ビジネスにおけるMVNOサービスの適材適所を理解する:「ビジネスを強くする格安SIMを探せ」【第2回】(2/2 ページ)
仮想移動体通信事業者(MVNO)のサービスは通信費を抑えたい法人にとってメリットが多い。しかし、全ての業務を移行するのは無理がある。MVNOのビジネス導入では、その得手不得手の理解が重要だ。
IoTとM2M向けにも強みを発揮するMVNOのサービス
MVNOのデータ通信サービスが法人にとって“さらに”大きなメリットとなるのが、「M2M」(マシン・ツー・マシン)や「IoT」(モノのインターネット)などの利用だ。法人向けのM2Mサービスは大手キャリアも提供しているが、MVNOの多くも古くから取り組んでおり、各社この分野で多彩なプランを用意している。
MVNOだから料金が安価なのは当然として、料金体系を柔軟に設定できることも強みだ。M2MやIoTにおける利用に関しては、スマートフォンの利用と比べて一度に通信するデータ量が少ないことから、低速でも十分というケースが依然として多い。その状況に合わせて幾つかのMVNOでは、M2M向けに帯域幅を絞り、数百kbpsと通信速度を抑えることで、価格もかなり抑えた料金プランを提供している。
また、MVNOならではの特徴といえるのが、複数キャリアの回線を組み合わせたサービスを提供できる点だ。自社でインフラを敷設している大手キャリアは、当然ながら自社のインフラを用いたサービスしか提供していない。一方、MVNOは、複数キャリアのMVNOとなることが可能なことから、2つ以上のキャリア回線を組み合わせてネットワークを二重化し、一方の回線に障害が発生した場合でも運用を継続できる仕組みを提供できる。
具体的な例としてMVNOの日本通信が用意しているサービスを取り上げよう。日本通信では、2015年12月にNTTドコモとソフトバンクの回線を用いた「2SIMルータ」を発表している。これは1つの無線LANルーターにNTTドコモとソフトバンク(正確にはボーダフォンの回線による国際ローミング)のSIMを差したもので、通常は主回線のNTTドコモ回線を用いて通信するが、主回線に障害が発生した場合はソフトバンクの回線に自動的に切り替えて、データ通信を継続する仕組みになっている。
常時、あるいは定期的に通信するビジネスのM2M用途において、ネットワークの途絶は大きな問題を引き起こす可能性がある。モバイルと固定回線を用いた二重化もできなくはないが、固定回線を利用するとコストがかさむだけでなく、設置できる場所に制約が出てくる。モバイルネットワークだけで回線の二重化が実現できる点は、MVNOだからこそ可能になる明確なメリットといえるだろう。
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