iPad/Android版Office、2014年10月登場のうわさ:Windows RT援護射撃で“出し惜しみ”
MicrosoftはWindows Phone/Windows RTタブレット用Officeの新版をリリースしてからでないと、iPad/Android版Officeを販売しない計画だという。タブレット市場にWindows RTの足場を築く戦略のようだ。
ある筋によると、米Microsoftは、Windows Phone/Windows RTタブレット用Officeの新版リリース予定から半年後に当たる2014年10月まで、iPadおよびAndroid版Officeをリリースしない計画だという。それが本当にMicrosoftの計画なら、一部のアナリストが指摘するように、ライバルのタブレット端末向けのOfficeを出さないうちに、タブレット市場にWindows RTの足場を築こうとする“援護射撃”を行う戦略だ(関連記事:iOS版、Android版「Office 2013」が登場しない意味)。
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米IT情報サイトZDNetでメアリー・ジョー・フォーリー氏が記事にしたMicrosoftの「Gemini」(Officeの時期メジャーアップデートのコード名)のものとされるロードマップに従うと、OutlookのWindows RT版も2014年10月までリリースされない見込みだ。
一方、このロードマップによれば、Windows 8用のOfficeアプリの新版は2013年10月に、Mac版のOffice 2014は2014年4月にリリースされる予定になっている。
このロードマップが真実なら、Microsoftは、米AppleのiPadと多くのベンダーが提供しているAndroidタブレット向けのOfficeよりも、ARMベースのWindows RTタブレット向けOfficeを優先するつもりなのは明らかだ。
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まず自社のプラットフォームの足場固め
米調査会社のDirections on Microsoftのアナリスト、ウェス・ミラー氏は同じ見方をしており、米TechTargetのインタビューにおいて「Microsoftが自社のプラットフォームの足場を固めようとしているのは間違いない」と語っている。
「Office 365とロイヤルティー(の問題)など、われわれが関知しない水面下では、Appleとのかけひきがあるのかもしれない。だがMicrosoftは、iPadがMicrosoft Officeを重視するプラットフォームではないと考えている」(ミラー氏)
こうした計画がMicrosoftの裏目に出ることはないのだろうか? というのも、iPadとAndroidタブレットユーザーは、Microsoft Office形式のファイルの作成、編集、表示にMicrosoft Officeに代わるさまざまな手段を使いこなせるようになってきているからだ。
Microsoft Officeに代わるアプリとして、AppleのiPad版iWorkアプリ(Pages、Numbers、Keynote)、CloudOnなどのクラウド対応Microsoft Officeサービス、QuickOffice、Docs2Go、Polaris Officeなどのサードパーティーのオフィススイートなどがある。
しかしミラー氏は、iPadおよびAndroidタブレット向けのOfficeのリリースを遅らせることは、Microsoftの不利にはならないとみている。
「Microsoftはドキュメントの忠実性に非常に力を入れている。つまり、ドキュメントを違うアプリで開いても、レイアウトが崩れたり、表示が壊れたりしない」とミラー氏は言う。
「iPad向けのMicrosoft Officeが出るとしたら、どのようなアプリ構成になるかは分からないが、Windows版Officeのように手厚く広範な機能は含まれず、ごくシンプルなものになるだろう。Microsoftは基本的にWindowsをOfficeの真価が最も発揮されるプラットフォームにしたいのだから」
RT版Officeの新版リリースは「お蔵入り」の可能性?
ところで、Windows RTタブレットの売れ行きについては、一部のアナリストがRTには見切りを付けるべきだと示唆するほど低迷している。2013年3月の米Bloombergのリポートによると、RTベースのSurfaceタブレットは、2012年10月から2013年3月までに米国で100万台しか出荷されていない。一方、RTよりも後に米国で2013年2月に販売が開始されたIntelベースのWindows 8搭載Surface Proは、1カ月強で400万台が出荷されている。
RTタブレットの大きな問題の1つは、とにかくアプリだ。RTタブレットには従来のWindowsアプリとの互換性がない。また、RT対応アプリの種類は、Windows 8対応アプリよりも少ないぐらいだ。
以上を踏まえると、RT向けのMicrosoft Officeの新版リリースは、2014年4月ではなく「お蔵入り」になる可能性の方が高いと考えられなくもない。
それでもミラー氏は、MicrosoftのこれまでのRTへの献身的な取り組みを考えると、近いうちに同社がRTを見切ることはなく、見切りを付けるとしても2014年の終盤前ではないと確信している。
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