コンポーザブルインフラの登場【後編】
今すぐコンポーザブルインフラに手を出すべきではない理由
コンポーザブルインフラによってコンピュータのあらゆる構成要素を動的に再構成できるようになれば、ワークロードに最適なリソースを割り当てられるようになる。だがデメリットもある。
前編( Computer Weekly日本語版 5月6日号 掲載)では、データセンターが直面している課題とその解決策としての異種(ヘテロジニアス)コンピューティング、そしてコンポーザブルインフラを紹介した。
後編では、コンポーザブルインフラの現状と長所と短所、可能性を解説する。
コンポーザブルインフラの現状
では、現状のコンポーザブルインフラとはどのようなものだろう。先ほど述べたように、現時点ではパフォーマンスを犠牲にすることなくプロセッサからメインメモリを切り離す実用的な技術は存在しない。そのため、初期のコンポーザブルプラットフォームは標準的なx86サーバをコンピューティングリソースとして使用し、構成可能なストレージの独立したプールと組み合わせることで妥協してきた。
こうした例が、「HPE Synergy」と「Dell EMC PowerEdge MX」だ。これらの製品は、コンピューティングとストレージの各スレッドを組み合わせて専用の筐体に収めるように設計されている。ブレードサーバに似ているが、コンピューティングとストレージの両コンポーネントの接続にスイッチングSASファブリックを備えている。そのため、さまざまな構成でSASドライブをコンピューティングスレッドにリンクできる。
適切なファブリックの選択
コンポーザブルインフラは、連動させるためにコンポーネントを相互接続する方法が重要になる。SynergyとPowerEdge MXは、コンピューティングとストレージの両スレッドがスイッチングSASファブリックによってリンクされている。別のコンポーザブルインフラ企業DriveScaleはイーサネットファブリックを使っている。
ただし、ストレージ以外もコンポーザブルにするなら、もっと柔軟性の高い接続ファブリックが必要になる。その選択肢の一つがPCI Express(PCIe)だ。これはプロセッサに機器を直接接続する高速インタフェースとして開発されたものだが、現在では外部ハードウェアの接続にも採用されるようになっている。
このアプローチを推進している企業がLiqidだ。同社はPCIeスイッチを中心にコンポーザブルインフラを構築している。このアプローチにより、GPU、FPGA、ストレージなどのハードウェアをデータセンターラックの個別の筐体に収め、複数の標準x86サーバでの共有を可能にしている。PCIeスイッチは、必要な構成を実現する制御点として機能する。
GigaIOも同様のアプローチを取る。同社が開発した独自の相互接続技術「FabreX」はPCIe Gen 4をベースとする。PCIe Gen 4で利用可能な帯域幅により、自社のプラットフォームでHPC導入をターゲットとすることが可能になる。
ビッグデータ分析や機械学習などを組み込む最新のワークロードをサポートするのに最適なプラットフォームを求めるIT部門は、コンポーザブルインフラが持つこのような柔軟性に魅了されるだろう。
長所と短所
だが、慎重に検討することなくコンポーザブルインフラを導入すべきではない。パルマー氏によると、コンポーザブルインフラにより、既存のシステムとは別に管理しなければならない他のサイロがデータセンターに生まれるリスクがあるという。
その理由は、コンポーザブルインフラ製品の中には自動化が組み込まれておらず、Infrastructure as Codeやインテリジェントなインフラ機能を実現するためにサードパーティー製自動化ツールの追加インテグレーションが必要になるものがあるためだ。
「コンポーザブルインフラは実現技術だ。コンポーザブルインフラをフル活用できるのは、完全に自動化されたサーバビルドサービスを抱える準備が整っているIT部門だけだ。そのようなサービスは、ベンダー独自のAPIのため標準が存在しない。『Redfish』エコシステムに希望はあるが、全てのベンダーが今後これを完全に利用するかどうか判断するのは時期尚早だ」(パルマー氏)
Redfishは、ソフトウェア定義ITインフラ(コンポーザブルインフラ含む)管理用の標準APIを用意するために、DMTF(Distributed Management Task Force)が草案を作成した仕様だ。Redfishは、OpenStackのベアメタルプロビジョニングサービス「Ironic」、Red Hatの自動化ツール「Ansible Automation Platform」、一部のサーバ内部のベースボード管理コントローラーがサポートしている。
コンポーザブルインフラはまだほんの初期段階の技術だ。それは、現状のプラットフォームではCPUとメモリリソースを分離して個別に構成できないことからも分かる。
メモリファブリック「Gen-Z」の使用など、この問題を解決しようとする動きがある。Gen-Zは、単純なポイント・ツー・ポイントリンクからラックスケールのスイッチベースのトポロジーに至るまで、多種多様な接続でメモリセマンティックな操作を可能にするよう設計されている。
まとめると、GPUやFPGAなどの高価なアクセラレーターハードウェアが求められることにより、コンポーザブルインフラのニーズが高まる可能性がある。ただしGartnerが推奨するように、企業はコンポーザブルインフラのコストとメリットを、対応する従来型インフラと比較して慎重に評価しなければならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 稟議・承認作業の「脱オンプレ・脱Excel・ペーパーレス化」を一気に進める方法 -
製品レビュー
[株式会社kickflow] ワークフローシステムのクラウド化 “みんなが不幸になる”事態を避けるには? -
製品資料
[株式会社kickflow] Slack連携による稟議承認の“爆速化” ビザスクやソラコムはどう実現した? -
製品資料
[株式会社kickflow] ワークフローシステム導入検討で役立つ 「費用対効果算出」サンプルブック -
製品資料
[株式会社kickflow] ワークフローの3大課題 「分からない・使いにくい・見てもらえない」の解消法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
2
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
障害対応に「余裕なし」が9割超 運用担当316人調査で見えた「運用赤字」
-
6
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
シャトレーゼを悩ませる偽メール 混乱なしでBIMI導入とDMARC強化を実現した方法
-
9
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
10
生成AIで開発工数を圧縮 「工数150分の1」を叩き出した実例
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー