海外旅行でもローミング料金を気にしなくて済む?
さようなら、ゲストWi-Fiパスワード――Facebook認証でアクセスがより楽に
外出先でWi-Fiにアクセスする際、そのログインを面倒だと感じたことはないだろうか。Facebookと連携することで、ユーザーも企業も楽になるネットワークサービスの提供が進められている。
ゲストWi-Fiネットワークを運用するネットワーク管理者は、セキュリティを確保するために使いやすさを犠牲にし、面倒なログインプロセスでユーザーをイライラさせることが多い。ホテルのフロント係やカフェの店員がカウンター越しに、Wi-Fiパスワードが書かれた紙片を折りたたんでこっそり手渡してくるとき、大げさで煩わしいと思ったことがある人は少なくないだろう。
ゲストWi-Fiネットワークの使用頻度が少なく、企業無線LANの補助的な位置付けにとどまるオフィスビルでは、ゲスト認証プロセスを効率化するコストは、メリットを上回るかもしれない。しかし、顧客と接する業務を行う業種(小売り、飲食、ヘルスケア、ホスピタリティ、さらには教育など)の施設では、ゲストWi-Fi認証の簡素化は、ネットワーク担当者の負担を軽減するだけでなく、経営に直接貢献する大きな戦略的な取り組みの一環として進めることもできる。
そのための1つの選択肢が、ゲスト自身のFacebookアカウントでゲストWi-Fi認証を行うことだ。ソーシャルネットワーキング大手の米Facebookは、「Facebook Wi-Fi」と呼ばれるそうしたサービスを2012年に開始している。米Cisco Systemsが2013年10月に発表した同社との提携により、Ciscoのアプライアンス「モビリティサービスエンジン(MSE: Mobility Services Engine)」の開発者エコシステムにFacebookが加わり、両社のサービスを組み合わせたソリューションを提供することになった。両社の新しい共同ソリューション「Cisco Connected Mobile Experience(CMX) for Facebook Wi-Fi」を利用することで、Wi-Fiを運用している企業は、ユーザーのFacebook ID、興味、正確な屋内位置(Wi-Fiで特定される)に基づいたカスタム提案を行える。
南フロリダ大学のネットワークエンジニアリング担当アソシエートディレクター、ジョン・ロジャーズ氏は、大規模なゲストWi-Fiネットワークを管理している。一時的なSSID(サービスセット識別子)を使い、Cisco MSEおよびFacebook認証の限定的な試験運用を行っているところだ。同大学では現在、ゲストの携帯電話にテキストメッセージでパスワードを送信し、ゲストにこれを使って認証を行うよう求めている。このポリシーは、外国から訪れたゲストにはあまり評判が良くない。海外からのゲストは、テキストメッセージの送信でローミング料金が増えることを望まないからだ。
「Facebookとの統合は簡単だと思う。しかし、われわれは何らかの監査証跡を残さなければならない。このため、Facebook認証が適切かどうかの判断は、大学の法務部門次第だ」とロジャーズ氏。「われわれは新しいソリューションの採用を決めたわけではない。しかし、このソリューションが興味深い機会であることは確かだ」
Facebook認証は、主にアナリティクスやプッシュ広告などの機能が、小売り、ホスピタリティ、公共サービス、大規模イベントといった業種のIT部門に最初はアピールするだろうと、米IDCのネットワークインフラリサーチ担当副社長、ロヒト・メーラ氏は指摘する。しかしいずれは、Facebook認証は、ゲストWi-Fiネットワークが匿名アクセスで利用される状況から脱却したいと考えているネットワーク管理者全員の興味を引く可能性があると、同氏は付け加える。
「Facebook認証では、管理者はユーザーのWi-Fiネットワークアクセスを容易にすることができる。しかも、ユーザーは所定の認証資格情報を持ってネットワークに入ってくるため、ユーザーのアイデンティティーに対する管理を維持できる」とメーラ氏。「無線LANの全てのユーザーが匿名だったら、何らかの不正行為が発生した場合、厄介なことになる。関与したユーザーを突き止めなければならないからだ。こうした場合にFacebookを介してユーザーの本人情報を調べられれば、それはメリットになる」
Cisco MSEとFacebook認証の統合ソリューション
企業はFacebook Wi-Fiにより、Facebookで“チェックイン”した顧客に、無料Wi-Fiアクセスを提供できる。このサービスはFacebookのソフトウェアと、同社がCisco傘下のMerakiとのOEM契約に基づいて販売するアクセスポイント(AP)を組み合わせて実現するものだ。サンフランシスコ湾岸地域で販売業者25社の参加を得てスタートした半年にわたる試験運用プログラムは、50カ国の1000社以上の企業が参加するに至っていると、FacebookのFacebook Wi-Fi担当プロダクトマネジャーであるエリック・ツェン氏は説明する。このサービスは、Facebookのツール「インサイト」と連携している。インサイトでは、自分や自社のFacebookページにアクセスしたユーザーに関するアナリティクスデータの集計が得られる。
Ciscoは、Connected Mobile Experience(CMX)ポートフォリオに含まれるネットワークサービスプラットフォームであるモビリティサービスエンジン(MSE)上で提供するAPIを拡充しており、FacebookはCiscoにとって、これらのAPIを利用する多くの新しいエコシステムパートナーの1社だ。
MSEのモビリティサービスAPIは現在、REST、RESTful、SOAPをベースにした開発をサポートしている。MSEは、Wi-FiのAPとデバイスの近さを利用して、デバイスの屋内位置を特定する機能などを備えており、Facebookなどの開発者はモビリティサービスAPIを使って、MSEのこうした機能を利用したアプリケーションを作成できる。
またCiscoは、さまざまなモバイルアプリケーションの開発を容易にするソフトウェア開発ツールキットも開発していると、CiscoのモビリティおよびUnified Accessマーケティング担当ディレクター、プラシャンス・シェノイ氏は語る。
CMX for Facebook Wi-Fiは、従来のGPSやネットワークベースの識別子では不可能な、位置ベースのカスタムサービスを開発するための基盤にもなる。Ciscoによると、米MGM Resortsは、既にCMX for Facebook Wi-Fiを利用して屋内マッピングサービスを提供し、ゲストがモバイルデバイスを使って自分がホテル内のどこにいるかを把握したり、リゾート内の特定のカジノやレストランへの経路を知ることができるようにしているという。
Ciscoは、Facebookとの提携発表の一環として、MSEのソフトウェアアップデートもリリースしている。このソフトウェアには、非ITユーザー向けの高度なアナリティクスプラットフォームとマーケティングツールが含まれる。これらは、Ciscoが2012年に買収したThinkSmart Technologiesの技術がベースとなっている。企業はこうした技術のおかげで、顧客がFacebook認証を選択した場合に、その顧客のID、行動、現在位置、特定された興味に応じたバナーをWi-Fiで顧客に配信し、カスタム提案を行える。
「ユーザーが無料のゲストWi-Fiの利用を希望すると、Ciscoインフラがそのユーザーをリダイレクトし、Facebookでのログインを促す。ユーザーがFacebookでログインしてチェックインすると、今度はその企業のFacebook公式ページにリダイレクトする」(シェノイ氏)
「例えば、Best Buyに来た顧客が、ゲストWi-FiでAmazon.comにアクセスして値段チェックをしていることが分かれば、Best Buyはすぐにこんな提案を送信できる。『モバイルデバイスでこのメッセージを販売員にご提示いただけましたら、お客さまがこの15分間ご覧になっていたAmazon上のHDTVと同じ値段で販売いたします』。そう考えると、情報がいかに大事か分かる」とシェノイ氏は付け加える。
当然のことながら、CMX for Facebook Wi-Fiを利用するには、Ciscoのブレードサーバ「UCS E-Series」と、ルータ「ISR G2」または「ASR 1000」が必要になる。シェノイ氏によると、これらの他に必要なインフラは、MSE(バージョン7.6のソフトウェアを搭載)に加え、Ciscoの第2世代AP(Aironet 1600、2600、3600、または最近発表された3700シリーズ)、無線LANコントローラー(5508sまたは5760s)だという。
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