知ってる? “VMwareユーザーのためのクラウド”があるって! それが「Oracle Ravello Cloud Service」:既存のVMware環境を“修正なし”でパブリッククラウドへ移行
VMwareユーザーのために作られたパブリッククラウドがあるのをご存じだろうか? オラクルが2016年2月に買収したラベロ・システムズの技術を用いた「Oracle Ravello Cloud Service」だ。これを使えば、オンプレミスのVMware環境を“修正なし”でパブリッククラウドに移行できる(本コンテンツは@ITからの転載です)。
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既存のVMware環境を“そのまま”パブリッククラウドへ移行可能に
「システムの柔軟性をより高めたい」「もっとコストを削減したい」といった目的から、オンプレミスで運用しているVMwareによるプライベートクラウド環境をパブリッククラウドに移行したいと考える企業は多い。こうしたニーズに応えるクラウドサービスが「Oracle Ravello Cloud Service」だ。この技術を開発した米ラベロ・システムズ(Ravello Systems)が2016年2月にオラクルに買収されたことに伴い、現在はOracle Cloudのサービスの1つとして提供されている。先頃来日したラベロ・システムズの創業者ナヴィン・R・サダニ氏に、同サービスの特徴や活用メリットを聞いた。
Oracle Ravello Cloud Serviceは、サーバやネットワーク、ストレージを含め、オンプレミスで稼働するVMware環境を丸ごとパブリッククラウドに移行できるサービスである。ラベロ・システムズを立ち上げ、2017年1月現在はオラクルでOracle Ravello Cloud Serviceの製品開発担当バイスプレジデントを務めるサダニ氏は、Ravelloを開発した狙いを次のように説明する。
「私は以前、クムラネット(Qumranet)でLinux向けハイパーバイザーであるKVMの開発と提供に従事していました。この会社は2008年にレッドハット傘下に入り、その後は同社で仮想化事業やクラウド事業の推進を担当しました。
その当時から、多くの企業がVMwareによる仮想化環境を利用しており、一方でパブリッククラウドが新たな企業コンピューティング環境として台頭し始めていました。私はその状況を見て、『VMwareでアプリケーション環境を構築した企業は、いずれ大きな壁にぶつかる』と直感しました。なぜならば、VMwareの上に構築したシステム環境をパブリッククラウドに移行するのは容易ではなかったからです。そこで、新たな会社を作り、この問題を解決するソリューションを開発しようと考えました。そのソリューションが、現在のOracle Ravello Cloud Serviceに他なりません」
Oracle Ravello Cloud Serviceの最大の特徴は、Webサーバやアプリケーションサーバ、データベースサーバといった仮想サーバ群、そしてロードバランサーやルーター、ファイアウォールなどで構成されるネットワーク環境をカプセル化し、仮想マシンの変換を行ったり、それぞれのホスト名やIPアドレスといったネットワーク構成を変えたりすることなく、VMwareによって構築したシステム環境をそのままパブリッククラウド上に再現できる点だ。移行先のパブリッククラウドとしては、Oracle Cloud、Amazon Web Service(AWS)、Google Cloud Platformのいずれかが条件に応じて自動的に選択される。これにより、アプリケーションの改修やサーバの設定変更などを行うことなく、素早くパブリッククラウドに移行することが可能となる。
大規模なアプリケーション環境も「20分」でパブリッククラウド上にデプロイ
Oracle Ravello Cloud Serviceは現在、VMwareによるシステム資産を抱える多くの企業で活用されているが、サダニ氏は典型的な活用例の1つとして、オンラインカジノなどの運営で知られる英888 ホールディングスの移行プロジェクトを挙げる。
同社のアプリケーション環境は極めて大規模であり、Windowsベースの250以上もの仮想サーバ群の上で稼働し、ロードバランサーやファイアウォールが組み込まれたネットワーク環境はサブネットやVLANによって50以上に分割されていた。ある時、同社の経営陣はコスト効率化などの目的から、この環境をAWS上に移すという決断を下す。しかし、ネットワーク構成が非常に複雑であったため、移行は容易ではなかった。そこでラベロ・システムズが支援に入る。
「私たちは、お客さまに対して2つのメリットを提供できました。1つは、既存のアプリケーションには一切の変更を加えずに、パブリッククラウドへの移行を実現したこと。通常、パブリッククラウドへの移行ではアプリケーションの修正などのコストが発生しますが、Ravelloでは一切不要です。もう1つは、プロビジョニングに要する時間の短縮です。従来、お客さまのIT部門ではアプリケーション環境の準備に3カ月もの期間をかけていましたが、Ravelloを使うことにより、それがわずか20分に短縮されたのです」(サダニ氏)
移行作業は簡単なマウス操作で完了。必要に応じてリージョンの指定も可能
このように、VMware環境のオンプレミスからパブリッククラウドへの迅速な移行を支援するOracle Ravello Cloud Serviceだが、サービスの内容は極めてシンプルだ。
まず同サービスの管理画面にログインし、仮想サーバをアップロードする。アップロード方法としては、VMware vCenterに直接接続してインポートする方法の他、エクスポートされた仮想サーバのインポート、ISOやVMDKのアップロードにも対応している。
仮想サーバをアップロードすると、Ravelloはそのメタデータを解析し、自動的にネットワークを構成する。これだけで基本的な準備が完了し、後は「Publish」ボタンをクリックするだけでよい。
なお、パブリッククラウドにデプロイする際には、「Cost Optimized」と「Performance Optimized」のいずれかを選択できる。Cost Optimizedではコスト最優先でRavelloが自動的にデプロイ先のクラウドを選定する。一方のPerformance Optimizedでは、デプロイ先となるパブリッククラウドのリージョンを指定できる(全世界で10以上のリージョンが指定可能で、東京リージョンを選ぶこともできる)。Oracle CloudとAmazon Web Service、Google Cloud Platformのうち、実際にどのパブリッククラウドを使うかはRavello側で自動選択される。
Ravello上にアップロードした仮想サーバ群は「Blueprint」として保存しておくことが可能だ。例えば、同じアプリケーション環境を別の用途でも使いたいといった場合は、それをBlueprintとして保存しておけば、ワンクリックで同じ環境をいつでもデプロイできる。この機能は、テストやトレーニングで使う環境を繰り返しパブリッククラウド上に展開するケースで効果を発揮するだろう。
ネステッド仮想化エンジン、SDN、ストレージ技術が鍵。今後はオラクル製品/サービスとの連携強化で、さらなる価値を提供
オラクルは2017年1月現在、オンプレミスとクラウドの違いを意識することなく両者の間を自在に行き来し、企業が築いたIT資産の有効活用を図る“ハイブリッドクラウド”の戦略を推進している。オンプレミスのVMware資産をそのままパブリッククラウド上に展開できるOracle Ravello Cloud Serviceも、この戦略に合致したサービスである。
それでは、Oracle Ravello Cloud Serviceでは、どのようなテクノロジーによってこれを実現しているのだろうか。サダニ氏は次のように説明する。
「Oracle Ravello Cloud ServiceにデプロイされたVMwareによる仮想サーバ環境は、オンプレミスと同様にVMwareのインフラ上にあると認識して動作します。ネットワーク構成やストレージ構成もオンプレミスと変わりません。これを実現するために、Ravelloでは独自に開発した『ネステッド仮想化エンジン(Nested Virtualization Engine)』『SDN(Software Defined Networking)』、そして『ストレージ技術』の3つのキーコンポーネントを使用しています。これらのコンポーネントが密接に連携した仮想化プラットフォーム(Ravello HVX)により、パブリッククラウド上でもオンプレミスと同じVMware環境だと認識させているのです」
サダニ氏は、これらの技術を核にして、今後もさらなるサービス拡充に努めていくと話す。
「ラベロ・システムズは非常に小さな企業でしたが、グローバル企業であるオラクルの一部になったことで、世界中のお客さまにより安心してお使いいただけるようになり、さらに充実したサポートをご提供していくことが可能になりました。オラクルはクラウドとオンプレミスで多彩なサービス/製品を提供していますが、それらをRavelloと効果的に連携させることで、より優れたサービスを提供していけると考えています。今後のサービス拡充にご期待ください」(サダニ氏)
提供:日本オラクル株式会社
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