コンテナにゼロトラストを適用するための戦略:コンテナとゼロトラスト【後編】
コンテナによって生じるリスクの軽減にはゼロトラストが有効だ。ではどうすればコンテナにゼロトラストを適用できるのか。
前編(Computer Weekly日本語版 8月19日号掲載)では、コンテナによるリスクの増大とゼロトラストの有用性を紹介した。
後編では、ゼロトラストの新たなアプローチとゼロトラストをコンテナに適用する手順を解説する。
ゼロトラストを適用すれば、前編で紹介した脅威を軽減できる。ウォーバートン氏は次のように補足する。「ゼロトラストには、ユーザーや場所にかかわらず、全てのリクエストを1つずつ保護するという主要原則がある。これをコンテナに当てはめ、全ての通信を暗号化する必要がある。それが内部のサービス間の通信であってもだ」
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不正アクセスを防ぐには、コンテナに強力な認証メカニズムを適用しなければならない。「双方向のデジタル証明書を使って信頼済みのコンテナのみが相互通信できるようにする必要がある。最終的には、強力なロールベースのアクセス制御を導入し、承認済みのユーザーとサービスのみが明示的に許可を与えられた操作を実行できるようにする必要がある」とウォーバートン氏は話す。
「コンテナアプリケーションとネットワークの間の透過的なインフラ層にセキュリティ機能と運用機能を統合して、より効率的に処理できるサービスメッシュのセキュリティを作る必要がある。ネットワークのセキュリティとサービスメッシュの技術にゼロトラストアプローチを収束させる動きが登場している」
Forrester Researchでプリンシパルアナリストを務めるサンディ・キャリエリ氏は、コンテナを採用する開発者と、事態の収拾を迫られるセキュリティチームの分断について警鐘を鳴らす。同氏は次のように話す。
「開発チームはスケーラビリティやコスト効率を目当てにコンテナの採用を熱望し、コンテナ化を決断するのも開発者だ。セキュリティチームは知らない間に巻き込まれてセキュリティへの影響と要件を知るというのが現実だ」
コンテナのセキュリティに関する大きな問題の一つはイメージの詰め込みだと同氏は語る。「開発者は一般的にリポジトリからイメージを取り出す。これらのイメージは、特定のユースケースに必要になるよりも多くのツール、機能、権限を含んでいる。開発チームには、イメージを必要最低限に縮小する時間はほとんどない。DevSecOpsチームは、使用中のイメージを確認して不要な機能と権限を削除する時間を設ける必要がある。基本的な例として、コンテナをルート権限では実行しないようにする」
キャリエリ氏によると、コンテナに適用されるゼロトラストのもう一つの側面がマイクロセグメンテーションだという。「アプリケーションのマイクロセグメンテーションは、東西南北のトラフィックを評価してコンテナ、API、サーバレス関数といったアプリケーションコンポーネント間のデータフローを管理するために活用される」と同氏は話す。
「ランタイムコンテナセキュリティツールは、コンテナ間のデータフローをマッピングし、コンテナの相互作用に関するポリシーを設定可能にする。構成を予定外に変更するコンテナをスピンダウンさせることができる」
コンテナ用の効果的なセキュリティ戦略
コンテナをデプロイする際、実際にはコンテナを最大限に活用するために軽減しなければならないセキュリティの問題に多数直面することになる。
Information Security Forumでプリンシパルアナリストを務めるブノワ・ヘンドリックス氏は次のように話す。「コンテナは軽量なので、定期的なパッチ適用サイクル、ネットワークベースの境界を保護するためのファイアウォールへの極度な依存といった従来型セキュリティ制御が不要になる」
「だが、コンテナは存続期間が短いため新たなリスクも生まれる。同時にネットワークの複雑さも増す。安全なコーディング手法など、早い段階から安全な設計原則を適用することも重要になる」
ゼロトラストは最終的に、コンテナへの効果的なセキュリティ戦略の策定を可能にするとして同氏は次のように語る。「認証済みID、最小権限の原則、定義済みマイクロセグメンテーション、トラフィックの監視とログ記録に特化することで、このモデルは『決して信頼せず、常に検証する』という原則を利用する」
「これは従来型セキュリティモデルからのパラダイムシフトになる。対処するには段階を踏み、定められた方法で導入し、最初は最も機密性の高いアプリケーションに適用するなど、特定のアプリケーショングループに特化して行うしか方法はない」
ヘンドリックス氏によると、ゼロトラストをコンテナセキュリティに適用する場合は、あらゆるアプリケーション開発に強力なコーディング手法を用いる必要があるという。その結果、アプリケーションコンテナなどの高速な導入プラットフォームを使いたいという開発者需要に十分応えることが可能になる。
同氏は次のように補足する。「アジャイル開発技術を使うメリットを得て、要求の厳しい顧客にアプリケーションを迅速かつ安全にデプロイすることが可能だ」
新しいソフトウェアを素早くかつ効率的にデプロイすることで、時代を先取りして競争上優位に立ちたいのは当然だ。その最適解がコンテナだ。とはいえ、コンテナを採用すれば明らかにセキュリティ上の課題が生じる。コンテナへの投資を回収するならば、こうした課題への対策を講じることが不可欠だ。コンテナの採用を検討する開発者は、セキュリティチームに協力しなければならない。
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