況とその機能性
それでは、オリンパス株式会社(以下、「オリンパス」とする)の第三者委員会が2011年12月6日に公表した調査報告書(以下、「報告書」とする、オリンパスサイトへのリンク)から、オリンパスにおけるコーポレートガバナンスの状況を検討してみよう。
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