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HDDの供給回復は2013年以降? タイ洪水の影響に悲観的な企業向けストレージ市場タイ洪水被害によるHDD供給不足【後編】

タイ洪水によるHDD供給不足の解消は、早くても2012年下半期以降という予測が発表された。PC出荷にも影響するなど、担当者にとって2012年は耐え忍ぶ年になりそうだ。

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 前回の「60%値上がりに納品遅延――タイ洪水に翻弄される企業向けストレージ市場」に続き、2011年に起きたタイの洪水被害によるHDD供給不足が、企業向けストレージ市場にどう影響しているかを解説する。ストレージの納期が大幅に遅れた企業がいる一方、事前対策によって納期遅延を防いだ企業も存在する。

HDD不足への事前対策が奏功

 HDD供給不足に対して、データ量が急増する企業は事前に対策を講じていた。米Ancestry.comは販売業者と連携し、米EMCがHDD価格を5〜15%値上げする前の2011年12月30日に見積もりを取り、1Tバイト SATAドライブを搭載した36Tバイトの「EMC Isilon 36000X NAS」システム6台と、3Tバイトの SATAドライブを搭載した324Tバイトの「EMC Isilon 108NL」2台を急ぎ購入した(EMC Isilon関連記事:ストリーミング配信の鍵を握るNAS JストリームがIsilonを選択した理由)。

 Ancestry.comのストレージ運用マネジャー、トラビス・スミス氏によると、同社では通常、四半期先行でストレージ計画を進めているという。しかし1月初め、ベンダー数社の販売担当者がローコストで高性能なSATAドライブの価格上昇と納期遅延の懸念を伝えてきたため、同氏はすぐに決断した。

 あるベンダーの販売担当者は「納期は60日から90日。今はHDDの売買契約を履行できない状態だ。価格が高騰すると人々が認識し始め、ドライブの争奪戦が始まった」とスミス氏に話した。そのベンダーの供給量は予想を超える速さで落ち込んだという。

 Ancestry.comはIsilonとHP 3PARの両システムで、故障したドライブのリプレースメントに、これまでにない遅れを経験した。それぞれ、デンバーとソルトレイクシティのサポートが対応したが、「3日も待たされたのは初めてだ」(スミス氏)。

 「社内では声を荒らげる従業員もいた。明らかにSLA(サービス品質保証契約)違反であったからだ」とスミス氏は語る。「幸運なことに、アレイは複数のドライブが落ちても十分対応できる柔軟性と冗長性を備えていたので、大きな問題にはならなかったが」

 企業のストレージ担当者は、こうしたドライブ市場の状況に、しばらく耐える必要がありそうだ。米市場調査会社Gartnerの予測によると、HDD業界が洪水発生以前の供給体制に戻るのは、早くても2012年第3四半期(7〜9月)の終わりか、第4四半期に入ってからになるという。

 「ストレージの価格が下落し、ベンダーから“いつでも必要なときに”供給される状態には当分戻らない。2012年は困難な運用を余儀なくされる年になるだろう」とGartnerのデータセンターシステムグループ担当副社長、ジョン・モンロー氏は警告する(関連記事:CIOはストレージのコストと複雑さに窒息寸前)。

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