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ビデオ会議では埋まらない穴を補完するツールと機器テレワークのための3アプローチ【前編】

テレワークの恒常化が進む中、コラボレーション&コミュニケーションにはビデオ会議では埋められない面があることも明らかになってきた。事例を通して解決する方法を紹介する。

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 企業は、オフィスが元に戻ることはないことを受け入れている。2020年11月、McKinseyはテレワークの状態を評価し、コロナ禍を受けてテレワークを交えたハイブリッドモデルが定着した可能性が高く、その大半は高学歴で高給の少数派の労働者だと報告している。

 この報告書の執筆者によると、労働者の20%以上がオフィス勤務と変わらない効率で週5日テレワークを行っている。英国ではテレワークが作業時間の33〜46%を占める可能性があるとMcKinseyは報告している。

 業界リーダーはこうした状況によって幾つか課題を抱えている。従業員がオフィスで勤務時間の一部しか費やさないとすれば、従業員が効果的にコラボレーションし、雇用主と関わるにはどうすればよいのか。テレワーカーがオフィスワーカーとコラボレーションするにはどうすればよいのか。

 コロナ禍以降、ビデオ会議が盛んに行われている。だがComputer Weeklyがインタビューした人々は、ライブビデオ会議も退屈になっていると話す。参加しても議論に完全に集中していないという有力な証拠もある。

1.オフィスの休憩所で話す機会

 従業員がコラボレーションして知識を共有する方法を提供するソフトウェアはたくさんある。その一つが「Workplace from Facebook」だ。

 ウジワル・シン氏(Workplace from Facebookの製品責任者)は、コロナ禍のさなかのここ10カ月間に目にしたことについて次のように話す。「絶えず耳にしたのは、Workplace from Facebookが仕事について話し合う場所ではなく、仕事をする場所になっていることだ。特に他の従業員とコラボレーションしなければならないときにそれが顕著になる」

 Workplace from Facebookがエミュレーションを試みるオフィスの重要な機能の一つが休憩場所だ。共用キッチン、コーヒーメーカー、ウオーターサーバがあり、知識やノウハウを非公式に交換する場所を再現する。

 「利用するのはデスクワーカーだけではない。スマートフォンしか携行しない作業現場の従業員も利用する」とシン氏は語る。

 シン氏によると、Workplace from Facebookによってシフト勤務の労働者はシフトを入れ替えやすくなるという。Workplace from Facebookを利用する企業の一つHonest Burgersは、これを利用して自宅待機するスタッフをサポートするチャットbotを構築して情報を提供し、スタッフの再教育を支援している。

 シン氏は自身のテレワーク経験から、ビデオ会議が集中力を損なうことを認める。「ビデオ会議を1日に18回したことがある。だが、その会議について何も覚えていない」と同氏は話す。

 Workplace from Facebookが対処しようとする分野の一つは、ビデオ疲労を緩和し、人々が情報流出を感じずにプレゼンスと接続を可能にする方法だ。「当社は、同期コミュニケーションと非同期コミュニケーションのバランスを取り、Webカメラ以外の手段で人々が絶えずプレゼンスを示しているとは感じずに済む方法を模索している」とシン氏は語る。

2.現場向けの拡張現実

 ザイド・ラフター氏(Marsh & McLennanのリスクエンジニアリング部門バイスプレジデント)によると、リスクエンジニアの仕事は石油会社やガス会社に協力して、石油精製所などのサイトに出向いてオンサイトのリスク評価を実施し、リスクプロファイルレポートを作成することだという。

 「リスクエンジニアがサイトを訪問して1週間滞在し、ハードウェア、管理システム、緊急時対応の概要を提供する。その後、保険業者にレポートを提出する」(ラフター氏)

 保険会社にもリスク評価を担当する独自のエンジニアリングチームがある。大規模施設になると複数の保険会社が保険を掛けるのが一般的だ。だが普通は、サイトにアクセスできるのは主幹保険会社のチームとMarsh & McLennanのリスクエンジニアだけだ。

 Marsh & McLennanのドバイ拠点には20人のリスクエンジニアが勤務し、年間200カ所のサイトに対応する。だがコロナ禍で移動制限が生じたため、Marsh & McLennanはサイト訪問の実施方法を見直す必要が生じた。「当社は『Zoom』『Microsoft Teams』『Cisco Webex』を使い、ビデオ会議とドキュメント共有を利用する仮想調査の設計に着手した。これまでに450件の仮想調査を実施している」とラフター氏は話す。

 この仮想調査では、オンサイトのさまざまなチームに関わるサイト従業員との一連の話し合いも行われる。「以前、こうした話し合いはオンサイトの会議室で実施し、施設を見学することもあった」とラフター氏は述べる。

 こうした仮想調査がこれまでと違うのは、リスクエンジニアが物理的にオンサイトに出向けないことだ。ラフター氏によると、「調査には五感を用いる。だが現在は感染のリスクを減らすため、不可欠な場合を除いて訪問者への門戸は閉ざされている」という。

後編では、Marsh & McLennanがこの事態を解決した方法とオンラインイベントの事例を紹介する。

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