ゼロトラストセキュリティが目指すもの【前編】
「ゼロトラストセキュリティ」を重要にした“3つの変化”とは?
さまざまなセキュリティベンダーが「ゼロトラストセキュリティ」の重要性を強調している。その背景にある変化とは何か。専門家に聞いた。
従業員が社内LANの内外にいるかどうかにかかわらず、必要に応じて認証を実施するセキュリティモデルが「ゼロトラストセキュリティ」だ。社内LANの境界の防御を固める従来のセキュリティ対策は、内部脅威やテレワークのリスクへの耐性が高くない。オンライン決済ベンダーStripeでサイトリライアビリティエンジニアを務めるダグ・バース氏は「攻撃は標的のネットワークにアクセスすることから始まる。次に攻撃者はネットワークに潜伏し、次の一手を画策する」と説明する。これらの脅威に備え、従来の境界型セキュリティに代わる手段としてゼロトラストセキュリティは有用だ。
新たな脅威の出現や企業におけるIT製品・サービスの在り方の変化、全社規模でのテレワークに備えるセキュリティモデルとして、ベンダーはゼロトラストセキュリティを実現する製品やサービスの開発に注力している。こうした動きは、過度に進むと「ゼロトラストセキュリティの魅力を損なう恐れがある」と指摘するのは、VMwareでエンジニアを務めるエバン・ギルマン氏だ。さまざまなベンダーがゼロトラストセキュリティをゴールに掲げている。こうした風潮は「セキュリティに関する考え方の改革を台無しにしかねない」とギルマン氏は警笛を鳴らす。
本連載は、ギルマン氏とバース氏へのインタビューに基づき、ゼロトラストセキュリティが今日の脅威にどう有効なのか、セキュリティへの意識がゼロトラストセキュリティの導入にどう役立つかを説明する。
ゼロトラストセキュリティが求められる3つの背景
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変化する働き方とゼロトラストセキュリティ
―― ゼロトラストセキュリティの重要性が高まっている背景は何ですか。
ギルマン氏 3つの大きな変化が挙げられる。1つ目はテレワークだ。テレワークの普及は、人々の勤務場所やコミュニケーション方法を変えた。
2つ目は私物デバイスの業務利用(BYOD)だ。企業が従来運用してきた境界型防御を、BYOD用デバイスが擦り抜ける可能性がある。
3つ目はデータセンターを支えるインフラだ。データセンターのインフラにおける現在のトレンドは移り変わりが激しい。従来の境界型セキュリティ対策およびネットワーク制御方法は拡張性に欠けるため、こうした活発な変化に対処することが難しい。
―― 「ゼロトラストセキュリティを導入する準備が整っている」と判断できる決め手にはどのようなものがありますか。
バース氏 1つ目は「文化が根付いているかどうか」だ。全ての取締役と従業員が、ビジネスにセキュリティがどう影響するのかを理解する必要がある。
2つ目は「ネットワークを長期的な視点で管理するプロセスが整備できているかどうか」だ。企業はいずれVPN(仮想プライベートネットワーク)の利用をやめて、インターネットに直接接続する技術を取り入れるようになるだろう。
中編は、セキュリティベンダーによるゼロトラストセキュリティの過度な宣伝がもたらす弊害を説明する。
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