従来型フラッシュの限界を解決する「3D NAND」最新事情:オールフラッシュも夢ではなくなった
フラッシュをもっと安く、大容量に。ユーザーの要求は限りないが、従来型のフラッシュでは限界が見えてきた。そこで注目されているのが「3D NAND」テクノロジーだ。
データセンター内でストレージを新たに展開する際、フラッシュをデファクトスタンダードにする例が最近急増している。
HDDベースのストレージアレイはもはやレガシーと見なされるようになり、プライマリーストレージの主流はSSDとHDDのハイブリッドまたはオールフラッシュシステムに移りつつある。
また同時に、ハイパーコンバージド(インフラストラクチャ)やソフトウェア定義ストレージ製品が登場し、フラッシュをサーバへ直接実装する方式はさらに注目されている。
ストレージの容量拡大のニーズは高まる一方なので、ストレージのサプライヤーはフラッシュ製品の容量を拡大するため、新たな手段を探すことを余儀なくされた。こうして誕生した「3D NAND」は、今のフラッシュ装置の容量拡大を実現したテクノロジーの1つだ。
発売当初、NANDテクノロジーはSSDとよく似たものとして扱われることが多かった。2Dのチップに数百万個のトランジスタが配置されており、このチップを相互接続してメモリセルを形成する。メモリセルに電荷を保持することにより、データが格納される。
これはいわゆる「プレーナー」(平面)型の装置で、水平方向にしか拡張できない。そのため、2つの手法で容量を増やしてきた。1つはセルのサイズを縮小する手法。もう1つはセル1個に格納できるビット数を増やす手法だ。
プレーナー型NANDフラッシュの最新の製造プロセスは、15ナノレベルに到達している。これはチップ上で必要な間隔を取った繰り返し図形が描ける小ささの限界値だ。これ以上繰り返しを増やすと、2つのセルの間で電子の「漏れ」が起こることが証明されている。
セル1個当たりのビット密度は、SLC(Single Level Cell)の1ビットから、MLC(Multi Level Cell)の2ビット、TLC(Triple Level Cell)の3ビットへと増大してきた。そして将来、さらにQLC(4ビット)タイプが登場する兆しも見え始めている。
セル1個当たりのビット密度を上げるのは、セル内の各ビットの状態を電圧レベルの違いで表現し、その値を計測することで実現できた。しかし、このセルには拡張性に懸案事項がある。セルの密度が1ビット上がると、セルの耐久性と、セルの書き換えが可能な回数の上限値は著しく低下する。セルの密度を1ビット増大させるたびに、耐久性は1桁単位で下がってしまう。そのため、QLCタイプの用途はWORM(Write Once Read Many:書き込みは1回だけ可能だが参照は何度でも可能)テクノロジーに限定されている。
3D NANDとは
3D NANDテクノロジーでは、NANDチップの密度の増大に関して、上記とは異なるアプローチを採用している。セルを垂直方向に積み上げて重ねることで、セルの3D構造を作る。こうして3次元に拡張できるようになった。
3D NANDテクノロジーの場合、個々のセルを配置するプロセスで複数層にまたがる繰り返しも許容されるので、容量を大幅に拡大できる。なお、NANDチップ自体のサイズはわずかながら拡大している。
製品の信頼性を確保するため、NANDフラッシュのメーカーは製品のプロセスサイズをあえて拡大し、複数層の積み上げを実現させた。このタイプのチップは当初約40ナノだった。しかし時間の経過とともに、製品のプロセスサイズは微小化が進んでおり、現時点で最新の製品では約21ナノにまでなっている。
チップのデータ容量とアーキテクチャはサプライヤーによって異なる。Samsungは3D NAND製品、V-NANDを初めて市場に投入したメーカーで、現在に至るまでこの市場のけん引役を継続している。同社の最新モデルは48レイヤーテクノロジー(容量は256GB)をベースとしている。ただし、2016年半ばに64レイヤーの製品が発表され、そのモデルのダイ当たりの容量は512GBとなる予定だという。
またWestern Digitalも、東芝との提携によって2017年中盤までに64レイヤーの製品を発売すると発表している。容量は1ダイ当たり256GB、384GB、512GBの3種類をそろえる予定だという。SanDiskは、2015年8月に32レイヤー(256GB)製品を発表した。一方IntelとMicronは連合を結成し、32レイヤーでTLCタイプ(256GB)のMLCチップダイの開発を進めている。
3Dによるフラッシュの容量拡大
NANDフラッシュダイの容量拡大が続いているので、NANDパッケージ(チップ)の大容量化も当然継続される。フラッシュ装置の容量も同様だ。MLCとTLCの2種類のNANDを併用する製品も発売されている。
Samsungは既に16GB SSD(「PM1633a」)を発売しているが、これはNetAppとHPE 3PARのアレイでサポートされている。このモデルの後継として「PM1643」が発売される予定だ(2016年8月の「Flash Memory Summit」で発表された)。容量は32TB、512GB V-NAND(Samsungの3D NANDテクノロジーを指すネーミング)のチップをベースとする。
概念実証(PoC)中であるSeagateの60TBフラッシュドライブを除くと、同社以外のSSDサプライヤーは各社とも3D NAND製品を発売しているが、(容量は)2〜4TBの範囲で頭打ちだ。
例えばIntelのエンタープライズ向けモデル「DC S3520」と「P3250」を見ると、32レイヤーのMLCベースで、容量は最大1.6TB(SATA SSD)または2TB(PCIe SSD)だ。
Micronの新しい「5100」シリーズは、容量が最大2TBで、価格重視タイプと性能重視タイプの両方をそろえ、「5100 ECO」「5100 PRO」「5100 MAX」の3つのモデルで展開している。ECOモデルとPROモデルはSSD(2.5インチ)とM.2フォーマットの両方が用意されているのに対して、MAXモデルはSSDのみだ。
3D NANDの信頼性
もちろん、3D NAND製品にも従来のプレーナー型NANDと同様に、耐久性の懸案事項は残っている。
そればかりか、3D NANDには「電気的な干渉」に対処しなければならないという、新たな課題も加わった。
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