Kubernetesプラットフォームを巡り過熱するRed HatとVMwareの競争:優位を主張するRed Hat
仮想マシンとコンテナの統合管理が課題になり、Kubernetesの仮想マシン対応が主戦場となりつつある。Red HatはVMwareとの競争をどう見ているのか。Red Hatの主張を紹介する。
Red HatとVMwareによる「Kubernetes」プラットフォーム売り込み競争が過熱している。そんな中、Red Hatは「OpenShift」の仮想化機能を強化した。
2020年4月に開催された仮想化サミットにおいて、「KubeVirt」プロジェクトから派生した仮想化機能により、仮想マシン(VM)で実行されるアプリケーションをコンテナやサーバレスデプロイと一緒に開発、導入、管理できるようになるとRed Hatは発表した。KubeVirtはKubernetesでコンテナとVM管理するオープンソースのツールだ。
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VMware製品で実行されるワークロードを含め、従来のVMベースのワークロードをOpenShiftの新規アプリケーションにも既存アプリケーションにも追加できる。そのワークロードをコンテナでマイクロサービスに分解することも、VMのまま維持することも可能だ。
VMのインポートウィザードでワークロードを追加できるため、VM自体やVMで実行するアプリケーションを「VMware vSphere」「Red Hat Virtualization」「OpenStack」から直接OpenShiftに移行できる。
2020年4月29日の記者会見で、Red Hatのアジア太平洋部門テクノロジーオフィスでバイスプレジデントを務めるフランク・フェルドマン氏は、OpenShiftの仮想化機能は仮想ネットワーク機能(VNF)をコンテナ化して、他のコンテナアプリケーションと一緒に実行したいと考える通信事業者に適していると語った。
同氏は次のように語った。「商業的または技術的な理由から、全てのVNFがコンテナ化できるわけではない。1つの完全にコンテナ指向のプラットフォームを通信事業者に提供すれば、コンテナ環境でVNFをVMとして一時的に運用できるようになる」
「通信事業者の立場から見ると、別の管理パラダイムで身動きが取れないVMに縛られることなく、新しい管理ポリシーと手法を始めることができる」
VMwareは、企業がデータセンターとパブリッククラウドのVMware製品でコンテナアプリケーションを構築、実行、管理できるようにする「VMware Tanzu」を軸としてKubernetes戦略を構築している。Red Hatの最新動向がそこを目指しているかどうかについて同氏は言葉を濁した。
「VMwareを目標としてはいるが、顧客の意見を聞いてそれに応えるという意味では、競合他社を目指しているわけではない。当社の顧客、特にOpenShiftの1700社に及ぶ顧客は、単一のコントロールプレーンを心から欲している。それがRed Hatの主な動機になっている。もちろん、これはRed HatのVM管理レイヤーを廃止するのと同じように、顧客がVMwareの管理レイヤーを廃止する可能性があることを意味する。そこにはそれなりのビジネスもある。だが、そうすることは理にかなっている」(フェルドマン氏)
Red Hatでクラウドプラットフォーム担当のシニアバイスプレジデントを務めるアシェシュ・バダニ氏が両社のKubernetes戦略を比較したところ、Red HatとVMwareの競争は激しさを増しているように見えるという。
バダニ氏は次のように話す。「Red HatもVMwareもKubernetesを将来有望と見ている。それは素晴らしいことだ。だが、Red HatがKubernetesを5年間にわたって1700社の顧客に販売している一方、VMwareはまだ参入したばかりだ」
「Red Hatは単一のCNCF(Cloud Native Computing Foundation)標準のKubernetesスタックを所有している。VMwareは3つのKubernetesスタック(その一部は独自のスタック)のどれを顧客に提供すべきかいまだ検討しているところだ」
「Red Hatは全ての大手パブリッククラウドとネイティブに統合されるハイブリッドクラウド戦略を採用しており、すぐにも利用可能だ。VMwareは各クラウドに独自の専用インフラが必要で、2021年までに広く利用可能にはならないだろう」
「Red Hatは多岐にわたる一連の統合アプリケーションサービスを用意しており、数百社のISV(独立系ソフトウェアベンダー)の認定を受けている。VMwareは以前失敗したモデルからブランドを変えたアプリケーション戦略のみに注力している。Red HatはKubernetesでコンテナとVMのワークロードを統合するために最新のクラウドネイティブなプラットフォームアプローチを採用している。VMwareはレガシー仮想化プラットフォームを中心に、独自のKubernetesに似たAPIを配置している」
だが、全ての企業が1つのKubernetesプラットフォームだけを選ぶわけではない。その一例がシンガポールのDBS Bankだ。VMwareの顧客であるDBS Bankはアプリケーションプラットフォームとして「Cloud Foundry」とOpenShiftの両方を使っている。
DBS BankのグループCIO(最高情報責任者)ジミー・ウン氏は最近、本誌に次のように語った。「たった数社しか共存できないほど世界は狭くないと考えている。技術の進化は速いため、マルチサプライヤー戦略が当銀行のアプローチに定着している」
「勝者と敗者という概念は存在しない。ある時点で特定の技術が優勢になっても、やがて残りの技術がそれに追い付くためだ。さまざまな技術を使うことで業界トップのサプライヤーから最高のイノベーションを享受でき、他のサプライヤーが進化すればそこから恩恵を受けることも可能だ」
この件について本稿の原文公開時点(2020年4月30日)では、VMwareはコメントを控えている。
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